SBTi Servicesポータル完全ガイド:登録手順・機能・申請フローを徹底解説 詳しくはこちら

CFPとLCAの違い|「指標」と「手法」を取り違えない使い分け

  • URLをコピーしました!

健康診断の結果票には、体重、血圧、血糖値、コレステロールなど多くの項目が並びます。その中からBMIという一つの数値だけを取り出せば、体格の目安を手早く人に伝えられます。ただし、BMIだけを見て治療方針を決める医師はいません。CFPとLCAの関係も、これによく似ています。LCA(ライフサイクルアセスメント)は製品の環境影響を多面的に調べる「総合健診」にあたる手法であり、CFP(カーボンフットプリント)はそこから気候変動という一項目だけを切り出して伝える「指標」です。本記事では、両者の違いを定義・規格・実務の三つの視点で整理し、どの場面でどちらを使うべきかを明確にします。結論を先に言えば、気候変動だけを見れば足りる問いならCFP、複数の環境影響を見比べる必要がある問いならLCA、そして多くの場面はその併用です。

監修者:株式会社ウェイストボックス 環境ソリューション第1事業部 部長 木塚晴久(CFP・LCA・EPDの実務を担当)

最終更新日:2026年6月19日

この記事を読んで欲しい人

  • CFPとLCAの違いを正確に説明できず、社内外の対応に不安がある方
  • 脱炭素・環境配慮の取り組みを担当して間もない実務担当者
  • 製品評価や環境情報開示で「どちらを使うべきか」判断に迷っている方
  • 上司・顧客・取引先に両者の関係を分かりやすく説明する必要がある方
  • サプライヤーからCFPの提示を求められ、その位置づけを整理したい調達・営業担当者

目次

  1. CFPとLCAの全体像|「指標」と「手法」という役割の違い
  2. なぜCFPとLCAは混同されやすいのか|「簡易版/詳細版」という誤解
  3. 実務での違い|気候変動だけで足りるか、複数の環境影響を見比べるか
  4. 規格から見た位置づけ|ISO 14067とISO 14040/14044の関係
  5. どう使い分けるか|見るべき環境影響の範囲で選ぶ
  6. よくある質問
  7. まとめ
  8. 参考資料
目次

1. CFPとLCAの全体像|「指標」と「手法」という役割の違い

CFPとLCAは、どちらも製品やサービスのライフサイクル全体を対象にします。だからこそ混同されやすいのですが、「何を評価し、何のために使うか」が異なります。先に役割を分けて捉えると、混乱の大半は解消します。

CFP(Carbon Footprint of Product)とは、製品システムにおける温室効果ガス(GHG)の排出量と吸収量の合計を、CO₂相当量(CO₂eq)で表した値です。ISO 14067:2018(条項3.1.1.1)は、CFPを「気候変動という単一の影響カテゴリーを用いたライフサイクルアセスメントに基づく」値と定義しています。つまりCFPは、それ自体が独立した評価手法なのではなく、LCAという土台の上で評価対象を気候変動に絞り込んだ「結果としての指標・数値」です。実務では、製品カタログや顧客向け資料に「この製品は〇kg-CO₂eq」と示す場面を思い浮かべると分かりやすいでしょう。

図1:CFPとLCAの関係。LCAは複数の環境影響カテゴリーを多面的に評価する手法であり、CFPはそのうち気候変動の影響カテゴリーだけを切り出してCO₂相当量で表した指標である。出典:ISO 14067:2018(条項3.1.1.1)、ISO 14044:2006(条項3.2)を基に作成

一方のLCA(Life Cycle Assessment)とは、ISO 14044:2006(条項3.2)の定義によれば、製品システムのライフサイクル全体にわたる入力・出力および潜在的な環境影響をまとめ、評価する手法です。LCAの特徴は、評価対象が温室効果ガスに限定されない点にあります。気候変動だけでなく、酸性化、富栄養化、オゾン層破壊、資源消費、水資源への影響など、複数の環境影響カテゴリーを同時に扱います。そのため、設計改善や原材料の選定といった意思決定のための分析手法として活用されます。

両者は対立する概念ではなく、補完関係にあります。LCAという手法があってはじめて、CFPという形で気候変動の結果を切り出せるからです。「どちらが上位か」「どちらが正しいか」という議論は、役割の違いを見落とした問いの立て方だといえます。なお、CFP単体の算定の基本は、媒体内記事「CFP入門」で整理しています。

