国際航空のCO₂増加に対応するICAOの制度「CORSIA」を、2024年からのベースライン厳格化(85%設定)や対象路線(State Pairs)、適格クレジット、SAFの算定実務まで整理します。
・航空業界・旅行業界で、CORSIAの全体像を短時間で把握したい方
・サステナビリティ/ESG担当として、国際航空の制度対応の前提を抑えたい方
導入
国際線の脱炭素は「国境をまたぐ」という性質上、国ごとのルールだけでは整合が取りにくい分野です。そこでICAOが共通枠組みとして整備したのがCORSIAです。本コラムでは、CORSIAの全体像を、制度の進み方(フェーズ)、対象になる路線の考え方、相殺の算定と適格クレジット、SAFの扱い、そして実務上の注意点に分けて説明します。
CORSIAが生まれた背景
国際線の航空機は、燃料の燃焼によってCO₂を排出します。航空は人とモノを遠距離まで運べる一方、国境を越えて運航するため、排出対策も国際的な共通ルールが求められます。そこで国際民間航空期間(ICAO)が中心となって整備したのが、CORSIA(Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation)です。CORSIAは、国際航空分野におけるCO₂排出の増加に対応するため、航空会社(運航者)に対して排出量の計測・報告・検証(MRV)を求め、必要に応じて相殺(オフセット)を行う枠組みとして位置づけられています。
制度の仕組み
CORSIAは段階的に進む制度です。
- Pilot(2021~2023)/ First(2024~2026):原則として国の参加は任意。
- Second(2027~2035):後発開発途上国などを除く全ての加盟国の参加が義務。
さらに重要なのが、対象になる国際線の考え方です。オフセット義務が発生するのは、基本的に「出発国と到着国の双方が、参加国リストに掲載されている路線の組み合わせ(State Pairs)」に該当する場合のみです。
※例えば、参加国Aから非参加国Cへのフライトは、排出量の報告
(MRV)は必要ですが、オフセットの義務は生じません。
どれだけ相殺する必要があるのか
各運航者の義務量は、概念的には当該年の対象排出量 − ベースラインで算定されます。
そのためCORSIAは「増加分」に対して義務が発生し、2024年以降は、より厳格な基準が適用されています。
- 2021~2023年:2019年排出量がベースライン
- 2024~2035年:2019年排出量の85%がベースライン
制度設計上CORSIAのオフセット必要量は、ICAO総会決議が、各運航者の義務量を「セクター成長要因」と
「個社成長要因」によって計算する枠組みを示しています。
また相殺に使えるのは「何でもよいクレジット」ではありません。CORSIAで使用できるのは、ICAOが承認した「適格排出単位(CORSIA Eligible Emissions Units)」であり、TAB(Technical Advisory Body)の評価や適格性基準(EUC)に沿った判断を経て、ICAO理事会が承認します。制度上は、必要量の排出単位を「キャンセル(償却)」することで義務を満たす、という整理です。
SAFの位置づけと、実務での注意点
CORSIAは、クレジットによる相殺だけでなく、SAF(持続可能な航空燃料)などの「CORSIA適格燃料」の利用も制度上扱います。ICAOの整理では、適格燃料の使用によってオフセット義務を減らせる旨が示され、持続可能性基準や算定方法、既定値などの関連文書が整備・更新されています。
一方で、実務では注意点も多いです。第一に、CORSIAはICAOの国際枠組みですが、手続の詳細(提出先、期限、国内での執行等)は各国当局の国内実装に依存します。制度対応を進める際には、当局ガイダンスの確認が不可欠で、判断が難しい場合は航空規制・環境規制に詳しい専門家に相談するのが安全です。
第二に、参加国リスト(state pairs)は年ごとに更新され得ます。
対象路線の判定は「最新の参加国リスト」に基づいて行う必要があります。
以上を踏まえると、CORSIAは国際航空においてMRVと適格オフセットの「共通土台」を作り、段階的に適用範囲を広げる制度だと整理できます。制度のルールを理解したうえで、毎年の判定と確認を地道に行うことが、実務上のポイントになります。
参考文献
2024-5 CORSIA 制度の仕組みについて((公財)航空機国際共同開発促進基金)2024-5.pdf

