SBTi認定の新体制「SBTi Services」ポータルの概要、登録方法、申請フローをステップ形式で解説。
これから申請する企業担当者が知るべき操作ポイント・注意点に触れていきます。
※本記事は、気候変動コンサルティング専門のWaste Boxが実務的な観点で整理しています。
※この記事の監修者:株式会社Waste Box 小澤
CAAi公認講師/SBT認定、CDP回答支援対応
※最終更新日 2025年11月
・これから SBT認定を申請しようと考えている企業の環境・ESG担当者
・現行 SBTi Servicesポータルサイトでの登録や申請プロセスに不安がある担当者
・ポータル操作方法や登録後の流れを先に把握して手戻りを避けたい人
・SBTi更新・再申請対応を準備している担当者
SBTi Servicesポータルとは何か?
024年に導入されたSBTi Servicesポータルは、SBT認定申請をオンラインで完結できる新システムです。
企業の温室効果ガス削減目標の登録・審査・進捗管理を一元化し、従来の煩雑なメール申請を解消しました。 特に、審査効率化と申請データの透明性向上が大きな特徴です。

引用元:Set a science-based target today – SBTi Services
- 旧SBTi認定方式からの完全移行(メール中心のやり取り→ポータル管理)
- 企業アカウント単位での申請・クエリ対応・認定まで一括管理
- 企業アカウント単位での申請・クエリ対応・認定まで一括管理
SBTi(Science Based Targets initiative)は、パリ協定に整合する形で温室効果ガス削減目標を設定・認定する国際的枠組みです。これまで各企業は、申請書類の提出や質問対応をメールベースで個別にやり取りしていました。しかし、世界的に申請件数が増加し、進捗管理やデータ整合が課題となっていたことが考えられます。
こうした背景を受け、2024年秋より新たに導入されたのが「SBTi Servicesポータル」です。
このポータルでは、以下のような機能が提供されます。
- 企業情報・排出量・目標値などをオンラインフォーム上で申請
- 提出後の審査状況やクエリ対応(指摘対応)をダッシュボード上で確認
- 認定後の目標更新も同じ画面で管理
結果として、今まで申請提出後のクエリ対応で指摘されていた内容も
申請時の入力項目が増え事前に確認ができることで、審査に要する時間が短縮されるようになりました。
また世界中の企業が同一フォーマットで進捗を追えるようになり、
「グローバルスタンダードとしての透明性と一貫性」が強化されたと言えます。
一方で審査中に確認される内容をポータル上で事前入力が必要なため申請提出をするまで事前準備が非常に重要です。
図表案 1|SBTi Servicesポータル導入の全体像

ポータル導入の背景と目的
SBTiは 「SBTi Services」 という独立運営体制を確立し、
ポータルを中心としたクラウド管理型の審査運用に移行しました。
導入の目的は主に以下3つがあげられます。
① 透明性の向上:全ての審査ステータスをオンラインで可視化
② 効率化:提出・修正・再審査をワンストップで処理
③ 信頼性強化:世界共通のデータ構造による監査容易性 この体制変更により、SBTi認定における申請から
認定までのやり取りがプラットフォーム上で一元管理できるようになりました。
旧方式との違いとメリット・デメリット
| 項目 | 旧方式(2024年以前) | 新ポータル方式(SBTi Services) |
|---|---|---|
| 申請手段 | Excel+メール提出 | Webポータルフォーム (エクセル、CSVデータのアップロード) |
| 審査進捗 | メール通知のみ | ダッシュボードでリアルタイム確認 |
| データ更新 | 再提出が必要 | ポータル上で直接修正可能 |
| 審査期間 | 平均1~2か月 | 30営業日に短縮(予定) |
| コミュニケーション | メールベース | コメント機能で即時応答可能 |
メリット:
- 登録・審査・修正がオンライン上で完結
- 進捗が可視化され、内部共有が容易に
- 審査機関が短縮化
デメリット(現時点の課題):
- 英語UIのみで、初回設定時に手間がかかる(ポータルの表示をウェブブラウザの機能を使うと日本語で表示は可能)
- 申請時の入力項目が増え、申請提出までに時間を要する(提出前の事前準備がより重要に)
- アカウント登録は企業メールドメイン必須。
- 支援先のコンサルタントを追加連絡先に登録しておくと状況を相互に確認可能でスムーズ。
SBT申請から認定までの流れ
SBTの申請から認定まで主なステップは6STEPにて整理されます。
認定前フェーズの4STEPと認定後フェーズのSTEP2に分類できます。
【認定前フェーズ】
