国連がCOP27で発表した新提言をもとに、企業が“真のネットゼロ”へ向かうための基準と回避策を解説します。欧州のグリーンウォッシュ防止」新指令や日本の景品表示法などの規制動向にも触れながら、どのような表現がグリーンウォッシュに当たるのかのチェックリストを提示します。
※本記事は、環境コンサルティング専門のWaste Boxが、最新の法改正をもとに実務的な観点で整理しています。
※この記事の監修者:株式会社Waste Box 環境・カーボンアカウンティング部
認定GHG算定士/CDP対応アドバイザー ○○ ○○
※専門資格(SBTi認証支援、LCA分析士等)があれば表記(個人+組織の専門性」の組み合わせがGoogleに強く評価)
※最終更新日 2025年11月
グリーンウォッシュとはなにか
グリーンウォッシュとは
「グリーンウォッシュ」とは、環境配慮を“取り繕う”行為を意味します。英語の “Greenwashing” は「Green(環境)」+「Whitewashing(ごまかす/上塗りする)」を組み合わせた造語です。
例えば、環境省グリーンボンドガイドライン(2022年版22頁) には、「実際は環境改善効果がない、又は、調達資金が適正に環境事業に充当されていないにもかかわらず、環境面で改善効果があると称すること」 と記載されています。また、具体的なパターンとしては、 ① 偽りの情報 ② 消費者を誤解させる行為 ③ 実態的に取り組み行動を伴わずに環境問題に関する表象的 なコミュニケーションに従事する、企業の戦略 などが挙げられています。(東健太郎「グリーンウォッシュ研究の現在と今後の方向性—建設的な議論を目指して—」 サステナブルマネージメント22巻25ページ)
つまり企業や団体が「環境に優しい」「CO₂削減に貢献」といったメッセージを打ち出しても、実際の取り組みや排出削減効果が伴っていない場合、それは“グリーンウォッシュ”とみなされます。
H3グリーンウォッシュの問題点
グリーンウォッシュの表示行為を野放しにすることは、環境配慮社会へ移行にとって悪影響を及ぼすことが懸念されます。たとえば、正確な情報が発信されないケースが増えることで、消費者が特定の製品やサービスの訴求内容を信じることができず、結果として本来選ばれるべきであった適切な環境配慮型製品の普及が遅れてしまうことが考えられます。結果として、価格優位性が選定基準になってしまい、社会全体として環境配慮製品を開発するインセンティブが損なわれる事態も考えられます。
このように、グリーンウォッシュ行為を野放しにすることは、社会全体や経済活動にとって、負の影響を与える恐れがあります。
グリーンウォッシュの類型
それでは、グリーンウォッシュとされる行為にはどのようなパターンがあるのでしょうか?
例えば、カナダのマーケティング企業であるTerraChoice社の調査レポート『The Sins of Greenwashing』では、グリーンウォッシュのパターンを「7つの大罪」になぞらえて定義しています。
| № | 罪の名称(英/和訳) | 定義 | NG表現例 | 該当理由(なぜこの罪に当たるか) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | Sin of the Hidden Trade-off (隠れたトレードオフの罪) | 限られた点に基づいて、製品が環境に優しい(生物多様性を阻害しない)と主張すること | 「当社の新築ビルは再生可能エネルギーで運用される“ゼロエミッションビル”です」 (※建設時に多量のCO₂排出がある、解体廃棄を考慮していない) | 製品や建物の一部の環境的メリットだけを強調し、他の重大な環境影響(建設時の排出・資材調達・廃棄処理など)を無視している。ライフサイクル全体の環境負荷を示さず「一部良いところ」だけを宣伝しているため。 |
| 2 | Sin of No Proof (証明を示さない罪) | 信頼できる根拠を提示せず、「ネイチャーポジティブに寄与する」と主張すること | 「この物件は省エネ設計によりCO₂排出を大幅削減しています」 (※削減率や検証データの提示なし) | 主張の裏付けとなるデータ・証拠・第三者認証が提示されていない。環境性能の数値や比較基準がなく、「削減」や「環境に良い」という主張が根拠不明。統合報告書などでデータソースが示されていない場合も同罪。 |
| 3 | Sin of Vagueness (あいまいさの罪) | 定義が不十分・範囲が広いため、消費者が意味を誤解する可能性があること | 「エコ」「環境にやさしい」「サステナブルなまちづくり」など、抽象的スローガンを繰り返す。 | 言葉の定義が曖昧で、何をどの基準で環境に良いとするか明示していない。読み手によって意味が異なり、誤認を招く。とくに「環境配慮型住宅」「グリーンオフィス」など具体的基準を伴わない表現はこれに該当。 |
