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CFPの利活用シーン|社内改善から調達・規制・開示まで、目的別に必要な精度を見極める

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CFP(カーボンフットプリント)を算定する前に決めておくべきは、「どの場面で使うか」です。社内の削減検討に使うのか、取引先や規制当局、投資家に示すのかによって、求められる精度とデータの揃え方は変わります。本稿では、CFPが使われる代表的な場面を社内から社外へと整理し、それぞれで必要な「確からしさ」を逆算して設計する考え方を解説します。

監修者:株式会社ウェイストボックス 環境ソリューション第1事業部 部長 木塚晴久(CFP・LCA・EPDの実務を担当)

最終更新日:2026年6月19日

この記事を読んで欲しい人

  • CFPの全体像(社内改善から調達・規制・金融開示・マーケティング・データ共有まで)を短時間で掴みたい方
  • 自社でCFP算定を始めたいが、目的に合った精度の選び方を理解したい方
  • 経営層や管理職から「CFPは結局なんのためか」と聞かれて、簡潔に説明したい方
  • サプライヤーへのCFP要請や、顧客からのCFP提出依頼に対応する立場の方

目次

  1. 1. CFPは「使う場面」で必要な精度が変わる
  2. 2. 社内での活用:削減ポイントの特定と効果のモニタリング
  3. 3. 調達・サプライチェーンでの活用:データ共有の設計が鍵
  4. 4. 社外開示・規制・マーケティングでの活用:比較と第三者性が問われる
  5. 5. 利活用シーンから逆算して精度を設計する
  6. よくある質問(FAQ)
  7. まとめ
目次

1. CFPは「使う場面」で必要な精度が変わる

CFPは、いったいなんのために算定するのでしょうか。製品単位の排出量が見えると、その用途は社内の改善活動から、調達・規制対応・情報開示・消費者コミュニケーションまで一気に広がります。逆にいえば、使う場面を決めないままに算定を始めると、精度が足りずに作り直したり、必要以上の精度を追ってコストを浪費したりすることになりかねません。

図1:CFPの利活用シーンは、社内での活用、調達・サプライチェーンでの活用、社外開示・規制・マーケティングでの活用へと広がり、社外に近づくほど比較・検証が前提になりやすい。

CFP(カーボンフットプリント、Carbon Footprint of Products)とは、製品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルまでのライフサイクル全体で排出される温室効果ガス(GHG)を、CO₂相当量(CO₂e)に換算して示した算定結果です。CO₂のほかメタン(CH₄)やN₂O等も、地球温暖化係数を用いてCO₂相当量に換算して合算します。算定結果としてのCFPと、それを示す表示・制度(CFP表示、CFPプログラム)は区別して扱います。基本的な定義やライフサイクルの考え方は、媒体内記事「CFP入門」で整理しています。

CFPの利活用シーンを整理するうえで、まず押さえるべき軸があります。環境省・経済産業省「カーボンフットプリント ガイドライン」(2023年3月)は、CFPの取組を「客観性」と「正確性」という2つの水準で整理しています。同ガイドラインは、これら2つの水準が高いほど確からしさは向上する一方で、取組の難易度とコストも上がる、と説明しています。つまり、すべてのCFPを最高水準で算定する必要はなく、用途に応じて必要な水準を選ぶことが前提とされています。なお、日本では2026年3月に、ISO 14067:2018に対応する国家規格としてJIS Q 14067:2026が制定されました。国内でCFP算定方針を設計する際は、同ガイドラインに加えてJIS Q 14067も参照対象になります。

この「用途に応じた水準の選択」を具体化するために、同ガイドラインは要求事項を2段階で整理しています。1段階目は、すべてのCFP算定で満たすべき「基礎要件」です。2段階目は、算定したCFPが他社製品と比較されることが想定される場合に、追加で満たすべき要件です。後者では、利害関係者の合意を経て策定された製品別算定ルール(PCR等)の使用が求められます。

ここで重要なのは、利活用シーンによって「比較されることが想定されるかどうか」が分かれる点です。同ガイドラインは、自社製品の削減計画の策定や削減推移の測定、サプライヤーへの削減協力要請、金融市場からのScope 3開示要求への対応、自主的なCFPによる企業・製品ブランディングを、基礎要件で取り組めるシーンの例として挙げています。一方で、CFPを活用した公共調達、CFPに基づく規制、顧客企業のグリーン調達行動での要件化は、比較されることが想定されるシーンの例として位置づけています。