こちらが完了していないとSBTの申請自体ができません。
登録プロセスを完了し、参加資格(適格性)が判断され、
登録承認後に企業は該当する組織タイプに応じた企業種別(企業、金融機関、中 小企業)及び料金が通知されます。
コミットメントとは、24か月以内に目標申請を行い、検証を受ける宣言となります。
コミットメントが受領されると、SBTiウェブサイトのダッシュボードで掲載が確認できます。
(CDPにおいても部分得点が獲得できます)
目標の策定に当たっては、SBTiの基準要件やガイダンスに準拠することが求められます。
SBTi基準評価指標(CAI)を確認しながら申請前にSBT水準の算定、目標設定ができているか確認しましょう。
検証ポータル内で目標申請手続きを直接完了することが可能です。目標の申請及び検証プロセスの進捗については、メール及び検証ポータルを通じて随時通知されます。
【認定後フェーズ】
SBTi Servicesから検証を通じ、結果が企業に通知されます。
無事 認定を受けた企業の目標は、SBTiウェブサイト内のダッシュボードで公開されます。通常、指定がない場合は認知後一か月で公開されますが、任意の公開日を指定する場合、6か月以内に公開しなければ、当該目標の認定は無効となることに注意が必要です。 認定された目標について、社内外で発信する場合、比較可能性と透明性の観点から、企業はテンプレートを用いて逸脱しない表現を用いる必要があります。
目標の認定を受けた企業は、GHG排出量と目標に対する進捗状況について年次で開示する必要があります。
開示場所の推奨例として、以下が挙げられます。
・年次報告書
・サステナビリティレポート
・自社ウェブサイト
・CDP
・その他一般に公開される文書
多くの時間を要するのが③Develop④Submitのステップです。
基準に準じた目標設定を行うにはSBT水準での算定ができていることが前提になります。
ここにギャップが生じていると実際の審査時に再算定、修正作業が生じることが考えられるため
事前の準備がとても重要です。
また実際に申請するに当たり、ポータル上で表示されるフォームは企業の事業や入力内容に沿って異なります。
十分にスケジュールを確保して取り組むことを推奨いたします。
ここからはより詳しく各ステップの詳細を紹介します。
SBTi Servicesポータル登録と初期設定
SBTi Servicesポータルへの登録は、SBT認定プロセスの第一歩です。こちらは①Resisterに該当します。
アカウント作成から企業情報入力、認定タイプの選択までの手順を整理し、初期設定時のミスを防ぐための要点を解説します。
SBT申請経験がない企業でも、この章を読めばスムーズに登録が完了します。
- 登録は 企業メールアドレス必須、代表者と担当者を分けて設定(最大10人)
- 財務連絡先に登録した連絡先に請求書が送付される
- 組織内のエグゼクティブレベルの連絡先を1人含める必要あり
- 登録後は 組織情報・排出量データ・対象範囲 を順に入力
- SBTiの認定タイプ(通常/SME/金融機関)を最初に確定させる
SBTi Servicesポータルの登録は、SBT認定申請の出発点です。
初回の登録時に必要な情報を正確に入力しておくことで、後続の審査フローでの修正や差戻しを防ぎましょう。
登録の流れは以下の3ステップに整理できます。
公式サイト(services.sbti.org)にアクセスし、企業ドメインのメールアドレスで登録。
確認メールを受け取ったらアクティベーションを実施します。
個人アドレス(@gmail.com等)では登録できない点に注意が必要です。
会社名・所在地・セクター・年間排出量などを入力します。
特に業種分類は、後の削減目標カテゴリーに影響するため慎重に設定します。
初期登録時に「Corporate)」「中小企業向け(SME)」「金融機関(FI)」などから選択します。
登録内容により目標提出経路や料金が決定されるため慎重に設定しましょう。
登録フォームの提出後、SBTiサービス部門はデューデリジェンスプロセスを開始し、申請者が目標提出の資格を有するか評価します。SBTi公式ガイドライン(SBT Services Registrations Manual)を参照し、自社に適したものを決定しましょう。
審査プロセスを無事に完了した後、通知はSBTiサービス検証ポータルおよび電子メールを通じて行われます。審査結果は「承認済み」または「却下」の2つのカテゴリーに分類されます。検証ポータルの「アカウント」ページでもステータスの確認が可能です。
アカウントステータス

- フォーム作成中(Form in Progress)
-
このステータスは、エンティティユーザーがアカウント作成プロセスを一時停止した際に表示されます。登録内容はまだ編集可能な状態です。ユーザーは「表示」ボタンをクリックして作業を再開し、アカウントの送信を完了できます。
