CDPフォレスト質問書とは、環境関連情報開示の国際的プラットフォームを運営する「CDP」の質問書の一つで、森林をテーマにしたものです。特に森林減少に与える7つの農産物(コモディティ)を中心に、企業の生産、調達における取組について質問しています。質問への回答を基に企業にスコアを付け投資家等に情報提供しています。本記事では、質問内容・スコアリング方法・日本企業の回答状況を分かりやすく解説します。
※本記事は、環境コンサルティング会社のウェイストボックスが、最新の質問書(CDP2025)をもとに実務的な観点で整理しています。主にコーポレート完全版質問の一般セクターを想定しています。セクター別質問やSME質問は個別にご確認ください。
※この記事の監修者:株式会社ウェイストボックス 環境ソリューション第三事業部
部長/シニアコンサルタント LCAエキスパート 山本裕子
※最終更新日:2026年1月5日
・CDPフォレスト質問書の質問内容やスコアリング方法を把握したい担当者
・サプライチェーン管理を求められるESG推進責任者
・ISSB、TCFD/TNFD開示を求められるサステナビリティ担当者
導入
森林は二酸化炭素を吸収し貯留する吸収源であり、陸上の生物種の約8割の住処でもあります。そして古くから森林とともに暮らす先住民族や地域コミュニティもいます。森林減少(Deforestation)は人類にとって、気候変動・生物多様性・人権問題の三領域に影響する最重要課題の一つです。
企業のサプライチェーンには、木材やパーム油など森林減少や生態系の転換リスクがある農産物(コモディティ)が含まれており、森林減少や生態系転換を排除した生産、調達を行うことが必要です。環境情報開示の国際的プラットフォームを運営するCDPでは、CDPフォレスト質問書(CDP Forests Questionnaire)において、企業に対しこれらのコモディティの生産・調達の状況、管理状況等について質問し、回答を評価してスコアを付け、投資家等に提供しています。質問書への回答は回答要請に応えるだけではなく、情報開示に関する国際基準や規制対応への準備にもなり、また自社のESGの取組の次のステップへのヒントにもつながります。
本記事では、CDPフォレスト質問書の質問内容・スコアリング方法・日本企業の回答状況を解説します。
CDPフォレスト質問書とは
CDP質問書の枠組みとフォレスト質問書
CDPフォレスト質問書は、CDP質問書の一分野で、企業に対し森林関連の質問への回答を要請し、回答内容を評価してスコア付けし投資家などに提供するものです。2011年から始まり、CDPの三本柱(気候変動・水セキュリティ・フォレスト)の一つとなっています。サプライチェーンでの「森林減少なし((No-deforestation / Deforestation-free)」、「自然生態系の転換なし(No-conversion/ Conversion-free)」の実現に向けて、主に森林減少リスクがあるコモディティを中心にその生産や調達の状況や管理状況について聞いています。
・方針・実施対策・結果(KPI)の3層構造
・証拠文書がなければ「やっていない」と評価される可能性がある
・EcoVadis評価のためだけに作成した資料は十分な証拠として認められない可能性がある
CDP(旧名Carbon Disclosure Project)は、2000年に英国で設立された国際NGOで、企業等に対して環境関連情報の開示を促す国際的なプラットフォームを運営しています。企業等に環境関連の質問書への回答を要請し、その回答を評価しスコアを付けて投資家等に情報提供しています。開始当初は「気候変動(Climate Change)」分野のみを対象としていましたが、2009年からは「水セキュリティ(Water Security)」、2011年からは「森林(Forests)」にも対象範囲を広げてきました。この3分野がCDPの三本柱であり、分野ごとに質問書及び回答を評価するためのスコアリング基準が用意され、スコアがつけられます。
このうち「CDPフォレスト質問書」は森林関連の質問書ですが、サプライチェーンでの「森林減少なし(No-deforestation / Deforestation-free)」、「自然生態系の転換なし(No-conversion/ Conversion-free)」の実現に向けて、特に森林減少リスクがある農産物(コモディティ)に焦点を当てて、その生産や調達の状況、管理状況等について質問しています。