図2:客観性と正確性の2軸で確からしさを整理する。比較されることが想定される用途では、基礎要件に加えて製品別算定ルールや検証が求められる。

以下では、CFPの利活用シーンを「社内での活用」「調達・サプライチェーンでの活用」「社外開示・規制・マーケティングでの活用」の3つの領域に分け、それぞれで必要となる精度の水準を確認していきます。

2. 社内での活用:削減ポイントの特定と効果のモニタリング

最も基本的な使い方は、社内での改善活動です。環境省・経済産業省「カーボンフットプリント ガイドライン」は、CFPに取り組んだ企業は、排出量が多いポイントを把握して効果的な排出削減対策を検討したり、削減の効果をモニタリングしたりすることが可能になる、と整理しています。

製品の排出は、原材料調達、製造、流通、使用、廃棄・リサイクルなど複数の段階に分かれます。CFPを算定すると、どの段階が排出に効いているか(ホットスポット)が見えやすくなり、対策の優先順位をつけやすくなります。この段階で先に決めておきたいのが、「どこまでを算定対象にするか」というライフサイクル境界です。最終製品では原材料調達から廃棄・リサイクルまで(Cradle to Grave)、中間製品では原材料調達から出荷まで(Cradle to Gate)が基本となります。境界の引き方の詳細は、媒体内記事「Cradle to Graveという視点」で解説しています。

削減効果を継続的に追う「経時比較」も、社内活用の中核です。同ガイドラインは、CFPを経時比較に使う場合、トラッキングが可能となるように、同一の機能単位・同一の手法(使用した場合は同一の製品別算定ルール)で算定しなければならない、と規定しています。例えば、ある製品に削減対策を施した成果をモニタリングする場合、前提条件を揃えなければ、削減できたのか算定方法が変わっただけなのかを区別できません。

図3:CFP算定で排出の大きい段階(ホットスポット)を可視化し、削減の優先順位づけと経時モニタリングに使う。数値は例示。

社内での意思決定や製品改善が目的であれば、他社製品との比較は前提になりません。したがって、この領域では基礎要件を満たす水準のCFPで足り、製品別算定ルールが整っていない製品でも、ISO 14067:2018等の国際基準に整合した自社独自の算定ルールに基づいて取り組むことができます。CFPは社外に示すためだけのものではなく、気候変動に絞った社内の削減検討にも使える道具である点を押さえておくとよいでしょう。なお、CFPとLCA(ライフサイクルアセスメント)の使い分けについては、媒体内記事「CFPとLCAの違いとは?」を併せて参照ください。

3. 調達・サプライチェーンでの活用:データ共有の設計が鍵

CFPが社外との関係に関わり始めるのが、調達とサプライチェーンの領域です。環境省・経済産業省「カーボンフットプリント ガイドライン」は、先進企業では調達先の選定方針にCFPやEPD(環境製品宣言)認証を活用しており、これがサプライヤー側のCFP算定・開示の動機付けになっている、と指摘しています。

同時に進むのが、サプライヤーエンゲージメントです。Scope 3を含むサプライチェーン全体の排出量算定・削減が求められるなか、サプライヤーから調達する製品のCFPが、自社のScope 3把握にとって重要になります。そのため、サプライヤーにCFPの開示を依頼し、削減を働きかける例が増えています。組織単位のScope 3と製品単位のCFPの関係については、媒体内記事「ScopeとCFPの違い」で整理しています。

このとき避けて通れないのが、データ共有の設計です。CFPを算定するために収集する活動量データ(原材料の使用量や製造時の電力消費量など)は、各企業の製造情報や調達情報を含む営業機密に該当する可能性があります。同ガイドラインは、CFP情報の共有にあたって、算定結果としてのCFPの値のみを共有するのか、算定に用いた原材料使用量や排出係数の値まで含めて共有するのかは、データ共有の仕組みで定めるポリシーに依存する、と整理しています。

つまり、実務上は「CFPの値だけを共有するのか」「算定根拠(データや係数)まで共有するのか」「第三者検証を付けるのか」という共有の設計を、取引当事者間で事前に決めておく必要があります。こうした課題に対しては、信頼性の高いCFPデータを機密性を守りつつ交換するための標準化の取組も進んでいます。同ガイドラインは、WBCSDのThe Partnership for Carbon Transparency(PACT)が進めるPathfinder Networkや、Green×Digitalコンソーシアムによるデータ規格共通化の取組を例として挙げています。