- 送信済み(submitted)
-
ユーザーが登録を正常に送信すると、ホームページ上のアカウントステータスは「送信済み」に更新されます。この状態ではアカウントは読み取り専用となり、ユーザーによる編集はできません。
- 審査中(Under Review)
-
SBTi Servicesの審査担当者が申請内容の評価を開始すると、ステータスは「審査中」に更新されます。ユーザーは「表示」ボタンをクリックすることで登録内容を閲覧モードで確認でき、「審査中の申請」ページに遷移します。
- 更新が必要(Update Required)
-
SBTi Servicesが審査中に不整合を発見した場合、または事業体からアカウント情報の修正依頼があった場合、ステータスは「更新が必要」に変更されます。この状態では登録内容を再度編集できます。ユーザーが申請を再提出すると、ステータスは再び「審査中」に戻ります。
- 承認済み(Accepted)
-
SBTi Servicesが申請を承認すると、検証ポータルのホームページ上のステータスは「承認済み」に更新されます。
組織タイプはSBTi審査担当者によって設定され、ポータル上に反映されます。
ユーザーが「表示」ボタンをクリックするとホームページに移動し、企業は関連するコミットメントや目標設定の手続きを進めることができます。ホームページの表示内容は組織タイプによって異なります。 - 却下(Rejected)
-
申請がSBTi Servicesによって却下された場合、検証ポータルのホームページ上のアカウントステータスは「却下」に更新されます。
提出までの主なステップ。
無事上記の登録が承認された後にユーザーはホームページに移動し、企業は関連するコミットメントや目標設定を進めることができます。(ポータルへの登録がお済ではない場合は具体的な申請には進めません)こちらは③Develop④Submitに該当します。
目標提出フォームへのログインを行い「Target Submission」タブに移動し、「Validate」ボタンをクリックしてみましょう。
「Target Submission」タブに移動し、提出物のリストが表示されます。

出典:ValidationPortalsubmissionmanual(SBT)
初めて目標を設定する場合は、「Create New Submission」をクリック、
すでに提出中の提出物がある場合は、リストでその提出物を探し、「表示」を選択して開きます。

出典:ValidationPortalsubmissionmanual(SBT)
その後の申請の提出までの主なステップは以下4つに分かれています。
申請する検証サービスを選択
基準年、Scopeごとの排出量(Scope1,2,3,FLAG関連)、目標等を記入
費用の支払い
利用規約への同意
各ステップには、企業情報や排出量に関する詳細な情報の入力が必要になります。
- 企業登録が完了しないと申請内容の入力項目に進めない。
- 提出要素の入力に一番工数を多く使う。(カテゴリごとに詳細な質問あり)
- 利用規約の署名が完了しない限り申請提出ができない。
- 署名者は、自社を代表して契約に署名する権限を持つ社内の個人である必要がある
検証サービスの選択と申請対象選定
SBTiポータルでは、申請時点で自社がどの検証サービスに該当するかを選択します。
具体的には申込予定の検証サービスについて、
新規/更新/追加の別、短期/ネットゼロ/FLAG、クライテリアのバージョンを選択します。
選択に応じて以下が決定するため選択にご注意ください。
- 次にどの質問が出るか
- 必要な情報
- 提出書類の審査方法
選定後は、基準年の排出量データや、目標設定情報を入力していきます。
- 選択した意図の進行を妨げるエラーが発生した場合は、ヘルプウィジェットを使用してお問い合わせ
- FLAG、ビルディングセクターに該当する場合もこのタイミングで選択。
認定後のステータスと次の手順
無事認定が完了すると、ステータスが「Approved」に変わり、
企業名がSBTi公式サイト(Target Dashboard一覧)での公開日が決定、掲載されます。
そのタイミングで プレスリリースいただくケースが多くございます。こちらは認定後フェーズの⑤Communicate⑥Discloseに該当します。
認定後の主な手順
- 目標公表:認定後半年以内に、企業Webサイトやサステナビリティレポートで開示。
- 進捗報告:1年ごとに進捗開示
- 目標の見直し:遅くとも目標設定から5年経過後に再評価を受ける必要あり。
SBTiでは、認定を「単発の合格」ではなく、持続的な改善サイクルとして位置づけています。
認定後も目標値やScope範囲を見直しすることで SBT認定企業としての信頼性が維持されます。
実務上のまとめ