CDPはさらに環境分野の範囲拡大を進めており、2023年には気候変動質問書に生物多様性に関する質問、水セキュリティ質問書にプラスチックに関する質問が追加されました。2024年からは質問書の構造が大きく変わり、3本柱の質問書が1つの質問書に統合され、分野横断の統合モジュールと分野別の環境パフォーマンスモジュールで構成される形に変わりました。これまでの3分野の質問が一つの質問書の中にまとまっていますが、スコアリング基準はこれまで通り3分野ごとに用意され、スコアも分野ごとにつきます。

フォレスト質問書解答の意義
CDP質問書への回答は投資家や顧客企業からの回答要請に応えることになります。質問書は国際的な開示基準や規制との整合も進めており、TCFD/TNFDやISSBに整合した開示への活用も期待できます。また、CDP質問書はグローバルのバストプラクティスを凝縮したものとなっており、フォレスト質問書は森林減少・生態系の転換なしに向けた企業のロードマップとなっています。質問書への回答は森林関連、サプライチェーン管理の取組の次のステップへの気付きを与えます。
・回答要請には主に投資家要請とサプライチェーン要請の2パターンあり
・CDP質問書は世界の重要な開示基準との整合を進めている。2024年からはTNFDとの整合が進む
・質問書はグローバルでのベストプラクティスを反映し毎年更新。フォレスト質問書は森林減少・生態系の転換なしに向けたロードマップを示す
CDP質問書の回答要請には主に投資家要請とサプライチェーン要請の2パターンがあります。投資家要請はCDP署名機関となった投資家の集まりが各国の主要企業を対象に要請するもので、日本では主に東証プライム市場上場企業全てを含む国内の投資対象となる最大規模の企業約3220社が対象です。これらの企業は、気候変動は回答必須対象で、水セキュリティやフォレストの対象となるかどうかはその影響度合いによって決まります。サプライチェーン要請とは顧客企業が自社のサプライヤーの中から選定して回答要請しているものです。よって回答要請に応えることは投資家と顧客企業の要請に答えることになります。
CDP質問書は世界の開示基準との整合を進めています。2018年からTCFDと整合、2024年からISSB S2と整合、TNFDとは部分的に整合し2026年には完全整合の計画です。またESRS等各国の規制への対応も進めています。質問書への回答は各種基準や規制に対応した開示用途やその準備に活かすことができます。森林は自然の中でも特に土地部門の中心的存在であり、フォレスト質問書はTNFD開示への活用が期待できます。
また、CDP質問書は環境課題への対応のためのグローバルのベストプラクティスを考慮し毎年更新されています。質問書に回答し高スコアを目指すことは、自社の課題を把握し取組をグローバルのベストプラクティスに近づけることになります。フォレスト質問書は森林減少・生態系の転換なしへの企業のロードマップを示しており、質問書への回答を通じて、自社の現在地と次に必要な取組みが見えてきます。
図表案 2|「CDPフォレストKPI」

CDP_Forests_Japan_2023_0319.pdf
対象コモディティと対象企業
対象コモディティ
CDPフォレストは、森林減少の主な要因となっている農業、その中でも特に大きな影響を与えている7つのコモディティ(木材、バーム油、畜牛品、大豆、天然ゴム、カカオ、コーヒー)に特に焦点を当てています。質問書内では自社に関連するコモディティを対象に回答し、最終的には一つの森林単位スコアが付与されます。
・森林減少の主な要因は農業のための土地転換。特に熱帯雨林への影響は特定のコモディティに集中
・CDPでは特に大きな影響を与えている7つのコモディティ(木材、パーム油、畜牛品、大豆、天然ゴム、カカオ、コーヒー)に焦点を当てている
・質問書内では自社が関連するコモディティを対象に、生産、調達の状況や管理状況等について回答する
・回答を基に森林単一スコアが付与される。2026年からは天然ゴム、カカオ、コーヒーもスコアリング対象となる計画
森林減少の人的要因で最も大きいのは農業のための土地転換と言われています。特に熱帯雨林では、牛肉、大豆、パーム油、木材(含むパルプ・紙等)といった農産物の生産が森林減少の約70%を引き起こしていると言います。
