FLAG排出量とは何を含むのか。土地利用変化、土地管理、炭素除去の考え方を整理し、FLAG排出量・除去量をどのような手順と計算式で算定するのかを具体的に解説します。SBTi対応に向けた実務の基礎を押さえたい企業担当者向けの記事です。
※本記事は、環境コンサルティング専門のWaste Boxが、最新の気候関連開示・企業動向をもとに実務的な観点で整理しています。
最終更新日:2025年12月30日
監修:株式会社Waste Box 小澤
(GHG排出量算定、SBT認定、CDP回答支援)
・FLAG排出量の算定方法に不安を感じている企業担当者
・Scope3排出量の算定を担当しているサステナビリティ・環境部門の実務者
・食品、農業、畜産、林業、紙・パルプ、バイオマス関連業界の担当者
・FLAG目標設定や算定結果について社内説明・資料作成が必要な方
SBT認定取得を目指す際に、FLAG関連の排出量算定は今や対応必須となっています。企業様の最初のハードルとなるのが「FLAG排出とは具体的に何を指し、どのように計算するのか」という点です。エネルギー起源排出とことなり、FLAG排出量は森林や土地利用、農業といった自然資本の改変や管理方法と密接に結びついており、算定対象や計算方法を正しく理解していないと、制度要件から外れてしまうリスクがあります。
FLAG排出量は、単なる排出量の集計ではありません。土地利用変化に伴う一時的かつ大規模なCO₂排出、土地管理に伴って継続的に発生する複数の温室効果ガス、さらに生物起源の炭素除去・貯留までを含む、構造的に整理された概念です。そのため、算定にあたっては、排出原ごとの性質ごとに計算ロジックを切り分け、scopeとの関係を明確にすることが不可欠となります。
本コラムでは、FLAG排出量に何が含まれるのかを整理した上で、排出量・除去量をどのような考え方と手順で計算すべきかを具体的に解説します。FLAG対応を実務として進める上で、計算の全体像を理解するための基礎情報を提供します。
FLAG排出量は何を含むのか
FLAG排出量は、森林、土地利用、農業に関連する活動から生じる温室効果ガスの排出量及び除去量を対象としています。SBTiでは、これらを大きく「土地利用変化に伴う排出」「土地管理に伴う排出」「炭素除去・貯留」の三つのカテゴリーに整理しています。エネルギー起源排出とは異なり、自然資本の改変や管理方法そのものが排出や吸収の源となる点が特徴です。
土地利用変化
まず、土地利用変化に伴う排出量が含まれます。これは、森林や草原、湿地などが農業や人工池へ転換される際に発生する二酸化炭素(CO₂)排出を指します。森林伐採、プランテーション開発、泥炭地の開発などが代表的な例であり、長期間にわたって蓄積されてきた炭素が短期間で大気中に放出されるため、気候変動への影響が非常に大きい排出原とされています。
土地管理
次に、土地管理に伴う排出量が含まれます。これは土地利用の転換を伴わず、農業や林業の管理方法によって継続的に発生する排出を指します。具体的には、家畜由来のメタン(CH₄)排出、肥料使用による一酸化二窒素(N₂O)排出、農地管理や残渣処理に伴う排出などが該当します。このカテゴリーでは、CO₂に加えてCH₄やN₂Oといった温室効果の高いガスが含まれる点が特徴です。
炭素除去
さらに、FLAGには炭素除去および貯留も含まれます。これは、森林や土壌が大気中のCO₂を吸収し、一定期間貯留することによって生じる負の排出を指します。森林の成長による炭素吸収炭素吸収、再植林、森林保全、土壌酸素の増加などが代表例です。FLAG目標では、これらの生物起源の炭素除去も算定対象に含まれ、排出量と合わせて管理されます。
このようにFLAG排出量は単に「排出」だけを指すものではなく、土地利用変化によるCO₂排出、土地管理の伴う複数の温室効果ガス排出、そして生物起源の炭素除去・貯留を包括的に扱う概念です。企業がFLAG対応を検討する際には、どの活動がどのカテゴリーに該当するのかを整理し、自社の事業やサプライチェーンとの関連性を把握することが重要となります。