- 認定後の目標の公表は、半年以内が原則。
- 認定時は、最新のGHGプロトコルおよびSBT基準に適応する必要あり。

図表案 10|SBTi承認後の運用サイクル図
SBTi申請時の実践的チェックリストと注意点
SBTi申請では、入力内容の整合性と証拠資料の不備が最も多いミスの原因です。
スムーズな審査のためには、提出前の「データ整合・書類添付・目標根拠」が重要です。
ここでは、実践チェックリストと注意点を紹介します。
- 算定の段階からSBTi基準評価指標(CAI)によるセルフチェックが重要
- 添付内容や入力エラーによって提出ができないことも
SBTポータル上でよく企業が戸惑われるのは、
審査要件に沿った基準年の算定ができていない“データそのもの”に問題を抱えるケースと
“入力・添付・根拠提示のミス”でエラーが解消できず提出ができないケースが考えられます。
前者は SBTi基準評価指標(CAI)に沿った申請フォームが用意されているため
要件を事前に理解したうえで算定を進めないと、いざフォームに入力する際に戸惑われることが考えられます。
後者は 特にポータル移行後、自動チェック機能によって 単位・数値・整合性の不一致が自動検出されるため、
エラーによって提出がうまくできないケースが考えられます。
以下チェックリストをご確認ください。
提出前のセルフチェックリスト
- SBTi基準評価指標(CAI)に沿った算定ができているか
- 除外排出量の入力漏れはないか、除外が規定内に収まっているか
- Scope1・2・3の境界定義が正確か(重複や抜け漏れがないか)
- FLAG排出量の算定ができているか
- 該当のカテゴリにおいてWTWベースで算定ができているか
- 活動量と排出量の単位が統一されているか(tCO₂e/MtCO₂e)
FLAG目標設定が不要な企業もFLAG排出量の試算が必要になります。
CAIに沿った算定のレビューアドバイスに加え、FLAG算定に関するご相談についても弊社にてサポートが可能です。
よくあるミスの原因
SBTi申請エラーでよくあるミスの典型例を以下に整理します。
| 分類 | よくあるミス | 原因 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 無効なデータ | 割合の入力 | 0~1で回答が必要 (30%は0.3等) | 入力ルールの確認 |
| 添付資料 | オプションチェック漏れ | CSVエクスポート時チェック漏れ | 提出直前に再確認 |
内部管理・スケジュール運用のコツ
SBTi審査期間や認定後、複数部署が関与するため
情報共有が滞ると提出の遅延や内容の不整合が生じやすくなります。
おすすめの運用フローは以下の通りです。
本項のまとめ
- SBTi基準評価指標(CAI)に沿った算定を事前に行うこと
- 提出前の社内ダブルチェックを仕組み化、進捗の情報を残すこと
- 審査期間に業務の余裕を持つこと
これらを徹底することで、申請を比較的スムーズに進めることができます。
SBTiはもはや「一度通す書類」ではなく、「継続的にアップデートする管理プロセス」です。
実務チェックリスト
- 社内調整
-
認定後のプレスリリースに向けた広報部との調整
エグゼクティブレベルとの連携 - 審査対応準備
-
審査期間中の通常業務の調整
SBTi 審査が始まってからの対応ルートを社内で共有済み - タイムライン管理
-
審査待ち、審査期間を社内スケジュールに組み込み済み
認定後、SBTダッシュボードにおける目標の公表日を広報と共有済み
よくある質問
- Q1. SBT認定の有効期限はありますか?
-
5年ごとに再評価が必要とされています。
その際は最新の基準での目標設定が求められるため、今後の見直しのタイミングでは
新SBT基準(Net-Zero Ver.2以降)にて目標の見直しが求められることが考えられます。 - Q2. SMEモードで申請した企業は、後からStandardに切り替えられますか?
-
原則不可です。SMEは中小企業向けの独立スキームであり、
Standardモードへ移行する場合は再申請が必要になります。 - Q3. 申請費用はどの段階で支払う必要がありますか?
-
ポータル上で申請内容を「Submit」した段階で請求書がメールで発行されます。
まとめ
申請完了はゴールではなく、「脱炭素経営を続けるためのスタートライン」です。
SBT認定を取得した企業は、目標に向かって削減・サプライヤーエンゲージメントを踏まえた事業活動をする必要があります。
どのように算定の数値に活動を反映させるか等別の課題も出てくるでしょう。 Waste Boxは、こうした実務課題を解決するために、
算定方法への反映・排出量削減シミュレーション、気候移行計画の策定支援等を提供しています。
「管理を仕組みに」「報告を文化に」-これが、持続的なSBTi経営の核心です。