CDPではこのような森林減少の主要因となっている農産物(コモディティ)として、木材、パーム油、畜牛品、大豆、天然ゴム、カカオの7つを挙げています。フォレスト質問書の中ではこれらの重要コモディティを対象に、企業の生産、調達状況及び管理状況を質問しています。企業は自社が関連するコモディティについて回答します。このうち天然ゴム、カカオ、コーヒーはスコアリング対象外です。(2026年からはスコアリング対象とする計画が発表されています。)2023年まではスコアリング対象の木材、パーム油、畜牛品、大豆の4種類のコモディティ別にそれぞれのスコアが付与されていました。2024年からはコモディティ共通の森林に関する一般的データとコモディティ別データを基に一つの森林単一スコアが付与される方式に変わっています。(回答要請機関等はコモディティ別サブスコアも確認できるようになっています。)

対象企業
フォレスト質問書は森林に関連する業種の企業のみが回答要請対象となります。想定される主な業種としては、食品・飲料・農業関連、木材・紙・革等の素材産業やその加工品の製造業、それら製品を扱う小売、流通、外食等があります。回答要請対象は主に業種別の森林インパクト評価と売上基準の組み合わせによって選定されます。
・フォレスト質問書は森林に関連する業種の企業のみが回答要請対象となる
・回答要請対象として想定される主な業種には、食品・飲料・農業関連、木材・紙・革等の素材産業やその加工品の製造業、それら製品を扱う小売、流通、外食等がある
・回答要請対象企業はCDP Sample Methodologyに沿って、主に業種別の森林インパクト評価(森林に与える影響の大きさ)と売上基準(売上金額または総売上に占める割合)の組み合わせで選定される
気候変動質問書は業種によって関わらず回答要請対象となりますが、水セキュリティとフォレスト質問書はそれぞれ水、森林に関連する業種の企業のみが回答要請対象となります。(生物多様性、プラスチックも業種に関わらず回答します。)フォレスト質問書の回答要請対象として想定される主な業種としては、食品・飲料・農業関連、木材・紙・革等の素材産業やその加工品の製造業、それら製品を扱う小売、流通、外食等があります。(金融サービスも対象となりますが金融セクター質問への回答が主となるためこの記事では対象外とします。)
回答要請企業の選定はCDP Capital Markets Request Sample Methodologyに沿って行われます。CDP2025のSample Methodologyによると、森林インパクト評価と売上基準の2つの組み合わせで選定が行われています。森林インパクト評価では、事業活動に関連するバリューチェーンのいずれかで重要コモディティの生産または使用を通じて森林に悪影響を及ぼす可能性があるか、また影響度合いはどの程度かを業種別に5段階(低い/関連性がない、中、高い、とても高い、重大)で評価しています。Sample Methodologyの中でCDPのセクター分類別のインパクト評価結果を確認することができます。売上基準では当該事業活動に関連する売上金額と企業全体の売上に占める割合によって評価します。選定対象となる金額と割合の閾値は森林インパクト評価の段階によって異なります。

CDPフォレスト質問書の構成と内容
質問書の構成
2024年以降の質問書は、統合モジュールと分野別モジュールで構成されます。フォレスト質問書に回答するには、統合モジュールの中のフォレストを対象とした分野共有質問とフォレスト固有質問、環境パフォーマンス―フォレストモジュールに回答します。
・質問書は分野横断の統合モジュールと分野別モジュールで構成される
・統合モジュールの中には分野共通の質問と分野固有の質問がある
・フォレスト質問書に回答するには、統合モジュールの分野共通質問及びフォレスト固有質問と環境パフォーマンス―フォレストモジュールの質問に回答する
質問書は質問をテーマ別にまとめた「モジュール」で構成されています。2024年以降の3分野の質問が統合された質問書は、環境分野横断の統合モジュール(1~6、13)と分野別の環境パフォーマンスモジュール(7~11)に分かれています。統合モジュールの中には環境分野共通の質問と分野固有の質問があります。共通質問では企業の環境全般の状況を回答します。分野固有の質問は水セキュリティやフォレスト等の特定分野のみを対象とした質問で、各分野の回答要請対象となっている場合に追加されます。フォレスト質問書に回答するには、統合モジュールの共通質問に森林を含む環境分野の状況を回答し、また統合モジュールのフォレスト固有の質問と環境パフォーマンス―フォレストモジュールの質問に回答します。