排出量・除去量の計算方法
この章では、FLAG排出量および除去量をどのような考え方・手順で計算するのかを具体的に整理します。FLAGの算定は、エネルギー起源排出のように単一の排出係数を当てはめるものではなく、排出源の性質ごとに計算式を切り分けて積み上げる点に特徴があります。
計算の全体構造を理解する
FLAG排出量・除去量の計算は、基本的に以下の考え方に基づきます。
- 排出量・除去量 = 活動量 × 排出(または除去)係数
この式自体は一般的なGHG算定と同様ですが、FLAGでは「どの活動を対象とするか」「どの係数を使うか」を誤ると、制度要件を満たさなくなる点に注意が必要です。
先述の通り、企業のバリューチェーンにおける活動は以下の3つに分類されます。
・土地利用変化に伴う排出(LUC)
・土地管理に伴う排出(非LUC)
・土地管理に伴う炭素除去(正味除去)
それぞれで、使用する係数と計算ロジックが異なります。
土地利用変化(LUC)に伴う排出量の計算
土地利用変化による排出量は、主に森林伐採や土地転換によるCO₂排出を対象とします。
計算の基本構造は次のとおりです。
LUC排出量(CO₂)= 転換された土地面積 × LUC排出係数
ここで重要なのは、直接的な土地利用変化(直接LUC)と原材料需要の増加などに伴う間接的な土地利用変化(間接LUC)の両方を、GHGプロトコルおよびSBTiの定義に従って扱う点です。実務上は、原材料の調達量や調達地域を活動量データとし、国別・地域別のLUC排出係数を用いて算定するケースが一般的です。
土地管理(非LUC)に伴う排出量の計算
土地管理に伴う排出は、土地利用の転換を伴わず、農業・林業の管理方法から継続的に発生する排出を指します。
対象となる主な排出は以下のとおりです。
- 農業活動からの生物起源CO₂排出
- 家畜由来のメタン(CH₄)
- 肥料使用に伴う一酸化二窒素(N₂O)
計算の基本構造は、
土地管理排出量 = 活動量(飼養頭数、施肥量、生産量など) × 排出係数
となります。
このカテゴリーでは、CO₂だけでなくCH₄やN₂Oも含まれるため、ガスごとにCO₂換算を行った上で合算する点が重要です。
炭素除去量の計算
FLAGでは、排出量だけでなく、土地管理に伴う正味の炭素除去量も算定対象に含まれます。現状除去排出量の計算は算定任意の整理となっています。
代表的な活動は以下のとおりです。
- 森林の成長・再生による炭素吸収
- 土壌炭素の増加
- アグロフォレストリーなどによる炭素貯留
計算の基本構造は、
炭素除去量(CO₂)= 吸収・貯留量 × 除去係数
となります。
ここで重要なのは、除去量は排出削減の代替ではないこと、恒久性やリスク(火災、再転換など)を考慮するという点です。SBTiでは、炭素除去はあくまで補完的な要素として扱われます。
まとめ
FLAG排出量は、森林や農地といった自然資本に関わる活動から生じる温室効果ガスの排出と除去を一体で捉える考え方です。土地利用変化によるCO₂排出、農業・林業の管理に伴うCH₄やN₂O排出、さらには森林や土壌による炭素吸収までを包括的に扱う点に、エネルギー起源排出とは異なる特徴があります。
算定においては「活動量 × 係数」という基本構造は共通しているものの、土地利用変化、土地管理、炭素除去のそれぞれで計算ロジックや前提条件が異なります。そのため、どの活動がどのカテゴリーに該当するのかを正しく整理し、自社の事業やサプライチェーンとの関係性を理解することが重要です。
弊社でもFLAG目標を含むSBT認定支援の実績がございます。SBT認定前にまずはFLAG排出量を算定してみたいと考えている企業様も是非お気軽にご相談ください。
FLAGの考え方は、単に排出量を削減するだけでなく、企業活動が自然環境とどのように関わっているのかを問い直す視点を与えてくれます。目に見えにくい土地利用や農業由来の影響を可視化し、排出と除去の両面から向き合うことが、今後の気候変動対策において企業に求められる重要な一歩と言えるでしょう。

