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SBTi「5年レビュー義務化」と新ステータス制度が企業にもたらすインパクトを徹底解説 — SBTは“設定して終わり”の時代から“常に検証し続ける目標”の時代へ

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Science Based Targets initiative(SBTi)は、これまで科学的根拠に基づく温室効果ガス削減目標 ― いわゆる science-based targets ― を企業が設定し、その整合性を長期的に保つための枠組みを提供してきました。しかし、SBTi にコミットする企業が世界的に増え続け、気候科学そのものも急速にアップデートされるなかで、「数年前に承認された目標が、今も科学と整合しているのか?」という新たな課題が浮上してきました。こうした背景を踏まえ、SBTi は 2025年7月にMandatory Five-Year Review Guidance (5年の必須レビューガイダンス)と Commitment & Target Statuses(コミットメント&目標ステータス) を公開し、5年ごとのレビュー実施と、企業の目標ステータスを透明化するための新しい仕組みを導入しています。

これらの文書は、SBTが単なる“設定して終わりの目標”ではなく、最新の科学と SBTi の基準に照らして継続的に更新されるべき動的な目標であるという姿勢を明確に示しています。本記事では、この新ガイダンスの内容と意義、企業が準備すべきポイント、そしてステークホルダーにとっての重要性まで、丁寧に解説していきます。



※最終更新日 2025年11月

この記事を読んで欲しい人

・すでに SBT の承認を取得しており、次に何をすべきか知りたい方
→ 「自社はいつ 5 年レビューのタイミングなのか?」「提出期限は?」「何を準備する必要があるのか?」といった疑問を持つ企業の方に最適です。

・SBT の更新要件やステータス制度を正しく理解したい方
→ Committed、Targets Set、Expired、Active、Updated など、SBTi の新しいステータス分類がどう変わったのかを押さえたい方。

・脱炭素経営を推進する立場にあり、今後の要件を見据えたい方
→ サステナビリティ部門、経営企画、財務、調達、CSO室など、社内で SBT 運用を担う責任者の方。

・SBT をこれから取得しようとしている企業の担当者
→ 新制度の理解は、初回の SBT 申請時のスケジュール設計にも役立ちます。

・サプライチェーン上の取引先に SBT を求められている企業の方
→ 5年レビューやステータス制度が、今後のバリューチェーン要件にどのように影響するかが分かります。

目次

1. はじめに — なぜ今SBTiは見直しを求めるのか

Science Based Targets initiative(SBTi)は、科学的根拠に基づく温室効果ガス削減目標、いわゆるscience-based targetsを企業が設定し、そしてそれを継続的に維持していくための仕組みを提供してきました。SBTiはこれまでも数多くのガイダンスや基準(criteria)、そしてstandardsといった文書を公開し、企業に対して透明性の高い枠組みを提示してきましたが、近年、SBTiにコミットする企業の数が急速に増え、目標の提出数も前年よりさらに大きく増加していることから、これまでの仕組みだけでは十分に企業の現状と科学的要件を結びつけ続けることが難しくなってきました。こうした背景のなかで、SBTiはfive-year target reviews、つまり5年ごとのターゲットレビューに関する新しいガイダンスを公開し、このレビューが企業にとってどれほど重要であり、いかに必要不可欠であるかを説明しています。

この5年ごとのターゲットレビューは、企業がかつて設定した目標が、現在の SBTi の最新のcriteriaやstandardsと整合しているかどうかを再確認し、必要であればtarget update つまり目標の更新を行うためのものであり、単に過去の目標を維持するだけでは不十分になっているという現実を反映した制度です。SBTiは企業に対し、このレビュー を通じて最新の科学的知見やSBTiが定める基準に沿っているかどうかをチェックすることを求めており、それがすべての企業にとって不可欠なステップであると繰り返し強調しています。こうした動きは、企業の気候アクションや温室効果ガス削減の取り組みが、単なる宣言ではなく、継続的に更新されるべきプロセスであることを反映しています。

さらにSBTiは、この5年ごとのターゲットレビューと並行して、新たにコミットメントステータスおよび目標ステータスに関する整理を行った文書を公開しています。これらの ステータスは、企業が “Committed” (コミットメント)の段階にあるのか、すでに “Targets Set”(目標設定済)として認証されているのか、あるいは “Expired”(期限切れ)や“Inactive”(非アクティブ)といった状態に分類されるのかを、より明確に、そして誰が見ても分かりやすい形で整理するために導入されたものです。SBTi はこれらの ステータスカテゴリーを通じて、企業の目標が現時点でどの段階にあるのか、そしてそれが有効であるのか、それとも更新が必要であるのかといった情報を、より透明に示すことを目的としています。