モジュール別主要質問の内容とポイント
フォレスト質問書を構成する各モジュールの主要な質問とポイントについて以下にまとめます。モジュール6は割愛します。ベストプラクティスはスコアリング基準を参考にしています。
- モジュール1(統合モジュール):イントロダクション
このモジュールではCDP開示の基礎情報(報告の対象範囲や報告期間等)について回答します。報告対象範囲は財務諸表と同じ範囲とすることがベストプラクティスです。報告期間は利用可能なデータがある直近の12か月が推奨されています。フォレスト固有の質問としては、1.22のコモディティ情報、1.24.2のコモディティ別バリューチェーンマッピングがあります。- 1.22:コモディティ別に自社が生産、調達する総量を回答します。ここで総量とは開示に含める含めないに関わらず自社が調達または生産する全量です。
- 1.24.2:コモディティ別のバリューチェーンマッピングの状況を回答します。バリューチェーンマッピングを通して、自社のサプライチェーン上流のステークホルダーとその環境への依存、インパクト、リスク、機会を把握し管理できていることがベストプラクティスです。
- モジュール2:依存・インパクト・リスク・機会の特定・評価・管理
このモジュールでは企業が環境への依存、インパクト、リスク、機会を特定、評価、管理するプロセスを回答します。2.2.2で特定・評価・管理プロセスの詳細を回答します。分野共通質問ですが、森林を含む環境分野共通のプロセスがあればそのプロセスを、分野別に異なるプロセスとなっている場合には森林を対象としたプロセスを他の分野と分けて回答します。フォレスト・水セキュリティのみ対象とした分野固有質問に2.3の優先地域の特定があります。
- 2.2.2:森林への依存、インパクト、リスク、機会を特定、評価、管理するプロセスの詳細を回答します。対象とするバリューチェーン、評価対象とする時間軸やリスク種類、評価の頻度、使用するツール等について回答します。調達をしている場合はバリューチェーン上流も対象範囲に含み、長期も含む幅広い時間軸を対象に、リスク種類も網羅して年1回以上の頻度で評価していること等がベストプラクティスです。
- 2.3:優先地域の特定状況を回答します。優先地域とはTNFDのLEAPアプローチで推奨されている概念で、企業のバリューチェーン内で自然関連の重大な依存、インパクト、リスク、機会を抱えている要注意地域またはその付近にあり行動を優先する必要がある地域です。森林関連の重大な依存、インパクト、リスク、機会があり行動を優先している地域も回答します。気候変動は地球のどこかでGHGを削減、吸収・貯留すると地球全体に効果がありますが、森林を含む自然課題は問題が起こっている地域で対処する必要があります。よって優先地域を特定し対応していることがベストプラクティスとなっています。
- モジュール3::リスク・機会の開示
このモジュールでは企業が特定、評価したリスク・機会の詳細について開示します。3.1.1でリスク詳細、3.6.1で機会詳細を回答します。2つの質問は分野共通質問ですが、行を分けて各分野のリスク・機会を回答します。森林関連のリスク・機会もここで回答します。
- 3.1.1:企業が特定した森林関連の重大リスクについてその詳細と対応状況を回答します。財務上の影響額とリスクに対応するための費用といった定量情報も含み開示できることがベストプラクティスです。
- 3.6.1:企業が特定した森林関連の重大機会についてその詳細と対応状況を回答します。財務上の影響額と機会を実現するための費用といった定量情報も含み開示できることがベストプラクティスです。
- モジュール4:ガバナンス
このモジュールでは環境課題のガバナンス状況(取締役会での監督状況、経営レベルでの管理状況、環境課題の管理に対して提供される金銭的インセンティブ、環境方針等)について回答します。全て分野共通質問で、森林も含めた環境分野共通のガバナンス状況、もしくは分野別に状況が異なる場合は分野ごとに回答していきます。
- 4.1.2:取締役会での監督状況(議題にあがる頻度や監督内容等)について回答します。森林課題が取締役会の監督対象となっていることがベストプラクティスです。
