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カテゴリ11と13の決定的な違い ―「売ったのか、貸したのか」で分かれる下流の使用段階排出

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カテゴリ11(販売した製品の使用)とカテゴリ13(リース資産・下流)は、どちらも自社を離れたモノが外で使われるときの排出を扱うため混同されがちです。両者を分ける第一の線は、販売した製品の使用なのか、リースとして提供している資産の使用なのかです。販売して顧客に移転した製品の使用排出はカテゴリ11で扱います。一方、自社が貸主として貸している資産は、まずその稼働排出が自社のScope1・2に含まれるかを判定し、含まれないものをカテゴリ13で扱います。この判定は、リース種別(ファイナンス・リースかオペレーティング・リースか)と組織境界の基準によって変わります。本記事では、GHGプロトコルScope3標準と環境省・経済産業省のガイドラインに基づき、両者の境界を実務目線で整理します。

監修者:株式会社ウェイストボックス 木塚晴久(環境ソリューション第1事業部 部長)
最終更新日:2026年6月22日

この記事を読んで欲しい人

  • Scope3算定を担当する実務担当者・サステナビリティ/ESG推進の方
  • リース事業・設備提供・不動産関連事業に関わる方
  • カテゴリ11とカテゴリ13のどちらに計上すべきか迷っている方
  • 貸している資産の排出がScope1・2に入るのかカテゴリ13に入るのか整理したい方
  • Scope3を基礎から理解したい方

目次

  1. 両カテゴリの位置づけ――下流の使用段階で生じる排出
  2. 第一の分岐――所有権が顧客に移ったか
  3. カテゴリ11(販売した製品の使用)の中身
  4. カテゴリ13(リース資産・下流)とScope1・2の切り分け
  5. 実務の迷いどころ――カテゴリ8との関係と二重計上の回避
  6. 算定の勘所と開示
  7. よくある質問(FAQ)
  8. まとめ
  9. 参考資料
目次

1. 両カテゴリの位置づけ――下流の使用段階で生じる排出

Scope3の15カテゴリのうち、カテゴリ11(販売した製品の使用)とカテゴリ13(リース資産・下流)は、いずれも自社のバリューチェーンの下流、すなわち自社を離れたモノが外で使われる段階の排出を扱います。GHGプロトコルScope3標準では、カテゴリ11は「報告年に販売した製品・サービスの使用に伴う排出」、カテゴリ13は「自社が貸主として所有し他者に貸している資産の運用に伴う排出のうち、Scope1・2に含まれないもの」と定義されています。どちらも、製品を使う顧客や資産を借りる相手のScope1・2に相当する排出を、自社のScope3として取り込む構造である点が共通します(図1)。

カテゴリ11とカテゴリ13はどちらも自社の下流(使用段階)で生じる排出を自社のScope3として計上する。カテゴリ11は売った製品(所有権が顧客に移転)の使用、カテゴリ13は貸した資産(所有権は自社に残る)の稼働。図1 カテゴリ11とカテゴリ13の位置づけ

環境省・経済産業省のグリーン・バリューチェーンプラットフォームのカテゴリ区分でも、カテゴリ11は「販売した製品の使用(使用者による製品の使用)」、カテゴリ13は「リース資産(下流)(自社が賃貸事業者として所有し、他者に賃貸しているリース資産の稼働)」と整理されています。両者は「使用段階の排出」という点で重なるため混同されやすいのですが、分ける線ははっきりしています。次章で、その第一の分岐から確認します。

2. 第一の分岐――所有権が顧客に移ったか

カテゴリ11とカテゴリ13を分ける第一の線は、販売した製品の使用なのか、リースとして提供している資産の使用なのかです(図2)。製品を販売して所有権が顧客に移った後の使用排出はカテゴリ11で扱います。一方、自社が貸主として資産を他者に貸している場合は、まずその稼働排出が自社のScope1・2に含まれるかを判定し、Scope1・2に含まれないものをカテゴリ13で扱います。この判定は、リース種別と組織境界の基準によって変わります(第4章)。GHGプロトコルScope3標準は、カテゴリ13を「自社(貸主)が所有し他者に貸す資産」に適用されるカテゴリと位置づけ、リース料を受け取る貸主(lessor)が対象であると明記しています。一方、資産を借りて使う側(借主)はカテゴリ8で扱います。

判定フロー。自社を離れて使われる製品・資産が、販売した(所有権が顧客に移転)ならカテゴリ11。リースした(自社が貸主)なら、その稼働排出がScope1・2に含まれるかをリース種別×組織境界で判定し、含むならScope1・2、含まないならカテゴリ13。自社が借主の場合はカテゴリ8。判定は法的所有権だけでなくリース種別と組織境界による。区別の実益がなければカテゴリ11にまとめる選択肢もある。図2 カテゴリ11/13とScope1・2の判定フロー