| 4 | Sin of Worshiping False Labels (偽ラベルを崇拝する罪) | 第三者の推奨がないにも関わらず、あたかも推奨されているように見せかけること | 「“Eco-Certified”認証マーク付き」 (※第三者機関による認証ではなく自社作成ロゴ) | 消費者や投資家が第三者認証と誤解する独自マークや紛らわしいラベルを使用。ISO 14021では、自己宣言型環境主張(Type II)は「第三者認証と混同しない表示」を求めている。実在しない認証を装う点でこの罪。 |
| 5 | Sin of Irrelevance (無関係の罪) | 関係のない情報をもとに、ネイチャーポジティブへの貢献を主張すること | 「当社の建材はフロンを使用していません」 (※そもそも法律で禁止されている/市場全体で不使用) | 真実ではあるが消費者の意思決定に無関係な情報を環境主張として強調している。法令遵守や業界標準を“環境配慮”と称するのは無意味。例:建築基準法に従うだけで「環境に配慮」と表現する。 |
| 6 | Sin of the Lesser of Two Evils (悪の中でマシな方の罪) | 生物多様性破壊をもたらす要因2つを並べ、限られた選択肢の中のみでインパクトを主張し、消費者の注意をより大きな問題から逸らすこと | 「当社の再開発は、従来の再開発と比較し、生物多様性への影響を低減した」 | 根本的に環境負荷の大きい行為を前提としながら、「他よりマシ」として正当化している。再開発・高層化など構造的に高排出な活動を相対的比較で正当化している点が該当。 |
| 7 | Sin of Fibbing (虚偽の罪) | ネイチャーポジティブに関する主張が誤っていること | 「当社の事業活動においてカーボンニュートラルを達成しました」 (※実際は一部の範囲のみ/オフセット頼み) | 主張自体が事実と異なる、または意図的に誤解を与える。達成範囲(スコープ1-3等)を明示せず「全社達成」と誇張する場合や、虚偽の実績報告もこの罪。EU Directive 2024/825ではこれが明確な不当表示に分類される。 |
このように、グリーンウォッシュは、明らかな虚偽掲載に限らず、根拠が不足していたり、あいまいな前提条件のもとでの主張であったりする場合でも、消費者に誤解を与える可能性がある点で、グリーンウォッシュとみなされるリスクを含んでいます。
グローバルなガイドラインの状況
以上のような背景を受け、現在、グリーンウォッシュ防止に寄与するような、掲示に関するガイドラインが整備されています。ここでは特に、近年多くの企業や機関が主張する「ネットゼロ」「カーボンニュートラル」という表現について、どのような具体的な要件が示されているのかを紹介します。
国連高レベル専門家グループ(HLEG)報告:
2022年COP27に合わせ、国連は「ネットゼロ」公約の信頼性確保に関するガイドラインを公表しました。ネットゼロの概念や求められる企業行動を明確化し、不明確な「ネットゼロ」宣言によるグリーンウォッシュを許さない姿勢を示しています[1]。例として、2050年ネットゼロ宣言だけ掲げ現実的な計画がない企業を問題視し、中間目標や化石燃料投資縮小など具体策を求めました。
<10の提言(抜粋)>
1. ネットゼロを宣言する:
ネットゼロ宣言は、非国家主体のトップによって公表され、世界的な気候緩和策のうち、非国家主体に公正に割り当てられた責務(フェアシェア)に相当する内容であるべきです。また、2025年、2030 年、2035年に向けた中間目標とネットゼロ達成のため計画が含まれなければなりません。
2. ネットゼロ目標を設定する:
非国家主体は、バリューチェーン全体の絶対的排出量、そして 適切とみなされる場合は排出強度について、短期、中期、長期の削減目標を設定する必要があります。これらの目標は、最低限、最新のIPCCの報告書が示した、オーバーシュートが無い もしくは限定的な形で気温上昇を1.5℃に抑えるネットゼロ排出経路に整合的でなければなりません。
3. ボランタリー・クレジットの活用:
非国家主体は、そのバリューチェーン全体において、早急かつ大幅な排出削減を優先させなければなりません。自主的市場における信頼性の高い炭素クレジットは、バリューチェーン外の緩和策として使用されるべきであり、非国家主体自身のネットゼロ達成に向けた中短期の排出削減量としては計上できません。
