SBTi Servicesポータル完全ガイド:登録手順・機能・申請フローを徹底解説 詳しくはこちら

SHK制度とは?令和7年度報告(令和6年度実績)の変更点とGHGプロトコル・Jクレジットの関係を実務解説

  • URLをコピーしました!

SHK制度の最新改正を実務視点で解説。GHGプロトコルとの違い・比較も詳しく説明します。

※本記事は、気候変動コンサルティング専門のWaste Boxが実務的な観点で整理しています。

最終更新日:2025年12月05日
監修:株式会社Waste Box 小澤
(GHG排出量算定、SBT認定、CDP回答支援)



この記事を読んで欲しい人

本記事は、企業の温室効果ガス算定・報告業務に携わる実務担当者や、ESG・サステナビリティ推進部門の方を主な対象としています。
具体的には以下の方々に特に有責な内容となっています。
・ SHK制度の担当者
・GHGプロトコルでの排出量開示を求められる企業
・ 再エネ証書・クレジットの活用を検討している責任者

2025年(令和7年度)報告から、温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(SHK制度)は大きく改正され、算定方法・係数・報告区分が国際基準に近づく形で再設計されました。

一方で、企業は同時にCDP、SBT、TCFD等においてGHGプロトコルに準拠した国際的な開示も求められており、「国内制度(SHK)と国際基準(GHGプロトコル)の構造的ズレ」を理解して運用する必要があります。

本記事では、SHK制度の基礎から、令和7年度の重要な見直し点、再エネ証書やクレジットの扱い、そしてSHKとGHGプロトコルの違いまで、実務担当者が押さえるべき要点を体系的に解説します。

目次

SHK制度の基礎

温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(SHK制度)は、温対法に基づき、事業者に温室効果ガスの算定・報告・公表を義務づける制度です。目的は、排出量の透明化と自主管理の促進により、脱炭素経営を社会全体で推進することにあります。

HK制度の正式名称は「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」といい、「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」に基づいて運用されています。
この制度の目的は、事業者自らが温室効果ガスの排出量を算定・報告し、公的に開示することで、排出情報の透明性を高めるとともに、自主的な削減管理の促進を図ることにあります。

算定は基本的に「基礎排出量」と「調整後排出量」の二段構成で行われます。
基礎排出量とは、事業活動に伴い直接または間接的に排出された温室効果ガスを定量化したもので、CO₂(二酸化炭素)、CH₄(メタン)、N₂O(亜酸化窒素)、HFCs、PFCs、SF₆、およびNF₃(三フッ化窒素)の7種類が対象となります。
一方、調整後排出量は、基礎排出量をもとに、再生可能エネルギー証書、J-クレジット、非化石価値取引証書などの排出削減・吸収手段を考慮して補正した値を指します。これにより、実質的な排出量を把握し、国への報告・公表対象とする仕組みです。

なお、令和6年度以降の改正により、電気・熱の基礎排出係数や環境価値の扱いが見直され、非化石電源や再エネ電力の利用実績を基礎排出量算定段階から反映できるようになっています。

引用元:本制度における算定⽅法と他の算定基準の 関係について(第2回からの改定版)令和4年6⽉28日
stdy_20220628_r2.pdf

実務上のまとめ

◻︎算定シート(Excel/ツール)には更新日/出典の明記、数値更新を必ず反映。
◻︎係数やガイドラインの改訂がないか毎年確認

令和7年度報告分の主な変更点

令和7年度(2025)報告、6年度実績から、SHK制度では算定・報告方法が見直され、国際基準との整合性を高めた運用が求められます。主な変更点は以下の4点です。
① カーボンリサイクル燃料(CCU)の取扱い新設
② 直接排出と間接排出の区分報告
③ 基礎排出量(電気・熱)の算定方法の見直し
④ 国内・海外認証排出削減量(JCM含む)の取扱い見直し

新たな算定・調整ルールの追加

① カーボンリサイクル燃料(CCU)の取扱い新設

CO₂を利用して製造されたカーボンリサイクル燃料(CCU燃料)について、令和7年度報告から新たな算定ルールが導入されます。燃料製造時に生じる排出削減価値を、原排出者と燃料利用者との合意により移転できるようになり、移転された価値を保有する利用者は、報告における基礎排出量から控除可能となります。対象は「CO₂を利用して製造した燃料」に限定され、CCU技術全般が対象となるわけではありません。また、都市ガスとして供給される場合以外の取扱いについては、燃料の流通状況を踏まえ、今後追加的に制度整備が進められる予定です。