販売した製品は、原則としてそのままカテゴリ11で扱います。なお環境省・経済産業省の基本ガイドラインでは、中古品の販売を業としていない場合の下取り(車両の下取り等)による使用時の排出は算定対象外とされています。これに対しリースの場合は、貸している間も資産の所有権が自社に残るため、その稼働排出が自社のScope1・2に入るのか、それともカテゴリ13に入るのかを、もう一段判定する必要があります。この第二の判定は第4章で扱います。

3. カテゴリ11(販売した製品の使用)の中身

カテゴリ11の排出は、GHGプロトコルScope3標準および環境省ガイドラインで「直接使用段階排出」と「間接使用段階排出」の二つに区分されます(図3)。このうち直接使用段階排出は必ず算定対象とし(最小バウンダリ)、間接使用段階排出は任意ですが、規模や削減可能性の観点から重要な場合は算定対象とすることが求められます。

カテゴリ11は直接使用段階排出(必須)と間接使用段階排出(任意)に分かれる。直接は使用時に自らエネルギーを消費・GHGを排出する製品(自動車・家電・機械・照明・建物、燃料・フィードストック、使用時にGHGを排出する製品)。間接は使用に伴い間接的にエネルギーを使う製品(衣料は洗濯・乾燥、食品は調理・冷蔵・冷凍)で重要な場合は算定対象とする。図3 カテゴリ11の二区分(直接/間接)

直接使用段階排出には、使用時に電気・燃料・熱を直接消費する製品(自動車、家電製品、産業用機械、照明、建物など)、石油・ガス・石炭などの燃料・フィードストック、そして使用時に温室効果ガスを排出する製品(冷媒を用いる空調機器、消火剤、肥料など)が含まれます。間接使用段階排出は、使用に付随して間接的にエネルギーを使う製品で、洗濯・乾燥が必要な衣料、調理・冷蔵・冷凍が必要な食品などが代表例です。

算定対象とする期間にも特徴があります。カテゴリ11では、製品が販売された年に、その製品が生涯にわたって排出すると想定される排出量をまとめて計上します(total expected lifetime emissions)。GHGプロトコルScope3標準は、自動車メーカーが100万台を販売し各車の想定使用年数が10年であれば、その100万台が10年間に排出する使用段階排出を販売年にまとめて報告する、という例を挙げています。算定は販売数量と標準的な使用シナリオ(製品の設計仕様や消費者の使用条件に関する仮定)に基づくエネルギー消費量に排出原単位を乗じて行い、シナリオの設定次第で結果が大きく変動するため、開示時には算定に用いた方法も併せて報告することが求められます。なお、製品の使用によって社会全体の排出が減るという削減貢献量(避けられた排出)の主張は、Scope1・2・3の排出量とは別に切り離して報告するものとされています。

4. カテゴリ13(リース資産・下流)とScope1・2の切り分け

カテゴリ13は、自社が貸主として所有し他者に貸している資産の運用に伴う排出のうち、Scope1・2に含まれないものを対象とします。ここで実務上の山場になるのが、貸している資産の稼働排出が自社のScope1・2に入るのか、それともカテゴリ13に入るのかという切り分けです。GHGプロトコルScope3標準のAppendix Aは、この判定がリース種別(ファイナンス・リースかオペレーティング・リースか)と、自社が組織境界の設定に用いる連結基準(出資比率基準・財務支配力基準・経営支配力基準)の組み合わせで決まると整理しています(貸主の視点は表A.2)。その関係を図4にまとめました。

貸主の視点(GHGプロトコル表A.2)。出資比率/財務支配力基準では、ファイナンス・リースは所有・財務支配なしでカテゴリ13、オペレーティング・リースは所有・財務支配ありでScope1・2。経営支配力基準では、ファイナンス・リースもオペレーティング・リースも経営支配なしでカテゴリ13。図4 リース資産の扱い=リース種別×連結基準(貸主の視点・表A.2)

表の読み方を貸主(自社が貸す側)の立場で整理します。ファイナンス・リース(資産の便益とリスクが実質的に借主へ移り、会計上は借主の資産として計上されるリース)の場合、貸主は所有・財務支配を持たないとみなされ、出資比率基準・財務支配力基準のいずれでもその稼働排出はカテゴリ13に整理されます。経営支配力基準でも貸主は経営支配を持たないため、やはりカテゴリ13です。一方オペレーティング・リース(それ以外のリース)の場合、出資比率基準・財務支配力基準では貸主が所有・財務支配を持つとみなされ、燃料燃焼はScope1、購入電力の使用はScope2に計上します。経営支配力基準では、貸主は通常その資産の経営支配を持たないため、稼働排出はカテゴリ13に整理されます(ただし貸主が当該資産の経営支配を実証でき、その判断を公表報告で開示・正当化できる場合は、Scope1・2として扱う例外がAppendix Aの脚注で認められています)。