4. 移行計画の策定:
非国家主体は、包括的かつ実行可能なネットゼロ移行計画を公開しなければなりません。この移行計画は、公正な移行を支持しながら、全ての目標を達成するため、そしてガバナンス、報酬制度、資本的支出、R&D、技能・人材開発及びアドボカシー活動を整合させるために必要な行動を示したものでなければなり ません。移行計画は5年ごとに更新され、進捗状況は毎年報告される必要があります。
5. 化石燃料の段階的廃止と再生可能エネルギーの拡大:
全てのネットゼロ宣言は、IPCCとIEAによる温室効果ガス排出量ネットゼロに向けたモデル経路に沿って化石燃料の使用や支援の終了を目指す、具体的な目標を含むべきです。
6. ロビー活動とアドボカシー活動の整合:
非国家主体は、業界団体への加盟を含む渉外方針や行動を、2030年までに世界の排出量を少なくとも50%削減し、2050 年までにCO2排出量を正味ゼロにし、その後すぐに温室効果ガスを正味ゼロにする目標と、整合させる必要があります。
7. 公正な移行における人と自然:
ネットゼロ計画の一環として、土地利用からの排出量が多い企業は、残存する生態系の転換を回避する事業形態及びサプライチェーンを達成し維持しなければなりません。 このために、遅くとも2025年までに森林破壊と泥炭地の損失をなくし、2030年までにその他の自然生態系の転換を無くすことが求められます。
8. 透明性と説明責任の向上:
非国家主体は、ネットゼロ目標に対する進捗状況を効果的に追跡できるよう、自らの温室効果ガス排出量に関するデータ、 ネットゼロ目標と目標達成に向けた計画や進捗状況、及びその他関連情報のベースライン(基準値)に対する比較可能な推移データを毎年開示すべきです。
. 公正な移行への投資:
世界規模でネットゼロを達成するためには、公正な移行と持続可能な開発を確実に実現する一方で、金融機関や多国 籍企業が、政府、国際開発金融機関、開発金融機関と協力して、常により多くのリスクを負い、途上国のクリーンエネルギーへの移行に対する投資を大幅拡大する目標を設定するなど、 開発のための新しい取り決めが必要です。
10. 規制の導入を加速させる:
厳密性、一貫性、競争力を確保するため、規制当局は、民間 企業、国営企業、金融機関など影響力の大きい企業排出者 から順に、ネットゼロ宣言、移行計画、情報開示などの分野で規制や基準を策定すべきです。
※詳細は本文をご確認ください
ISOとSBT
国際標準化機構(ISO)は環境表示やカーボンニュートラル定義の標準化を進めています。ISO 14021(自己宣言型環境表示)は各国の表示ガイドラインの基礎となっており、企業による誤解招く表現を抑制する枠組みです。
さらに2022年には「ネットゼロ移行ガイドライン」(ISO/IWA 42)を策定し、ネットゼロや関連用語の定義、計画策定、透明な報告方法を網羅した指針を公開しました[2]。
また、Science Based Targets(SBTi)も自主的基準遵守を通じたグリーンウォッシュ防止策です。SBTi認定目標は企業の削減目標の妥当性を担保し、「科学的根拠に基づく目標」ラベルとして機能します。
国際的な規制動向
EU:「グリーンウォッシュ防止」新指令 2024/825(Empowering Consumers for the Green Transition 指令)
2024年3月にEUで採択・発効した新指令(2024/825)では、消費者向けの環境主張に対する規制が大幅に強化されました。この指令は各国で2026年までに国内法化される予定で、一般消費者向けの製品・サービス広告全般が対象です。
- 漠然とした環境表現の禁止:根拠なく「環境に優しい」「エコ」などと謳うことを禁じ、自社が卓越した環境性能を持つと証明できない一般的フレーズは不当表示とみなされます。例えば「グリーンビルディング(環境配慮建築)」と称する場合、認証制度(LEEDやBREEAM等)の取得や定量的根拠が必要になります。
- 一部のみの功績を全体へ誇張することの禁止:製品の一部や事業の一部だけが環境に良いにもかかわらず、あたかも製品全体や企業全体が環境配慮されているような表示は不当とされます。不動産開発でも、特定の建材や工程が環境配慮型でもプロジェクト全体が持続可能であるかのような誤解を与える表現はNGです。
- オフセットによる「カーボンニュートラル」主張の制限:排出オフセットに依存した「カーボンニュートラル」「ネットゼロ」等の主張は不公平な慣行リストに追加され、原則禁止されます。例えば購入したカーボンクレジットだけで「このビルは温室効果ガス実質ゼロ」と広告することはEUでは許されなくなります。