- 4.2:取締役会の森林課題の能力の状況(能力の有無、能力を維持するためのメカニズム、メンバーの専門知識)について回答します。意思決定を行う取締役会レベルが森林関連課題の能力を有していることがベストプラクティスです。
- 4.3.1:経営レベルでの管理状況(最高責任者やその責任の内容、取締役会への報告系統や頻度等)について回答します。森林課題が最上位の経営レベル(役員レベル)の管理対象となっていることがベストプラクティスです。
- 4.5.1:森林課題の管理に対して提供される金銭的インセンティブの詳細について回答します。役員レベルに対して金銭的インセンティブが提供されていることがベストプラクティスです。
- 4.6.1:森林関連の方針の詳細(対象範囲や内容、該当文書の添付)について回答します。組織全体を対象とした森林減少なし、自然生態系の転換なし等のコミットメントを含む公開された環境方針があることがベストプラクティスです。
- モジュール5:事業戦略
このモジュールでは環境課題をどのように事業戦略や財務計画に落とし込んでいるかについて回答します。5.1.1、5.1.2でシナリオ分析の状況、5.3.1で事業戦略への反映状況、5.3.2で財務計画への反映状況について回答します。また5.11.5、5.11.6でサプライヤーへの環境関連要求事項の要請状況、5.11.7でサプライヤーとのエンゲージメント状況についてについて回答します。フォレスト固有の質問としては5.11.8の小規模農家とのエンゲージメント状況があります。
- 5.1.1、5.1.2:森林課題を対象としたシナリオ分析を実施し、その分析結果が事業戦略や財務計画に反映されていることがベストプラクティスです。5.1.1ではシナリオ分析に使用したシナリオの詳細、5.1.2はシナリオ分析の結果わかったこと、及びそれがどのようなビジネスプロセス(事業戦略や財務計画等)に反映されたかについて回答します。
- 5.3.1、5.3.2:5.3.1では事業分野ごとに、森林関連のリスク・機会がどのように事業戦略に反映されたのかについて回答します。5.3.2では費目ごとに森林関連のリスク・機会がどのように財務計画に反映されたのかについて回答します。
- 5.11.5、5.11.6:サプライヤーへ調達プロセスを通じて森林関連の要求事項への遵守を求めていることがベストプラクティスです。5.11.5で要求事項導入の状況、5.11.6で要求事項の詳細、サプライヤーの遵守状況、遵守できないサプライヤーへの対応状況等について回答します。
- 5.11.7:サプライヤーへ森林に関連したエンゲージメントを行っていることがベストプラクティスです。エンゲージメント活動の種類や対象とするサプライヤーの割合、エンゲージメント活動の効果等について回答します。
- 5.11.8:多くの国地域では、持続可能な原材料の調達のためには小規模農家とのエンゲージメントが必要であり、ベストプラクティスとなっています。サプライチェーン内外に関わらず小規模農家とのエンゲージメントの状況について回答します。
- モジュール8:環境パフォーマンス – フォレスト
このモジュールでは森林関連の定量情報を中心に回答します。8.1.1、8.2、8.5ではコモディティの詳細情報(除外の状況、開示量、原産地別調達量)、8.7.1、8.7.2では森林減少・自然生態系の転換なし目標及びそれに寄与するものを含むその他の森林関連目標の詳細と進捗、8.8、8.8.1ではトレーサビリティの状況、8.9~8.9.4では森林減少なし (DF) または森林減少と自然生態系の転換なし (DCF) の量、8.10.1では森林減少及び生態系転換量(フットプリント)のモニタリング/推計量、8.15.2ではランドスケープアプローチ(管轄地域を含む)によるエンゲージメントの詳細、8.16.1ではその他の外部活動、8.17.1では生態系の復元や長期的保全に焦点を当てたプロジェクトについて回答します。
- 8.1.1、8.2、8.5:8.1.1ではコモディティごとに開示から除外している量とその内容詳細、8.2では生産/調達の開示量(開示量=コモディティ総量-除外量)、8.5では原産地別調達開示量について回答します。
