森林破壊ゼロのコミットメントとは何か。SBTi FLAGガイダンスに基づき、「森林減少ゼロ」の定義、サプラチェーン全体を対象とする考え方、2025年目標の意味と企業に求められる対応を分かりやすく解説します。
※最終更新日 2025年11月
・SBTiやFLAG対応を検討・推進している企業のサステナビリティ担当者
・食品、農業、畜産、林業、紙・パルプ関連業界の実務担当者
・サステナビリティ方針やESG戦略の策定に関わる企画・経営企画部門の方
森林破壊ゼロのコミットメントは、近年、企業のサステナビリティ対応において不可欠なテーマとなっています。気候変動対策や生物多様性保全への関心が高まる中、森林減少への対応は単なる環境配慮の取り組みにとどまらず、企業の責任ある事業活動を示す重要な指標として位置づけられています。
特にSBTiのFLAGガイダンスでは、森林減少ゼロの実現を温室効果ガス削減の前提条件として明確に位置付けており、企業には具体的かつ実効性のある対応が求められています。森林破壊ゼロとは理念的な宣言ではなく、原材料調達から製品販売に至るまで、サプライチェーン全体を通じた継続的な管理と行動を伴うコミットメントです。
本コラムでは、森林減少ゼロの考え方や定義を整理するとともに、サプライチェーン全体を対象とする理由、そして2025年という目標年の意味について解説します。森林破壊ゼロに取り組むうえで、企業が押さえるべき基本的なポイントを理解するための一助となる内容です。
森林破壊ゼロのコミットメントとは
森林破壊ゼロコミットメントは、気候変動対策や生物多様性保全の観点から、近年ますます重要性が高まっている取り組みです。特にSBTiのFLAGガイダンスでは、森林減少への対応を温室効果ガス削減の前提条件として位置づけており、企業に対して明確な方針と実行を求めています。森林破壊ゼロとは単なる理念ではなく、サプライチェーン全体にわたる具体的な行動を伴うコミットメントです。
「森林減少ゼロ」とはどういうことか?
「森林破壊ゼロ」とは、森林破壊を引き起こさない、または、森林減少に加担しない商品の生産、取引、融資を行うことを指します。SBTiでは、この概念の定義として、アカウンタビリティ・フレームワーク(AFi)の森林減少の定義を採用しています。
AFiにおける森林減少とは、①農業やその他の非森林土地利用への転換、②植林地への転換、③深刻活持続的な劣化の結果としての自然林の喪失を指します。重要な点は、これらの転換が合法か否かに関わらず定義に該当する場合は森林減少とみなされることです。一方で、木材伐採などの自然林の管理行為については、自然林が植林地に置き換えられないこと、また管理活動が深刻活持続的な劣化につながらない限り、森林減少とは扱われません。
森林減少ゼロのコミットメントは、すべてのサプライチェーン量をカバーする必要があるのか?
AFiに沿った森林減少ゼロのコミットメントは、特定の一部原材料や調達先に限定されるものではありません。あるコモディティに関する森林減少ゼロのコミットメントは、企業が生産又は調達するコモディティのインベントリ全体を対象とする必要があります。
ここでいうインベントリには、原材料、加工品、最終製品に組み込まれた形態のいずれも含まれます。この考え方は、SBTi FLAGにおけるscope3排出削減目標で定められる「排出量67%カバー」とは異なり、森林減少ゼロのコミットメントでは、対象量を部分的に限定することは認められていません。企業は、自社が関与するサプライチェーン全体を視野に入れた対応が求められます。
2025年の目標とは?
SBTiのFLAGガイダンスでは、森林減少を行わないという目標の期日を2025年12月31日と定めています。AFiでは、この目標期日を「企業が森林減少ゼロコミットメントを完全に実行する期日」と定義しています。
完全な実施とは、主に二つの状態を満たすことを指します。一つ目は、企業のサプライチェーンにおける原材料のすべて、またはほぼすべてが、カットオフデイト以降に森林減少ゼロの土地で生産されていることです。二つ目は、森林減少リスクに対応するための効果的なシステムが導入されていることです。
具体的には、サプライヤーとのエンゲージメント、調達仕様書やサプライヤー行動規範の整備、苦情処理や対応プロトコル、必要に応じた協働プロセスの活用、さらに製品トレーサビリティや森林減少の監視体制、違反発生時の迅速な是正対応などが求められます。森林減少ゼロのコミットメントは一度達成すれば終わりではなく、継続的な管理によって維持されるべき取り組みである点が重要です。
まとめ
森林破壊ゼロのコミットメントは、単なる環境配慮の宣言ではなく、企業の事業活動そのものの在り方を問う取り組みです。SBTiのFLAGガイダンスでは、森林減少への対応を温室効果ガス削減の前提条件と位置づけており、原材料調達から製品に至るまで、サプライチェーン全体を対象とした包括的な対応が求められています。
重要なのは、「森林減少ゼロ」が合法・違法を問わず定義される点や、一部の調達量だけを対象とすることが認められていない点です。また、2025年という目標年は単なる到達点ではなく、森林減少リスクを管理する仕組みを継続的に運用していくためのスタートラインとも言えます。
森林破壊ゼロへの対応は難易度が高く、短期的に成果が見えにくい取り組みでもあります。しかし、自社の調達構造やサプライチェーンを見直し、リスクと向き合うプロセスそのものが、企業の持続可能性や信頼性を高めることにつながります。FLAG対応を検討する企業にとって、本コラムが自社の取り組みを考えるための第一歩となれば幸いです。