- 将来の環境目標に関する主張への要件:将来的な「ネットゼロ達成」「○年までにCO2○割削減」などの主張は、詳細で現実的な実行計画や測定可能な中間目標、第三者検証を伴わない場合、ミスリード表示とみなされます。企業のカーボンニュートラル宣言も、実行計画や定期的な検証なしでは規制対象です。
広告・パンフレットでの環境性能アピールに厳格なエビデンスが要求されます。また、本指令はEU提案中の「グリーンクレーム指令(Green Claims Directive)」とも連携し、違反時は各国法に基づき制裁金等の対象となります。
米国:SECの規制強化と訴訟例
米国連邦レベルでは気候変動対策の一環として**証券取引委員会(SEC)**がグリーンウォッシュへの対応を強めています。具体的には、ESG投資商品に関する虚偽・誇大表示への罰則適用や、ファンド名称規則の改正提案などが進められています。SECは企業の気候関連情報開示ルールを策定中で、これにより気候目標やカーボンニュートラル宣言に根拠のあるデータ開示を義務付ける方向です。さらに投資信託の名称規則について、「ファンド名に“サステナブル”等を含む場合、少なくとも80%をそれに沿う資産に投資する」ことを求める提案もなされています。
事例として、2022年以降、SECは複数の大手運用会社をESG関連の誤解を招く説明で摘発しました。Deutsche Bank傘下のDWSはESG投資戦略を「DNAの一部」と喧伝しながら実態が伴わなかったとして、2023年に米国で2,500万ドルの罰金を科され(加えてドイツ当局からも2025年に2,500万ユーロの罰金)。また2022年にはGoldman Sachs資産運用部門がESGファンドの運用実態に関する社内手続き不備でSECにより告発・罰金支払いと報じられています。
日本国内における規制動向
日本にはEUのようなグリーンウォッシュ特化法はありませんが、既存の「景品表示法」(不当表示防止法)や環境省の「環境表示ガイドライン」により対応しています。[3]
景品表示法による取締り
景表法は商品の優良誤認表示を禁じており、環境に関する誇大広告も対象です。実際、2022年12月には「根拠なく生分解すると謳ったプラスチック製品」についてメーカー10社に措置命令が出されています[4]。これは「土中で自然分解する」という表示が実証なく行われていたためで、環境性能を標榜する全業種に警鐘を鳴らすものです。
また過去には「電気代ゼロ住宅」と称しつつ特定条件下のみ成立するケースや、「再生材○%使用」とうたったが算出根拠が不透明なケースで行政指導が入った例もあります。消費者庁は近年SDGsブームに乗じた曖昧な環境宣伝に注目しており、悪質な場合は社名公表を含む厳しい措置を取る姿勢です。
環境表示ガイドライン
環境省は事業者向けに「環境表示ガイドライン」(2013年改訂)を示し、自主的な適正表示を促しています[5]。ここではISO 14020シリーズに準拠し、「環境ラベルや表示は製品ライフサイクル全体を考慮」「第三者認証でない自主的環境宣言にはそれと分かる表示」「比較表現する場合は根拠を提示」など具体例を挙げています。例えば「当社比○○%CO2削減」のような相対表現にはベースラインや前提条件を明示すること、「環境に優しい素材使用」など漠然とした主張は避けるよう記されています(裏付けデータの提示か、より具体的な表現への置き換えを推奨)。このガイドライン自体に法的強制力はありませんが、公取協など業界団体の自主基準に取り入れられており、結果的に業界ごとの広告審査の物差しとなっています。
金融商品分野の対応(金融庁)
グリーンウォッシュに関する規制は、当然金融商品にも及んでいます。金融庁は、ESG金融におけるグリーンウォッシュ懸念に対応するべく、金融庁は2023年4月、ESG投信(投資信託)に関する監督指針を改正し、販売会社に対し以下を求めました[6]:
- 紛らわしい名称・広告の禁止:実質的にESG要素のない商品に「SDGs」「サステナブル」等の名称や謳い文句を付けることを禁止。例えば従来、投資比率のごく一部しかESG要素が無いのにファンド名に「グリーン」等を冠した例がありましたが、今後は禁止です。
- 開示の充実:真にESG投信に該当する商品については目論見書や販売資料に具体的なESG投資方針・評価手法を記載させることを義務付け。単に「ESG考慮する」とだけ書くのでは不十分で、どのESG評価基準に基づきどう運用するか詳細を書く必要があります。