2. なぜCFPとLCAは混同されやすいのか|「簡易版/詳細版」という誤解

CFPとLCAが混同されるのは、理解不足というより、両者の関係性の捉え方に原因があります。誤解の入口は二つあります。

第一の入口は、評価範囲の共通性です。CFPもLCAも、原材料調達から廃棄・リサイクルまでのライフサイクルを視野に入れます。この共通点だけを見ると「結局は同じことをしているのではないか」と感じてしまいます。しかし、同じ対象を見ていても、担う役割は異なります。LCAは多面的な分析を行う手法であり、CFPはその一部を気候変動という単一指標として取り出した結果です。対象が重なることと、役割が同じであることは別の話です。

第二の入口は、「CFPはLCAの簡易版」という説明です。現場ではこの言い方をよく耳にしますが、理解を助けるどころか、かえって誤解を広げます。CFPはLCAを情報量の面で簡略化したものではありません。ISO 14067:2018がCFPを「気候変動を単一の影響カテゴリーとするLCAに基づく」と定義しているとおり、CFPはLCAの基本的な枠組みに基づきつつ、ISO 14067に定められたCFP固有の要求事項に従って、評価する影響カテゴリーを気候変動に限定した算定結果です。簡単か難しいかという軸ではなく、最初から見ている範囲が違う、と捉える方が実態に近いといえます。

図2:よくある誤解と実態の対比。CFPはLCAの情報量を減らした簡易版ではなく、評価手法は同じまま、対象とする影響カテゴリーを気候変動に限定した適用である。

具体例で考えてみます。ある包装材を、再生材比率の高い素材に切り替えたとします。気候変動の影響カテゴリーだけを見るCFPでは排出量が下がったように見えても、その素材の製造工程で水使用量や富栄養化への影響が増えているかもしれません。単一の影響カテゴリーだけを追うと、ある環境負荷を下げる打ち手が別の環境負荷を増やす「負荷の移転(burden shifting)」を見落とすおそれがあります。この点は次章の実務の違いに直結します。

3. 実務での違い|気候変動だけで足りるか、複数の環境影響を見比べるか

役割の違いは、実務の場面でよりはっきりと表れます。ここで注意したいのは、使い分けの軸が「社内向けか社外向けか」という用途ではない点です。本当の分かれ目は、評価したい環境影響の範囲にあります。気候変動という一つの影響だけを見れば判断できる問いか、それとも複数の環境影響のトレードオフまで見比べる必要がある問いか。これが軸であり、その意味で使い分けはケースバイケースです。

CFPが向くのは、気候変動の排出量を定量化し、伝達し、削減する場面です。製品の環境配慮を分かりやすく伝えたい社外コミュニケーション(製品ラベルや営業資料など)に有効なのはもちろんですが、用途は社外伝達に限りません。製品のどの段階で排出が大きいかを把握して削減の優先順位をつける「ホットスポット分析」のように、気候変動に絞った社内の意思決定でもCFPは力を発揮します。実際、経済産業省・環境省カーボンフットプリント ガイドライン(2023年3月)は、CFPに取り組む意義として、排出量の多いポイントを把握して効果的な排出削減対策を検討できる点を挙げています。つまりCFPは、社外への伝達にも、気候変動に焦点を絞った社内の改善検討にも使えます。

図3:CFPとLCAの使い分けの軸。判断の分かれ目は社内向けか社外向けかではなく、気候変動という単一の影響だけで足りるか、複数の環境影響のトレードオフを見る必要があるかにある。

一方、LCAが必要になるのは、複数の環境影響を同時に見比べる必要がある場面です。設計変更や原材料選定で、「どこを変えれば本当に環境負荷が下がるのか」を考えるとき、気候変動だけを下げる打ち手が水資源や富栄養化など別の環境負荷を悪化させていないかを確かめる必要があります。前章で触れた「負荷の移転(burden shifting)」を捉えられるのは、複数の影響カテゴリーを同時に扱うLCAです。さらに、LCAは社外開示でも使われます。第三者検証を伴うEPD(タイプIII環境宣言)は、LCAを土台にした製品の環境情報開示の代表例です。

したがって、社内か社外かで機械的に決まるわけではありません。問いが気候変動だけで閉じるならCFPで足り、複数の環境影響のトレードオフに踏み込むならLCAが要る、という見極めが実務の要点になります。評価したい範囲と目的を取り違えると、評価そのものが形骸化します。複数の環境影響を見るべき場面で気候変動だけのCFPに頼れば負荷の移転を見落とし、気候変動を端的に伝えたい場面で多項目のLCA結果をそのまま示せば、相手は必要な一点を読み取れません。

