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ネイチャーポジティブとは

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ネイチャーポジティブは「自然の損失を止め、回復へ反転させる」世界目標です。日本の生物多様性の現状を踏まえ、企業が意思決定に自然を組み込む実務論点を整理します。

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この記事を読んで欲しい人
  • サステナビリティ/ESG推進、調達、品質、リスク管理、投資判断に関わる方
  • 気候変動対策に加えて、生物多様性・自然資本まで視野を広げたい経営者/事業責任者
  • 社内で「ネイチャーポジティブは結局何をするのか」を説明する必要がある方
目次

導入

生物多様性の損失は、いまや環境問題にとどまらず、企業活動の前提を揺さぶる経営課題になりました。国際的には昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)が、2030年に向けて「損失を止める」だけでなく「回復へ反転させる」ことを掲げ、自然を回復軌道に乗せるという目線が世界の共通言語になりつつあります。
その背景には、絶滅の速度が長期平均と比べて著しく高まっているという科学的警鐘があり、自然が提供する水・食料・気候の安定といった基盤(生態系サービス)を守り直す必要性が強まっています。
本コラムではまず、日本における生物多様性の現状を確認したうえで、ネイチャーポジティブを「植樹や寄付」といった活動の追加で終わらせず、企業の意思決定をどう変えるべきか――実務の論点を整理します。

日本における生物多様性の現状

現在、地球の生物多様性はかつてない速度で失われています。生物種の絶滅の速度は、過去1000万年の平均と比べて数十倍から数百倍に達しているとも言われており、人間社会を支える「生態系サービス」を維持するために早急な対応が求められています。
国の総合評価(JOB3)は、日本の生物多様性について「損失の速度が緩和してきた面はあるが、回復軌道には乗っていない」ことを示しています。背景には、生物多様性の損失要因が単一ではなく、(1)開発等による影響、(2)里地里山など人の関与の縮小、(3)外来種等、(4)地球環境の変化――という複合要因(いわゆる「4つの危機」)として整理されている点があります。

こうした状況を前提に、企業は「どこで(場所)」「何を通じて(調達・操業・物流など)」「どの程度(規模)」自然に影響・依存しているのかを把握し、対策を事業の意思決定に組み込むことが求められています。

ネイチャーポジティブとは

ネイチャーポジティブとは「生物多様性の損失を止め、反転させ回復軌道に乗せる」考え方のことです。

この言葉が急速に広がった背景には、国際合意である昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)が、2030年に向けて「損失を止める」だけでなく「回復へ反転させる」ことをミッションとして掲げた点があります。単なる現状維持では不十分で、自然を回復軌道に載せるという、より踏み込んだ方向性が世界共通の前提になりました。

また、ネイチャーポジティブは「生物多様性」だけの話でもありません。生物多様性は、森林・農地・河川・沿岸など多様な生態系の健全性と結びつき、私たちが享受する水、食料、気候の安定、災害リスクの緩和といった自然の恵みの基盤になります。したがって、ネイチャーポジティブとは、生物多様性の保全を目的にしつつも、結果として社会・経済の基盤を守り直す構想でもあります。

実務ステップ

では企業にとって、ネイチャーポジティブは「植林」や「寄付」の話なのでしょうか。結論から言えば、ネイチャーポジティブ対応の本質は、活動の追加ではなく意思決定の改造といえるのではないでしょうか。脱炭素が「CO₂を減らす運動」から「投資・調達・商品設計の基準」へ変わったように、自然も同じ変化が起きています。
つまり問うべきは「何をするか」だけでなく、「どう決めるか」です。

なぜ「決め方」が重要なのでしょうか。

自然は、炭素以上に「場所」に依存します。同じ量の水を使っても、同じ面積の土地を使っても、影響は地域の生態系・流域・季節性で大きく変わります。結果として、企業の自然関連リスクは「工場や店舗がどこにあるか」「調達先の畑・森林・鉱山がどこか」に強く紐づきます。

そのためネイチャーポジティブは、社内の啓発キャンペーンではなく、立地、購買仕様、サプライヤー選定、設備投資の審査項目といった「経営の骨格」に入り込むのです。

ここからの実務において多くの企業で共通して発生する論点を4つ紹介します。

第一に、全社で同じ言葉・同じ型で判断することです。新規出店や設備増強、原材料の切替のような判断に対して、「自然への依存(その自然がないと事業が成り立たない要素)」と「自然への影響(事業が自然に与える負荷)」を共通のチェック項目として入れます。これを稟議・審査の型にしておけば、部署ごとのばらつきが減り、優先順位付けや説明も一貫します。

第二に、場所を起点に優先順位をつけることです。自然の影響は場所によって重要度が変わる以上、すべてを同じ粒度で扱うのは非効率です。拠点や主要調達先を起点に、重要性の高い地点から順に深掘りする。これにより、過剰な調査を避けつつ、説明責任の観点でも筋の通った対応になります。

第三に、調達と投資のルールに落とすことです。ネイチャーポジティブが「活動の追加」で終わる会社と、「経営の骨格」に入る会社の差はここで決まります。サプライヤーの選定条件、購買仕様、設計要件、投資稟議の審査項目に「自然」を入れられるか。入れば、実行は確実に回り始めます。入らなければ、良い取り組みも個別最適で止まります。

最後に、説明の型を用意することです。投資家・取引先・顧客が知りたいのは、完璧な指標よりも「自社がどこで自然と接し、どんなリスクと機会があり、意思決定をどう変え始めたか」です。だからこそ、社内外に同じストーリーで語れるよう、判断基準・優先順位・実装状況を一貫して示す必要があります。

参考文献

環境白書(環境省)full.pdf

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