- 8.7.1、8.7.2:8.7.1ではコモディティごとに森林減少・自然生態系の転換なし目標の詳細及び進捗について回答します。2020年以前の指定期限(カットオフ日)で2025 年までの目標年の森林減少・自然生態系の転換なし目標を持っていることがベストプラクティスです。8.7.2では森林減少・自然生態系の転換梨目標に寄与するものを含む森林関連目標の詳細及び進捗について回答します。
- 8.8、8.8.1:8.8ではコモディティごとに原産地を把握、管理するトレーサビリティシステムについて回答します。トレーサビリティシステムの種類としては、CoC(Chain-of-custody)認証、サプライヤーエンゲージメント、内部システム等が考えられます。8.8.1では調達量をトレーサビリティレベル別に回答します。 生産ユニットや地域レベル(州、自治体レベル)までのトレーサビリティがあることがベストプラクティスです。
- 8.9~8.9.4:コモディティごとに開示量のうち森林減少なし (DF) または森林減少と自然生態系の転換なし (DCF) の量を評価方法別(第三者認証、トレーサビリティレベル別モニタリング)に回答します。DF/DFC量は企業の森林減少・自然生態系の転換なしに向けた進捗状況を示すものであり、完全なDF/DCFは指定期限以降に森林やその他の自然生態系から耕作地、牧草地、またはプランテーションへの転換が行われていない生産単位(農場、牧場、森林など)に由来することを証明できる必要があります。
- 8.10.1:森林減少および自然生態系の転換量 (フットプリント) について生産している場合はモニタリング、調達している場合はモニタリングまたは推定を行っていることがベストプラクティスです。報告期間内、指定期限以降、もしくは過去5年以内のフットプリント(ヘクタール)を回答します。
- 8.15.2:ランドスケープアプローチ(ある地域で複数のステークホルダーが地域のサステナビリティに関する共通ゴールを設定し協働で活動を行う)によるエンゲージメント活動を実施していることがベストプラクティスです。対象地域、活動内容、開始・終了年、投資額、協働パートナー、共通ゴール、モニタリング方法等について回答します。
- 8.16.1、8.17.1:8.16.1ではランドスケープを超えたその他の外部活動(業界での活動、非政府組織とのエンゲージメント等)、8.17.1では実施したまたは今後計画している生態系復元、森林再生、および/または森林および他の生態系の保護に関連するプロジェクトについて回答します。
- モジュール13:追加情報および最終承認
このモジュールではCDP回答に含まれる環境関連情報の第三者検証/保証の状況、CDP回答への最終承認者を回答します。気候変動のGHG以外の環境関連情報でも第三者検証/保証を受けていることがベストプラクティスです。フォレストではトレーサビリティデータ等モジュール8で回答したデータについての第三者検証/保証が考えられます。
フォレスト質問書のスコアリング方法
スコアリングの流れ
CDPのスコアリングはスコアリング基準と必須要件に基づいて行われ、最終的にD-からAまでの8段階の総合スコアが付与されます。フォレストのスコアリングはフォレストのスコアリング基準、必須要件に基づきます。スコアリング基準に基づき算出された得点率が各スコアレベル閾値を満たしているかどうかに加え、各スコアレベルの必須要件を満たしているかによって総合スコアが最終決定されます。
・フォレストのスコアリングはフォレストのスコアリング基準、必須要件に基づいて行われる
・スコアリング基準に沿って各質問を4つのレベルで採点しレベルごとの得点率を算出する。マネジメント・リーダーシップレベルのみカテゴリウェイト(質問カテゴリ別の重みづけ)を考慮し調整する。得点率とスコアレベル閾値によってD-からAまでの総合スコアが決まる
・加えて各スコアレベルに求められる必須要件も満たしている必要がある。スコアレベル閾値をクリアしていてもそのスコアレベルの必須要件を満たせていなければ一つ下のスコアとなる
CDPの採点は主にスコアリング基準と必須要件に基づいて行われ、最終的にD-からAまでの8段階の総合スコアが付与されます。スコアは企業の環境スチュワードシップのレベルを表しています。スコアリング基準、必須要件は3本柱ごとに整備されており、フォレスト質問書のスコアリングはフォレストのスコアリング基準、必須要件に基づいて行われます。