図4:共有範囲は用途に応じて設計する。値のみ、算定根拠まで、第三者検証付き、と段階が上がるほど信頼性は高まるが、合意形成や機密保持の難易度も増す。

顧客企業のグリーン調達で要件化される場合は、企業間の比較が前提になりやすいため、基礎要件に加えて、製品別算定ルールに基づく算定が求められる場面が出てきます。一方、サプライヤーへの削減協力要請のように、比較ではなく改善を目的とする場合は、基礎要件の水準から始めることが現実的です。なお、基礎要件の水準で算定したCFPを取引先に提出する場合は、算定報告書や提出資料に、本CFPは他社製品との比較を目的に算定したものではなく、他社が算定したCFPとの単純比較には使用できない旨を明記しておくと、提出後の誤用や誤認を防げます。CFPの比較は、ライフサイクルステージ・機能単位・市場・参照ルールといった条件を満たす場合に限って成立するためです。

4. 社外開示・規制・マーケティングでの活用:比較と第三者性が問われる

CFPが外部の評価や制度に組み込まれるのが、開示・規制・マーケティングの領域です。この領域では、第三者から比較・検証されることが前提になりやすく、求められる確からしさの水準が一段上がります。

金融・開示の場面では、Scope 1・2に加えてScope 3の開示を求める動きが広がっています。日本では、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が2025年3月5日に「サステナビリティ開示基準の適用」「一般開示基準」「気候関連開示基準」の3基準を公表しました(いずれも2026年3月13日に改正)。さらに2026年6月11日には、温対法のSHK制度が定める方法で測定・報告する温室効果ガス排出を用いて気候関連開示基準に従う場合の実務対応基準第1号が公表されています。これらは国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)のIFRSサステナビリティ開示基準を土台としており、Scope 3排出量の開示が枠組みに含まれます。製品単位のCFPは、Scope 3の算定根拠を支える材料の一つとして位置づけられます。なお、環境省・経済産業省「カーボンフットプリント ガイドライン」は、ESG投資が全世界で35兆ドル(約4,800兆円)に達しているとし、開示によって企業の優劣が鮮明になれば投資家による選別が進みやすくなる、との見立てを示しています。

規制対応の場面では、欧州が先行しています。象徴的な例が、EUの電池規則(Regulation (EU) 2023/1542)です。同規則は2024年2月18日から段階的に適用が始まっています。第7条(Article 7)は、電気自動車用電池、容量2kWh超の充電式産業用電池、軽輸送手段(LMT)用電池について、電池モデル・製造工場単位のカーボンフットプリント宣言を求めています(算定はEUの製品環境フットプリント手法に基づく)。第77条(Article 77)は、2027年2月18日から、LMT用電池、容量2kWh超の産業用電池、電気自動車用電池について、QRコードからアクセスできる電子的なバッテリーパスポートを求めます。制度のなかでCFPが使われるほど、算定範囲・算定ルール・データ品質といった「比較の前提」がより重要になります。規制動向の全体像は、媒体内記事「CFP表示の5つの基本原則」で整理していますので、本稿では利活用の文脈に絞って触れています。

公共調達の場面では、欧米でCFPに取り組む企業に調達上のメリットを与える基準づくりが進んでいます。日本では、製品・サービスの調達で環境負荷の少ないものを選ぶ枠組みとして「グリーン購入法」(2001年4月施行)があり、国等の機関に環境物品等の調達を義務づけています。現時点で同法がCFPの算定そのものを直接求めているわけではありませんが、公共調達は提出形式や第三者評価の有無といった運用要件が具体になりやすい領域です。比較・検証が前提となるため、基礎要件に加えて製品別算定ルールへの準拠や検証が求められやすい点に留意が必要です。

ブランディングや製品マーケティングの場面では、製品のCFPを消費者に訴求する取組が広がっています。ただし、数値の前提が伝わらないと誤解を招きます。社外コミュニケーションでは、算定範囲と算定ルールを明確に示すことが安全です。CFP表示で守るべき比較のルールについては、媒体内記事「CFPの比較でやってよいこと・ダメなこと」で詳しく整理しています。

5. 利活用シーンから逆算して精度を設計する

ここまで見てきたように、CFPに求められる確からしさの水準は、利活用シーンによって異なります。そこで実務では、「どのシーンで使うか」を先に決め、そのシーンに必要な水準から逆算して算定を設計することが、回り道を避ける近道になります。

設計の出発点は、「比較されることが想定されるか」という問いです。社内の削減検討や経時モニタリング、サプライヤーへの削減協力要請のように、比較を前提としない用途であれば、環境省・経済産業省「カーボンフットプリント ガイドライン」の基礎要件を満たす水準から始められます。一方、公共調達や規制対応、顧客のグリーン調達での要件化のように、他社製品と並べて比較される用途では、製品別算定ルールへの準拠に加え、用途・制度・利用者の要求に応じて内部検証または第三者検証の水準をあらかじめ設計しておく必要があります。