特に、企業の気候コミットメントや脱炭素化経路が投資家や顧客企業、そしてより広いステークホルダーから注目されるなかで、こうしたステータスカテゴリーによる可視化は非常に重要です。SBTiは、いまや国際的な基準として、単に目標を提出するだけではなく、その目標が5年後のレビューによって最新のcriteriaと合っているかどうか、つまりscience-based(科学的根拠に基づくもの)であり続けているかが問われると強調しています。この5年ごとのターゲットレビューや拡張されたステータスカテゴリーの導入によって、企業は過去の目標を維持し続けるだけでなく、適応や更新、つまり目標更新を求められる状況がより明確になり、継続的な改善が促されることになります。このように、SBTiの最新ガイダンスは、企業が一度設定した目標を「固定化されたもの」ではなく、「常に基準と科学に照らして見直されるべきもの」として扱う考え方を示しているのです。

こうした 5年の必須レビューに関するガイダンスおよびコミットメント/目標ステータスに関する文書は、いずれも 2025 年 7 月に SBTi からリリースされた最新のアップデートであり、今後の SBT 運用に大きな影響を与えるものとなっています。

2. Mandatory Five-Year Review(必須の5年レビュー)

5年の必須レビューガイダンスは、SBTiが企業に対して「5年ごとに必ず目標レビューを実施しなければならない」という明確なルールを示した重要な文書であり、これは企業が一度設定した目標を、長期間そのままに放置してよいというものではないという姿勢を明確に打ち出したものです。SBTiは、このレビューがすべてのcorporates(企業)およびSMEs(中小企業)に対してmandatory、つまり必須であると繰り返し強調しています。この必須のレビューは、初回の目標検証または最後の包括的な目標更新を行った日から5年が経過したタイミングで起動し、そのタイミングを“trigger date”(トリガー日)と呼びます。トリガー日は、その月の最終日として取り扱われるという点もガイダンスに明確に記されています。

さらに、SBTi は トリガー日から6か月以内にレビュー結果を提出する必要があると規定し、もしこのレビューの結果、最新の SBTi Criteria や Standards と整合していないと判断された場合、企業は“target update”つまり目標更新を行い、トリガー日から最大 12 か月以内に新しい目標を提出しなければなりません。つまり、このレビューは単なるチェックではなく、SBTi の最新の要件に照らして妥当性を確認し、必要に応じて更新を行うという、明確で厳密なプロセスとして位置づけられています。SBTi はこの点を非常に丁寧に説明し、企業が誤解なくレビューの意義と必要性を理解できるよう繰り返し記載しています。

また、この 5年の必須レビューガイダンスでは、 レビューには“review only”つまりレビューのみと“target update”つまり目標更新という二つの結果があり得ることも明記されています。review only(レビューのみ)は、既存の目標が最新の SBTi Criteria に照らしても問題がなく、既存の目標野心やスコープカバー範囲などが引き続き有効であると判断された場合を指します。一方で target update(目標更新) は、既存の目標が最新の要件に適合していない場合に必要となります。たとえば、SBTi の基準が改訂され野心レベルが変わった場合や、企業の排出量プロファイルが大きく変化し、当初の経路が妥当でなくなった場合などがその対象となります。

SBTi は、企業がこれらのプロセスを円滑に進められるよう、レビューに必要なエビデンスやドキュメントの詳細もガイダンスの中で案内しています。レビューの目的は、単にルールを守らせることではなく、企業の目標が科学的基準と整合し続けているかどうかを確認し、必要に応じて更新を促すことで、science-based targets の信頼性を保つことにあります。また、SBTi はこの必須のレビューによって、企業が気候アクションを継続的に進化させることを期待していると説明しています。つまり、レビューはチェックリストではなく、企業の気候戦略を最新化するプロセスなのだということを重ねて強調しているのです。

3. 新しいステータス制度 — Commitment & Target Statuses

SBTi の “コミットメントと目標ステータス” 文書は、企業やその目標が現在どの状態にあるのかを、より正確に、より透明に、より説明責任のある形で示すために、複数の ステータスカテゴリーを整理したものとなっています。企業レベルの コミットメントステータスと目標ステータスの二つのカテゴリがあり、SBTi はそれぞれについて、これまで以上に細かく、かつ誤解の生じないよう丁寧に説明を加えています。