4. 規格から見た位置づけ|ISO 14067とISO 14040/14044の関係

CFPとLCAは、準拠する国際規格の関係を押さえておくと、対外説明での説得力が高まります。

LCAは、ISO 14040:2006(原則および枠組み)とISO 14044:2006(要求事項およびガイドライン)で国際的に確立された評価手法です。ISO 14040/14044は、LCAを「目的および調査範囲の設定」「インベントリ分析」「影響評価」「解釈」という四つの段階(フェーズ)で構成すると定めています。学術・行政・企業の幅広い分野で共通言語として使われており、客観性と再現性が高い点が特徴です。

図4:CFPとLCAをめぐる国際規格の関係。LCAの一般規格であるISO 14040/14044を土台に、製品のCFPを定量化する要求事項をISO 14067:2018が定める。CFPの伝達・検証・製品種別算定ルール(PCR)は関連規格に分担されている。

CFPは、このLCAの枠組みを前提に、製品のカーボンフットプリント定量化の要求事項を定めたISO 14067:2018に基づいて算定されます。ISO 14067:2018は、ISO 14040/14044のLCAの枠組みと整合する形で、気候変動を単一の影響カテゴリーとして用い、製品のライフサイクル全体にわたるCFPの定量化に関する要求事項を定めています。なお、ISO 14067:2018はCFPに関するすべてを一つの規格で扱うのではなく、CFPの伝達(コミュニケーション)はISO 14026、検証はISO 14064-3、製品種別算定ルール(PCR)はISO/TS 14027と、関連規格に役割を分担しています。

国内では、経済産業省・環境省のカーボンフットプリント ガイドライン(2023年3月)と、その別冊であるCFP実践ガイド(2025年3月版)が、CFP算定の実務上の参照点になります。これらのガイドラインはISO 14067などの国際規格と整合する形で、日本国内での算定手順を具体的に示しています。なお、日本では2026年3月に、ISO 14067:2018に対応する国家規格としてJIS Q 14067:2026が制定されています。国内実務では、ISO 14067とあわせてJIS Q 14067、JIS Q 14040及びJIS Q 14044も参照対象になります。

なお、ISO規格の本文は有償で提供され、規格番号と発行年(例:ISO 14067:2018)で参照します。本記事では規格名をプレーンテキストで表記し、本文の確認に基づいて条項の趣旨を日本語で要約しています。

5. どう使い分けるか|見るべき環境影響の範囲で選ぶ

最後に、CFPとLCAをどう使い分けるかを、実務判断の観点で整理します。

最も重要なのは、「どの環境影響まで見る必要があるか」を最初に決めることです。気候変動の排出量を定量化・伝達・削減できれば目的が果たせるのか、それとも複数の環境影響のトレードオフまで判断する必要があるのか。この問いに答えれば、CFPかLCAかは自ずと見えてきます。気候変動だけで足りるならCFP、複数の環境影響を見比べる必要があるならLCAが軸になります。前章のとおり、社外向けか社内向けかは決め手ではありません。CFPは社外への伝達にも、気候変動に絞った社内の削減検討にも使えるからです。手段から入るのではなく、評価すべき範囲と目的から逆算して選ぶことが、評価を形骸化させないための基本です。

図5:CFPとLCAの使い分け判断フロー。社内か社外かという用途ではなく、見るべき環境影響の範囲(気候変動だけで足りるか、複数の環境影響のトレードオフを見るか)を起点に、CFP・LCA・両者の併用を選ぶ。

実務では、両者を併用する形が理想的です。LCAで製品の環境影響を多面的に分析し、その結果のうち気候変動の部分をCFPとして切り出して社外に伝える、という流れです。LCAで戦略を設計し、CFPでコミュニケーションを取る、と役割を分担すると整理しやすくなります。無理にどちらか一方に一本化する必要はありません。

CFPとLCAは、競合する選択肢ではなく、役割の異なるパーツです。指標としてのCFPは伝える力に優れ、手法としてのLCAは判断を支えます。両者の関係を正しく理解することが、製品単位の脱炭素の取り組みを、対外説明と社内改善の両面で機能させる出発点になります。

6. よくある質問

Q1. 「CFPはLCAの簡易版」という理解は正しいですか?