精度は、一度に最高水準を目指す必要はありません。同ガイドラインは、中長期的にはより確からしいCFPに取り組むことを見据えつつ、短期的にはまず簡易なCFPに取り組む、といった段階的な進め方を想定しています。短期は社内改善に使える水準で立ち上げ、取引先提出や規制対応が視野に入った段階で、製品別算定ルールや検証を加えて水準を引き上げる、という設計が現実的です。

設計にあたっては、次の3点を順に確認すると整理しやすくなります。第1に、このCFPは誰に向けて、なんのために使うのか(社内の意思決定か、取引先提出か、規制対応か、消費者訴求か)。第2に、その用途で他社製品と比較されることが想定されるか。第3に、比較が想定される場合、どの製品別算定ルールに準拠し、どの水準の検証(内部検証か第三者検証か)を付けるか。この順で考えることで、過不足のない精度のCFPを、必要なコストで設計できます。

図5:用途別の精度設計の目安。比較が想定されないシーンは基礎要件から、比較・検証が前提のシーンは製品別算定ルールや検証(内部検証・第三者検証)まで見込む。

よくある質問(FAQ)

質問:CFPは社外に見せるためのものですか。社内だけで使ってもよいのでしょうか。

回答:社内だけで使って問題ありません。むしろ、排出量が多いポイントの特定や削減効果のモニタリングといった社内改善は、CFPの最も基本的な使い方です。環境省・経済産業省「カーボンフットプリント ガイドライン」も、自社製品の削減計画の策定や削減推移の測定を、すべてのCFP算定で満たすべき基礎要件で取り組めるシーンとして挙げています。他社製品との比較を前提としないため、製品別算定ルールが整っていない製品でも、国際基準に整合した自社独自の算定ルールで取り組めます。

質問:取引先からCFPの提出を求められました。どこまでのデータを出すべきですか。

回答:CFPの値だけを出すのか、算定に使った原材料使用量や排出係数まで出すのかは、共有の目的と機密性のバランスで決まります。同ガイドラインは、活動量等のデータが営業機密に該当する可能性を指摘したうえで、どこまで共有するかはデータ共有の仕組みで定めるポリシーに依存する、と整理しています。実務では、CFPの値・算定根拠・第三者検証の有無という3つの要素について、取引当事者間で事前に共有範囲を取り決めておくことが安全です。

質問:精度の高いCFPを最初から目指すべきでしょうか。

回答:用途によります。社内改善が目的であれば、簡易な水準から始めて段階的に高度化する進め方が現実的です。同ガイドラインも、短期的には簡易なCFPに取り組み、中長期的により確からしいCFPを目指す段階的なアプローチを想定しています。一方、公共調達や規制対応のように比較・検証が前提となる用途では、当初から製品別算定ルールへの準拠や検証を見込んでおく必要があります。

質問:CFPがあれば、グリーン調達や規制に自動的に対応できますか。

回答:自動的にとはいきません。公共調達や規制、顧客のグリーン調達での要件化は、他社製品と比較されることが想定されるシーンです。この場合、すべてのCFP算定で満たすべき基礎要件に加えて、利害関係者の合意を経た製品別算定ルールに基づく算定が求められます。求められる提出形式や検証の水準は制度ごとに異なるため、対象となる制度の要件を確認したうえで、必要な水準を逆算して算定を設計することが必要です。

まとめ

CFPの利活用シーンは、社内の削減検討から、調達・サプライチェーン連携、金融開示・規制対応・マーケティングまで広がっています。そして、それぞれの場面で求められる確からしさの水準は一律ではありません。精度を分ける軸は、「比較されることが想定されるか」です。社内改善やサプライヤーへの削減要請のように比較を前提としない用途では基礎要件の水準から、公共調達や規制対応のように比較・検証が前提となる用途では製品別算定ルールへの準拠や検証(内部検証・第三者検証)まで、というように、用途から逆算して設計します。使う場面を先に決め、必要な水準から組み立てることが、CFPを過不足なく活用する最短ルートになります。

CFPは、算定を始める前に、社内改善・取引先提出・規制対応・消費者向け表示のどの場面で使うかを整理することが重要です。ウェイストボックスでは、CFPの算定方針の設計、製品別算定ルールの確認、取引先提出用の算定報告書の作成、表示前のレビューまで支援しています。

(執筆者:木塚)

参考資料

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