企業レベルでは、“Committed”(コミットメント) や “Targets Set” (目標設定済)といった慣れ親しんだカテゴリーに加え、期限付きの要求が守られているかどうかを示す “Expired” (期限切れ)や、基準不適合などによって削除された場合の “Removed”(削除) といった状態も明確に区別され、企業が現在どの コミットメントフェーズにいるのかが誰の目にも分かりやすいよう整理されています。特に “Committed”(コミットメント)は、企業が SBTi に コミットメントや手続を提出した段階であり、24 か月以内に目標を提出しなければ “Commitment Expired”(コミットメント期限切れ) となる可能性があるという点が明確に記述されています。

また、目標ステータスのカテゴリも詳細に定義されており、“Active” (アクティブ)は既存の目標が現行の SBTi Criteria に適合している状態を示します。そして、“Updated”(更新) は 5年レビュー や最新基準に基づく目標更新の結果、既存の目標に修正が行われたことを意味します。一方で、“Inactive” (非アクティブ)や “Expired” (期限切れ)は、企業が必要なレビューや更新の提出を期限内に行わず、結果として目標が有効ではなくなった状態を示し、透明性の観点からステークホルダーがその企業の気候コミットメントの現状を把握しやすい仕組みになっています。 さらに、“Previous Targets”(過去の目標) は、過去に承認されていたものの、その後の 更新によって新しい目標に置き換えられた旧目標を指し、企業がどのような更新を経て現在の目標に至っているのかを示すために重要です。“Withdrawn”(撤回) や “Archived”(アーカイブ済) といったステータスも定義されており、企業の要求や基準不適合などによって目標が取り下げられた場合に適用されます。SBTi がこうしたステータスカテゴリーを詳細に整理した背景には、企業の気候アクションをより正確に理解し、透明性と信頼性を高める目的があると繰り返し説明されています。

4. なぜこの見直しが重要なのか

SBTi は、5年レビューと拡張されたステータスカテゴリーの導入が企業にとって重要である理由を、いくつもの文脈から説明しています。まず第一に、気候科学および温室効果ガス削減に関する最新の知見は、数年前と比較して大きく変化している可能性があります。SBTi は criteria や standards を定期的に更新し、最新の科学やモデリング手法に基づいて要件をアップデートしています。そのため、過去に設定した目標が、現行の criteria に適合しているかどうかは定期的に見直される必要があります。5年レビューは、そのために不可欠なプロセスであり、企業が最新の要求に沿って目標を維持できているかどうかを確認する手段として不可欠であると強調されています。

また、SBTi は企業活動が期限付きのものであり、事業構造、サプライチェーン、エネルギー構成、排出量などが時間とともに変化するという現実も指摘しています。こうした変化は、過去に設定した目標の前提条件を変えてしまう可能性があります。5年レビューと目標更新のプロセスは、このような変化をきちんと反映し、企業が気候アクションを現実的かつ科学的に進めるための道筋(pathway)を整えることを目的としています。

さらに、ステークホルダー — 特に投資家や顧客企業 — は企業の目標が “Active” (アクティブ)な状態か “Expired”(期限切れ) な状態かといった情報を重視しており、その透明性が企業の信頼性に直結します。SBTi は、拡張されたステータスカテゴリーによって、その透明性を確保する仕組みを整えたと説明しています。このように、SBTi の見直しは、科学的整合性、実務的妥当性、透明性、説明責任の面から、企業にとって必要不可欠なものだと繰り返し述べられています。

5. 企業がすべき具体的な対応

企業は5年レビューに向けていくつかの具体的な対応を取る必要があります。まず、最新の GHG 排出量インベントリを整備することが求められます。Scope 1、Scope 2、Scope 3 の全排出源について基準年の適正性を確認し、必要であれば再計算を行うことが SBTi ガイダンスに明記されています。特に Scope 3 は企業の排出量の大部分を占めるケースが多く、データの入手が困難な場合もあるため、計画的な準備が求められます。

続いて、企業は最新のSBTi Criteria に照らして、現行の目標が適合しているかどうかを 自己評価し、必要なドキュメントを準備する必要があります。レビューの結果、目標更新が必要となった場合は、12 か月以内に新たな目標を設定し提出することが求められます。また、このプロセスを円滑に進めるためには、内部のガバナンス構造が重要であり、サステナビリティ部門だけでなく、財務、調達、業務など複数の部門が連携し、レビューと更新のスケジュールを管理する必要があります。