正確ではありません。CFPはLCAを情報量の面で簡略化したものではなく、LCAの枠組みを用いつつ、ISO 14067に定められたCFP固有の要求事項に従って、評価する影響カテゴリーを気候変動に限定した算定です。ISO 14067:2018(条項3.1.1.1)も、CFPを「気候変動を単一の影響カテゴリーとするLCAに基づく」値と定義しています。簡単か詳しいかという軸ではなく、最初から見ている範囲が違うと捉えるのが適切です。

Q2. CFPだけでは不十分になるのは、どんな場面ですか?

複数の環境影響のトレードオフを判断する必要がある場面です。CFPが評価するのは気候変動の影響だけのため、ある環境負荷を下げる施策が、水資源や富栄養化など別の環境負荷を増やす「負荷の移転」を見落とすおそれがあります。複数の環境影響を同時に扱えるLCAなら、こうしたトレードオフを把握できます。なお、気候変動に絞った排出削減の検討であればCFPでも可能です。CFPでは足りないのは、気候変動以外の環境影響まで見比べる必要があるときだと整理すると分かりやすくなります。

Q3. CFPとLCAは、それぞれどの規格を参照すればよいですか?

LCAはISO 14040:2006(原則および枠組み)とISO 14044:2006(要求事項およびガイドライン)、製品のCFPはISO 14067:2018が基本の参照規格です。国内実務では、経済産業省・環境省のカーボンフットプリント ガイドライン(2023年3月)とCFP実践ガイド(2025年3月版)が、これらの国際規格と整合する算定手順を示しています。

Q4. CFPと、組織単位のScope 1〜3排出量はどう違うのですか?

CFPは「製品1単位あたり」のライフサイクル全体での温室効果ガス排出量を見る製品単位の指標です。一方、Scope 1〜3は、組織が事業活動を通じて排出する量を組織単位で捉える区分です。製品単位のCFPと組織単位のScope 1〜3はレイヤーの異なる概念であり、CFPを足し上げればScope 3になるという関係でもありません。両者の使い分けは、媒体内記事「企業の排出量算定(Scope1〜3)とCFPの違い」で詳述しています。

7. まとめ

CFPとLCAは、対象とするライフサイクルが重なるため混同されがちですが、役割は明確に異なります。LCAは複数の環境影響を多面的に評価する「手法」であり、CFPはそのうち気候変動という単一の影響カテゴリーを切り出してCO₂相当量で示す「指標」です。ISO 14067:2018がCFPを「気候変動を単一の影響カテゴリーとするLCAに基づく」値と定義しているとおり、両者は対立軸ではなく補完関係にあります。

実務では、見るべき環境影響の範囲を起点に選ぶことが要点になります。社内か社外かという用途で決まるのではありません。気候変動の定量化・伝達・削減で目的が果たせるならCFP、ある環境負荷の削減が別の負荷を増やす「負荷の移転」など複数の環境影響のトレードオフを見極めたい場面では、多面的なLCAが欠かせません。

理想は両者の併用です。LCAで製品の環境影響を分析し、その結果の一部であるCFPを社外への伝達に活用する。この役割分担を意識することが、製品単位の脱炭素を対外説明と社内改善の両面で前進させる、最も現実的な進め方になります。

(執筆者:木塚)

CFPとLCAの違いは「何を評価するか」の違いであり、Cradle to GraveやCradle to Gateは「どこまで評価するか」の違いです。評価範囲の考え方は、媒体内記事「Cradle to Grave(ゆりかごから墓場まで)とは」で整理しています。

8. 参考資料

  • カーボンフットプリント ガイドライン(経済産業省・環境省、2023年3月):本文PDF
  • カーボンフットプリント ガイドライン(別冊)CFP実践ガイド 2025年3月版(経済産業省・環境省):本文PDF
  • カーボンフットプリント表示ガイド(環境省・経済産業省、2025年2月):本文PDF
  • ライフサイクルアセスメント/カーボンフットプリント(経済産業省):資料一覧ページ
  • ISO 14067:2018 Greenhouse gases – Carbon footprint of products – Requirements and guidelines for quantification(ISO、2018年)
  • JIS Q 14067:2026 温室効果ガス-製品のカーボンフットプリント-定量化のための要求事項及び指針(2026年3月制定):制定報道発表(経済産業省)
  • ISO 14040:2006 Environmental management – Life cycle assessment – Principles and framework(ISO、2006年)
  • ISO 14044:2006 Environmental management – Life cycle assessment – Requirements and guidelines(ISO、2006年。Amd 1:2017、Amd 2:2020を含む。2022年に確認)
  • 関連記事:CFP入門CFP表示の5つの基本原則CFPの利活用シーンCradle to Graveという視点企業の排出量算定(Scope1〜3)とCFPの違い

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次