②基礎排出量(特に電気・熱)の算定方法の見直し

令和7年度報告から、温室効果ガス算定・報告・公表制度における「電気・熱の基礎排出量」の考え方が大きく転換します。従来は、事業者が使用した電力・熱について、電力会社・熱供給事業者の一般的な排出係数を用いて算定していました。しかし今回の改正では、電気事業者及び熱供給事業者が非化石証書やグリーン電力証書、再エネ由来J-クレジットといった“環境価値”を調達した場合、その価値を反映させた 「基礎排出係数(非化石電源調整済)」 を用いる方式へと移行します。これは、国際基準であるGHGプロトコルのScope2マーケット基準に整合した考え方であり、事業者が選択した再エネ導入や証書取得の効果を、より直接的に排出量へ反映できるようになるのが特徴です。すでに再生可能エネルギーを活用している需要家にとっては、これまで調整後排出量で評価されていた効果が、今後は“基礎排出量”の段階から反映される点に注意が必要です。制度は、再エネ調達の努力を正面から評価する方向へ一歩進んだと言えます。

changes_2025_rev2.pdf(令和7年3月3日)
令和7年度報告からの 温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度の変更点について

③直接排出と間接排出を区別した報告

従来エネルギー起源CO₂は、燃料による排出と電気・熱の使用による排出をまとめて報告する形式でした。しかし改正後は、燃料使用による直接排出と、他者から供給される電気・熱による間接排出を明確に区別して報告・公表することが義務化されます。これにより、事業者は排出の源泉ごとに削減策を検討しやすくなり、排出構造の透明性も向上します。とりわけ、電気由来の排出が大きい企業では、再エネ導入や証書活用の効果がより分かりやすく可視化される点がメリットです。報告区分を分ける考え方は、国際的なGHGプロトコルが採用するScope1(直接排出)・Scope2(エネルギー起源の間接排出)の枠組みに近づくものであり、日本の制度が国際整合性を一段と高めたことを示しています。

changes_2025_rev2.pdf
令和7年度報告からの 温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度の変更点について

④国内・海外認証排出削減量(JCM含む)の扱いの見直し

令和7年度報告から、国内外の認証排出削減量の取扱いがより明確に整理され、運用ルールが強化されます。対象となるのは、JCM(二国間クレジット)を含む国内外のクレジットをSHK制度で活用する場合で、クレジットの信頼性を確保するために、手続き、証憑の取り扱い、確認の際の要件が見直される点が特徴です。具体的には、クレジット発行申請で求められる添付資料の水準が明確化され、クレジットを確認する検証機関に求められる能力要件も整理されます。これらは新しい制度が創設されるというより、既存の確認・審査プロセスをより厳格かつ明確にする改正と位置づけられます。

各種制度、クレジットや再エネ証書の違い

SHK制度は国内法に基づく排出報告制度であり、国際基準であるGHGプロトコルとは算定範囲・係数・カーボンクレジットの取扱いに明確な違いがあり、制度間での整合性確保が重要です。

主なポイント(要約/サマリー)
  • SHK制度:法定報告(国内義務)/GHGプロトコル:国際開示(自主指標)
  • クレジットの加算・控除ルールが異なる(J-クレジットの扱いは日本独自)

1)SHK制度とGHGプロトコルの違い

SHK制度(温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度)は、国内法で定められた算定・報告制度である一方、GHGプロトコルは国際的な温室効果ガス算定のガイドラインです。
どちらも温室効果ガスの排出量を定量化する点では共通していますが、目的・算定範囲・排出削減手段の取り扱いにおいていくつかの重要な違いがあります。
また、カーボンクレジットの扱い方も制度により異なるため、両者を正確に区別して運用することが重要です。

まず、両制度の最も大きな違いは、「制度目的」と「報告範囲」です。

  • SHK制度は「温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)」に基づく法定制度であり、国内事業者に対して算定と国への報告を義務付けるものです。排出量の可視化を通じて、企業の自主的な削減取組を促すことを目的としています。
  • GHGプロトコルは、世界的な企業や自治体が共通の指標で排出量を算定・報告できるようにするための国際基準であり、任意の取り組みです。企業のサプライチェーン全体(Scope1・2・3)を包括的に把握することを重視しています。

つまり、SHK制度が「国内法に基づく報告義務」であるのに対し、GHGプロトコルは「グローバルな開示・比較可能性」を目的として設計されており、算定の粒度や算定範囲の設定も異なります。

加えて、SHK制度ではScope1・2(直接・間接排出)が中心であり、Scope3(バリューチェーン排出)は報告任意です。 一方GHGプロトコルでは、Scope3を含めたサプライチェーン全体の算定が前提となっており、より広範な排出責任を可視化します。

2)カーボンクレジット・再エネ証書の扱いの違い

前提として、クレジットによる「カーボ ン・オフセット」と、再エネ証書による「再エネ調達」という概念が以下のように異なるものであるという ことの認識が必要です。

・「クレジット」とは、ある架空の現実から排出削減・吸収 によって削減・吸収された分の 排出量を価値として取引できるようにしたものです。基本的に、これらはtCO2単位で取引されます。
・「再エネ電力証書」とは、再エネ電力が持つ「再エネで発電された価値」を切り出 して、取引できるようにしたものです。基本的に、これらはkWh単位で取引されます。再 エネ電力証書を自社の電力に適用した場合、その電力の出自は「再エネ由来」に上書 きされるので、排出量がそもそもゼロとなります。これは発電時の排出をオフセットして いる訳ではなく、再エネ電力を調達したと考えるものです。
カーボンクレジット・再エネ証書は、企業の排出削減や再エネルギー利用を裏付ける重要な手段ですが、SHK制度とGHGプロトコルでは、その計上・報告方法が異なります。以下に両者の取扱いの主な違いを整理します。