そのうえで、SBTi は レビュー期限の厳守を求めており、期限を超過するとステータスが “Inactive”(非アクティブ) や “Expired”(期限切れ)となる可能性があるため、企業は トリガー日を把握し、十分な時間を確保してレビューと更新の準備を進めなければなりません。こうした準備は手間のかかるものですが、企業が科学的根拠に基づく目標を維持するうえで不可欠な要素であるとガイダンスは繰り返し説明しています。

6. ステークホルダーへの意味

SBTi の5年のレビューと拡張されたステータスカテゴリーは、企業にとってだけでなく、企業を取り巻くステークホルダーにも重要な意味を持っています。まず、投資家や金融機関は、企業が維持している目標が最新の SBTi Criteria と合致しているかどうか、あるいはその目標が “Active”(アクティブ) か “Expired”(期限切れ) かといった点を気候リスク評価の中で重視するようになっています。SBTi がこれらのステータスカテゴリーを整理したことにより、投資家は企業の気候コミットメントを客観的に比較・評価できるようになります。

また、顧客企業やサプライヤーにとっても、パートナー企業がどのコミットメントステータスにあるのか、目標が “Updated”(更新済)なのか “Previous Targets”(過去の目標)なのかといった情報は、バリューチェーン全体の脱炭素化を進めるうえで重要です。SBTi は、ステータスによって企業の気候戦略の信頼性や実効性を把握しやすくすることが透明性向上につながると説明しており、企業間での気候アクションの連携を強化する要素として位置付けています。

さらに、レビューと更新の実施は、企業が “time-bound commitments” (期限付きのコミットメント)を真剣に取り扱っていることを示す証拠となり、ステークホルダーへの説明責任 を強化します。SBTi の新制度は、このように企業の外側の関係者にとっても、多くの意味を持つ仕組みとなっており、その導入によって企業の気候アクションがより信頼性の高いものへと進化する可能性を示しています。

7. 結論 — SBTiの新しい枠組みにどう向き合うか

SBTiの必須の5年レビューと拡張されたステータスカテゴリーは、企業の科学的根拠に基づく目標の運用に大きな変化をもたらすものであり、単なる制度の更新ではなく、企業が気候アクションを実施し続けるための新たな土台を提供するものです。SBTiは、企業が設定した目標が最新の基準に合致しているかどうかを確認し、その整合性を維持し続けることが重要だと繰り返し強調しています。この点を理解し、レビューと更新を適切に実施することは、企業にとって避けて通れないプロセスとなっています。

結論として、企業は SBTi の新しい枠組みを、単なる義務や制限としてではなく、科学的根拠に基づく目標の品質を維持し、透明性と信頼性を向上させるための機会として捉えるべきです。5年レビューを通じて、目標が最新のcriteriaやstandardsに合致しているかどうかを確認し、必要な場合には目標更新を行うことで、企業は気候コミットメントをより強固なものにできます。また、拡張されたステータスカテゴリーによって、企業の気候アクションはステークホルダーに対してより明確かつ説明責任のある形で示されるようになります。

SBTi の新ガイダンスが示す方向性は“継続的な更新と透明性”であり、企業がこの枠組みに積極的に向き合うことで、科学的根拠に基づく気候戦略を維持し続けることが可能になります。これこそが、今日の脱炭素経営における最も重要な姿勢のひとつであるといえます。

ウェイストボックスでは、すでに SBT の承認を取得されている企業様から、
「自社はいつ 5 年レビューの対象になるのか」
「そのタイミングまでに何を準備しておけばよいのか」
といったご相談を多くいただいています。

5年の必須レビューガイダンスやコミットメント/目標ステータスの内容を踏まえながら、各社様ごとにトリガー時期の整理や、必要となる GHG インベントリの整備、社内体制やスケジュールの考え方などを一緒に確認していくことも可能です。
「わが社の場合はどうなるのか?」と少しでもご不安や疑問があれば、どうぞお気軽にウェイストボックスまでご連絡ください。

出典

The SBTi provides guidance to aid companies in target updating and transparency – Science Based Targets Initiative

Forging the Next Chapter: SBTi releases new guidance for five-year target reviews and expanded status categories – Science Based Targets Initiative

Mandatory Five-Year Review Guidance

SBTi Commitment and Target Statuses


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