- ESG投信の定義明確化:指針では「投資先選定の主要要素としてESGを考慮し、目論見書の目的・特色欄に明記しているもの」をESG投信と定義しました。これに当てはまらないのにESG風のマーケティングをする行為は許されなくなっています。
以上により、日本の資産運用業界でもファンドのグリーンウォッシュ排除が進みました。販売現場で誇大なESGセールストークを行えば行政処分対象となり得るため、不動産投資商品(REITや不動産私募ファンド)でも適切なESG情報開示が求められるでしょう。
国際ルールとの比較
日本の規制は欧州に比べれば緩やかで、網羅的な禁止規定は少ないものの、既存法の運用で対処する形です。EUのように「○○表示は禁止」と明文化されたルールはありませんが、その分表現の自由度は高い反面、事後的に当局判断で処分が下るリスクが読みにくいとも言えます。
日本企業もグローバル市場で資金調達・事業展開する上で無視できず、事実上は海外基準を意識した情報開示を行う企業が増えています。東証プライム上場企業の多くはTCFDやSBTiにコミットしており、自主的に国際標準を遵守する動きが広がっています。総じて、日本では現在「グリーンウォッシュは景表法違反(優良誤認)になり得る」という位置づけで、実例を積み重ねながら規制が進化している段階と言えます。
グリーンウォッシュとされた主な事例
以下では、グリーンウォッシュの提起元となった機関・団体ごとに、どのような事例がグリーンウォッシュとして問題化されたのかの事例を一部紹介します。
広告自主規制機関による裁定:シェル(英国)
英国ではエネルギー大手シェル(Shell)が自社の低炭素エネルギー事業を宣伝する広告キャンペーンを展開しました。しかし、同広告はシェル全体の事業が主に化石燃料によるものである事実に触れず、あたかも同社の事業の大部分がクリーンエネルギーであるかのような印象を与えていましたtheguardian.com。この点が問題視され、広告基準を監督する英国広告基準局(ASA)は2023年6月、広告が重要な事実を伏せて消費者を誤認させる「グリーンウォッシング」に当たると判断し、当該広告の掲載禁止を命じました。この裁定によりシェルは高額な広告キャンペーンを中止せざるを得なくなり、環境配慮を過度に強調した企業イメージが損なわれる結果となりました。
規制当局による措置:ウォルマートおよびコールズ(米国)
米国では小売大手のウォルマート(Walmart)とコールズ(Kohl’s)が、「竹繊維(バンブー)製」と称する繊維製品を販売していました。しかし実際にはこれら製品は竹から作られたレーヨン(再生繊維)であり、製造過程で有害物質を排出するなど環境に優しいとは言えないものでしたreuters.com。こうした表示は消費者に天然で持続可能な竹素材だと誤認させる恐れがあるため、米連邦取引委員会(FTC)は虚偽・誤認表示として両社を提訴しました。その結果、2022年5月にウォルマートは300万ドル、コールズは250万ドルの民事制裁金を支払うことで和解し、問題の製品表示を是正する措置が取られました。
消費者・NGOによる訴訟:KLMオランダ航空(オランダ)
オランダの航空会社KLMは「Fly Responsibly(責任ある飛行)」キャンペーンにおいて、自社の航空サービスがあたかも環境に優しいかのようなメッセージを発信していました。具体的には、持続可能な航空燃料の利用拡大やカーボンオフセット(植林による排出相殺)によって「より持続可能な未来」に向かっていると宣伝し、消費者に「持続可能な飛行」が可能であるとの印象を与えていたのですtheguardian.com。これに対し環境団体(Fossielvrijなど)は、現状の航空業界ではオフセットや一部の代替燃料だけで飛行を真にサステナブルにはできないとして、2022年7月にKLMを相手取り訴訟を提起しました。その後、2024年3月にアムステルダム地方裁判所はKLMの環境宣伝が消費者を誤導する不当表示であり違法であると判断し、一部の宣言文が「グリーンウォッシング」に該当すると認定しました。
まとめ
先述したように、日本の規制は欧州に比べれば緩やかではありますが、今後過度な広告表示に対する制限が強まってくることは確実です。特に、「カーボンニュートラル」「ネットゼロ」といった表現には、例に挙げたような具体的な根拠や、どのような基準に基づいたのかの情報が不可欠です。ISO14068 カーボンフットプリント認証規格や、SBTネットゼロ基準といった国際的な認証機関に関する情報は、他のコラムでも発信していますので、併せてご覧ください。
弊社では、「アドバイザリーサービス」として、専門家の意見を定期的に確認することで、グリーンウォッシュのリスクについても適宜アドバイスしております。