SHK制度におけるにおけるオフセットの扱い

SHK制度では、排出量は 「基礎排出量」 と 「調整後排出量」 の二段構成で算定されます。今回の令和7年度報告からの改正により、再エネ証書や再エネ由来J-クレジットの扱いが大きく変わり、基礎排出量にも反映されるようになりました。

基礎排出量(調整前)

令和7年度報告からは、電気・熱の基礎排出量算定において、以下の環境価値を反映できます。

  1. 電気・熱供給事業者が調達した非化石証書・グリーンエネルギー証書
  2. 事業者自身が取得・無効化した非化石証書・グリーンエネルギー証書

これらは、電気・熱由来の排出量から環境価値の分を控除する形で反映され、
再エネ調達を基礎排出量の段階で表現できるようになっています。

調整後排出量(オフセット後)

基礎排出量からさらに、J-クレジットなどの排出削減クレジットを用いて控除した結果を示す値です。 報告時には、基礎排出量(控除前)と調整後排出量(控除後)を併記し、使用したクレジットや証書の種類・用途を明確にすることが求められます。

このように、SHK制度では
• 再エネ証書:基礎排出量で反映
• カーボンクレジット:調整後排出量で控除
と、目的に応じて適用段階が異なるのが特徴です。

3) GHGプロトコルにおけるオフセットの扱い

GHGプロトコルでは、クレジットによるオフセットはScope 1, 2, 3から控除せず、独立して報告することが原則とされています。
したがって、クレジットの購入によってScope排出量を直接「削減している」とは扱えません。一方で、Scope 2 Guidanceに基づき、電力起因の排出量(Scope 2)については次の2つの算定方法が導入されています。

・ロケーション基準(Location-based):
 電力系統の平均排出係数を用いて算定。
・マーケット基準(Market-based):
 契約や証書に基づく実際の調達電力属性を反映して算定。

再エネ証書(グリーン電力証書、非化石証書、再エネ由来J-クレジットなど)を活用した場合は、このマーケット基準の報告に再エネ調達として反映できます。
これはオフセット「排出を相殺する」のではなく、「再エネ電力を調達した結果として排出係数がゼロとなる」扱いであり、SHK制度の「基礎排出量」に相当する考え方です。

実務上のまとめ

◻︎SHK制度ではクレジットによる調整後排出量への控除可、GHGプロトコルでは控除不可、別開示が原則
◻︎再エネ証書を活用する場合は、GHGプロトコルのScope2マーケット基準での報告に利用可能

stdy_20220317_3.pdf

SHKとGHGを算定する際の注意点

企業によっては、国内の法定報告(SHK)と、CDP回答・サステナビリティレポートなどの国際開示 (GHG)の算定を同時並行で行うケースが多くあると考えています。
実務としては算定シートにその差異の説明や算定範囲や補正手法の違いを記載しておくことが推奨され ます。
環境省にても両者の整合性を確保する観点から、換算手法について議論されていました。

環境省資料:GHGプロトコルと整合した算定への換算⽅法について(案)令和4年9⽉12⽇
stdy_20220912_4.pdf

算定に用いるデータの性質を十分に把握していなければ、正確な結果を導くことは困難です。弊社ではGHGプロトコルにおける多数の排出量算定支援の実績がございます。算定方法や進め方にご不安のある方は、ぜひお気軽にご相談ください

本記事のまとめ(要点)よくある質問(FAQ)

要点

・ SHK制度は温対法に基づく国内の法定報告制度で、基礎排出量・調整後排出量の二段構成で算定する。
・ 2025年報告から以下が改正
  CCU燃料の新扱い
  直接排出/間接排出の区分報告
  基礎排出係数(非化石電源調整済)の導入
  JCM等クレジットの取扱い明確化
・クレジットは調整後排出量のみに反映という構造が明確化。
・GHGプロトコルではクレジットによるオフセットはScope算定において控除不可

Q1. SHKとGHGプロトコルの排出量に差が出ます。どう対処すべき?

ルールの目的と算定方法が異なるため、数値差は発生します。
そのため 両者の算定方針の違いを明記し、社内外説明に使えるよう保管しておくことを推奨します。

Q2. 直接排出と間接排出の区分はScope1・Scope2と同じ?

概ね同じ考え方ですが、SHK制度は国内制度の区分に基づくため、GHGプロトコルのScope分類と完全一致するわけではありません。


この記事が気に入ったら
いいねしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次