スコアリング基準では質問ごとに4つのレベル(情報開示・認識・マネジメント・リーダーシップ)ごとの採点基準が決まっています。各質問の採点後に4つのレベルごとに集計し、得点率(総得点÷総配点)を算出します。マネジメントレベル、リーダーシップレベルのみ、この得点率にさらに質問カテゴリ別のウェイト(重みづけ)を考慮します。ウェイトはカテゴリウェイト資料で定められています。セクターによってウェイトの配分が異なっている場合があり、自社の該当セクターのウェイトを考慮します。情報開示・認識の得点率、及びウェイト考慮済のマネジメント・リーダーシップレベルの得点率をスコアレベル閾値と照らし合わせてD-からAまでの総合スコアが決まります。スコアレベル閾値は各スコアレベルに上がるための得点率の閾値です。Scoring Introduction資料で定められています。回答開始当初は暫定値が示されており、回答締め切り後のスコアリング期間中にCDPによって調整されます。
必須要件は各スコアレベルに上がるために満たさなければならない要件です。Aのみを対象とした「Aリスト要件」から他のスコアレベルの要件も含む「必須要件」に2024年から変わりました。得点率がスコアレベル閾値を超えていても、そのスコアレベルの必須要件を満たしていなければ一つ下のスコアレベルにとどまります。必須要件もセクターで異なっている場合があり、自社の該当セクターの要件を確認します。

(WASTE BOX)作成 ※CDP2025情報開示ウェビナー第一回資料を参考に作成
図表案7|「スコアリングのステップ」 (WASTE BOX作成)

必須要件
フォレストの必須要件には、Aリスト要件とリーダーシップレベル(A-)要件があります。AやA-のスコアを獲得するためには各要件を全て満たしている必要があるため確認をお勧めします。またこれらがリーダーシップ、Aリストレベルの企業に求められるベストプラクティスの集まりであり、今後の取組の参考にもなります。
リーダーシップレベル(A-)要件
- EC-F3コモディティの完全な開示:1.22で自社が生産、調達していると回答するスコアリング対象コモディティについて、全て開示対象としているか、開示対象としない場合には正当な理由を提供している(関連質問番号:1.22)
Aリスト要件 ※主要なものを抜粋
- EC-F4リスクの特定、評価、および管理:森林リスクを特定、評価、管理するプロセスがあり、プロセスの詳細を回答している(調達をしている場合はバリューチェーン上流も対象範囲としてカバー)(関連質問番号:2.2.1、2.2.2)
- EC-F5 取締役会の監督:森林課題に対する責任を持つ取締役会レベルのポジションを回答、森林関連課題に関する取締役会レベルの専門性がある(関連質問番号:4.1.2、4.2)
- EC-F6 環境方針:自然生態系の転換なし、森林減少なし、森林減少なし・泥炭地開発なし・搾取なし (NDPE)のいずれか一つのコミットメントが含まれ目標日も明記された環境方針を公開(関連質問番号:4.6、4.6.1)
- EC-F9 バリューチェーン・エンゲージメント:森林関連課題におけるサプライヤーとの協働あり。最低一つのサプライヤーへの森林関連要求事項の報告、もしくは最低一つの森林関連のサプライヤーエンゲージメント活動を報告(関連質問番号:5.11、5.11.6または5.11.7)
- EC-F12 開示からの除外:重大な開示除外項目がない。除外している場合は除外の量と理由を説明(関連質問番号:8.1.1)
- EC-F13森林リスクコモディティの原産地:開示対象のコモディティについて原産地別調達/生産量を開示(関連質問番号:8.2、8.3および/および8.5)
- EC-F14目標:各コモディティについて森林減少なしおよび/または生態系の転換なし目標 を設定(指定期限2020年以前、目標年が2025年以前)(関連質問番号:8.7、8.7.1)
- EC-F15トレーサビリティ:各コモディティについてトレーサビリティ・システムを有し、調達量の少なくとも70%が生産単位および/または調達地域まで追跡可能(関連質問番号:8.8、8.8.1)
- EC-F16森林減少および転換なしのステータス:各コモディティについて、DCF、DFの状況について評価し、DCF/DF量の割合を報告(関連質問番号:8.9)
- EC-F17森林減少および転換のフットプリントのモニタリング:各コモディティについて、森林減少と転換のフットプリントのモニタリング、または評価を行っている(関連質問番号:8.10、8.10.1)
- EC-F18外部のイニシアチブとのエンゲージメント:方針やコミットメントの実行のために、ランドスケープ/管轄アプロー チを実施、または外部の活動に参加(関連質問番号:8.15または8.16)
日本企業の回答状況
回答率・スコア分布
結果が公開されている再新年(CDP2024)のフォレスト質問書への日本企業の回答数は236社でした。2023年からは増えましたが、気候変動やさらに水セキュリティと比べても回答率は低い状況で、今後さらなる増加が期待されます。スコア分布はCが最も多い結果となりました。気候変動や水セキュリティと比べるとスコアも改善の余地があります。
・2024年は236社が回答(2023年の105社から倍増)
・環境インパクト評価でCritical(重大)と評価されている業種でも20%程度の回答率。水の40%程度よりも低い
・気候変動に比べて水セキュリティとフォレストの回答率は低く、特にフォレストが低い
・スコア分布ではCスコアが圧倒的に多い
・気候変動、水セキュリティと比べるとスコアにも改善の余地がある
CDP2024のフォレスト質問書へは日本企業236社が回答(投資家要請対象のみ)し、2023年の105社から倍増しました。しかし、環境インパクト評価のインパクト別にみると、Critical(重大)と評価されている業種でも回答率は約20%にとどまっています。これは水セキュリティのCriticalの回答率約40%と比べても低い結果となっています。投資家要請対象全体の回答率は約42%であり、気候変動に比べると水セキュリティ、フォレストの回答率は低く、中でも特にフォレストの回答率が最も低い状況と言えます。2024年からの3本柱の質問書の統合は水セキュリティやフォレストの回答率を増やすことも一つの目的としており、今後さらに回答者数が増えていくことが期待されます。
スコアとしてはCが圧倒的に多くなっています。回答率が高い気候変動では年々AやB等の高いスコアを獲得する企業が増えており、Bが最も多くなっています。水セキュリティも最も多いのはCですがBも続いて多いです。フォレスト質問書はスコアにおいても全体的に改善されていく余地があると言えます。
図表案 8|インパクト別回答率



ASP Disclosure Japan Summit 2025 – CDP
(WASTE BOX 作成)
図表案 9|スコア分布



ASP Disclosure Japan Summit 2025 – CDP
(WASTE BOX 作成)
まとめ
森林は土地分門の自然の中心的存在であり、今後自然関連課題への対応がより求められていく流れの中で重要度が高まっていくことが想定される分野です。CDPフォレスト質問書への回答は回答要請に応えるだけではなく、TNFDやISSB等の自然全般の開示基準への対応準備にもなり、また企業のESG取組の次のステップへのヒントも与えてくれます。日本企業の回答率やスコアは気候変動や水に比べるとまだ改善の余地があります。今後より多くの企業が回答していくことを期待します。
ウェイストボックスは気候変動・水セキュリティ・フォレストコンサルティング及びSBT支援のCDP認定パートナーとして、気候変動・水セキュリティ・フォレストの三本柱及び新たな環境分野の回答をトータルでサポートしています。特に質問書及びスコアリング基準を深く理解し、そこからグローバルのベストプラクティスを抽出し企業のESG取組の進展に活かしていただくことを大切にしています。
参考文献
CDP公式資料
CDP_Forests_Japan_2023_0319.pdfCDP_Global_Forests_Report_2024.pdf
Preparing_for_Disclosure_Cycle_2026__Japanese_version_.pdf
CDP 2025 コーポレート完全版質問書、コーポレート完全版スコアリング基準(CDP2025開示サイクル – CDP)
CDP_Full_Corporate_Scoring_Introduction_2025.pdf
CDP_Forests_Scoring_Essential_Criteria_2025_JP.pdf
CDP_Global_Forests_Report_2024.pdf
ASP Disclosure Japan Summit 2025 – CDP