大づかみには、ファイナンス・リースで貸している資産は貸主側ではカテゴリ13、オペレーティング・リースを財務系の基準(出資比率・財務支配力)で扱う場合だけ貸主のScope1・2、と押さえると判断しやすくなります。この表は貸主の視点に立ったものであり、自社が資産を借りる側(借主)の場合は別の表(A.1)で判定し、結論はカテゴリ8側になります。借主側の扱いは次章で整理します。

5. 実務の迷いどころ――カテゴリ8との関係と二重計上の回避

リース資産には、上流のカテゴリ8と下流のカテゴリ13という二つの受け皿があります(図5)。カテゴリ8(リース資産・上流)は、自社が他者から借りて使う資産(借主・lessee)の稼働排出のうちScope1・2に含まれないものを扱い、カテゴリ13(リース資産・下流)は、自社が所有して他者に貸す資産(貸主・lessor)を扱います。自社がその資産の借り手か貸し手かで、上流か下流かが分かれます。なお環境省のカテゴリ区分では、日本の算定・報告・公表制度(SHK制度)のもとでは賃借しているリース資産をScope1・2に計上するため、カテゴリ8は「該当なし」となるケースが大半であると注記されています。

賃借はカテゴリ8(上流・借主の立場)、賃貸はカテゴリ13(下流・貸主の立場)。いずれもScope1,2に入らない分を計上。二重計上の回避として貸主と借主の各Scope間で同じ排出を重複させない。販売とリースを区別する実益がなければリースもカテゴリ11にまとめて計上してよい。図5 カテゴリ8(賃借)とカテゴリ13(賃貸)の関係

もう一つ重要なのが二重計上の回避です。GHGプロトコルScope3標準のAppendix Aは、貸主と借主の各Scope間で同じ排出を重複して数えないよう、適切に区分することを求めています。たとえば借主が購入電力の使用をScope2に計上する場合、貸主は同じ排出を自社のScope3(カテゴリ13)として扱い、逆の場合も同様です。ここでいう二重計上の回避は、主に同一の報告企業の中でカテゴリ11とカテゴリ13に同じ排出を重複させないこと、および貸主・借主のScope1・2として同じ排出を同時に計上しないことを指します。一方、サプライチェーン全体では、同じ物理的な排出が複数の企業のScope3に現れること自体はあり得ます。開示では、どの立場で、どのカテゴリで計上したかを明確にすることが重要です。

加えて、カテゴリ11とカテゴリ13の使い分けには、実務上の柔軟性も用意されています。GHGプロトコルScope3標準および環境省ガイドラインは、顧客に販売した製品(カテゴリ11)と顧客にリースした製品(カテゴリ13)を区別する実益がない場合には、リースした製品も販売した製品と同じように生涯排出量として算定し、カテゴリ13ではなくカテゴリ11にまとめて計上してよい、としています。この場合もカテゴリ間で二重計上が生じないようにすることが前提です。製品をリースの形で提供している事業では、この扱いを使うと算定が整理しやすくなることがあります。

6. 算定の勘所と開示

カテゴリ13の算定は、貸している資産ごとのエネルギー消費量に排出原単位を乗じて行うのが基本です。環境省・経済産業省の基本ガイドラインでは、エネルギー種別ごとの消費量が把握できる場合はそれぞれの原単位を、種別の内訳が不明な場合はエネルギー種別に加重平均した原単位を用いる方法が示されています。これらが難しい場合は、資産の規模を表す指標(建物であれば延床面積など)に単位面積当たりの排出原単位を乗じて推計します。自社が貸主として所有する建物の一部を他者に賃貸している場合や、建物全体のエネルギー消費量から賃貸している部分の排出を切り出す場合は、床面積比率などの合理的な基準でエネルギー消費量を按分します。自社が借主として建物や設備を使用している場合は、カテゴリ13ではなくカテゴリ8で判定します。リース資産の製造などの上流側の排出を貸主が報告する場合も、このカテゴリで対象とすると整理されています。

カテゴリ11の算定は、前述のとおり標準的な使用シナリオに大きく依存します。輸出品のように国内と海外で使用条件が異なる場合は、シナリオの設定次第で排出量が過大にも過小にもなり得るため、業界団体が定めた使用シナリオがあればそれを優先し、算定結果を開示する際は使用した方法も併せて報告します。いずれのカテゴリでも、どの製品・資産をどちらのカテゴリにどう振り分けたか、どこまでを算定範囲に含めたかを明示しておくことが、Scope3全体の整合性と説明可能性を保つうえで重要になります。

7. よくある質問(FAQ)

質問:自社が貸している複合機やサーバー、車両の稼働排出はどのカテゴリですか。

回答:自社が貸主として所有権を保持したまま他者に貸しており、その稼働排出を自社のScope1・2に含めていない場合は、カテゴリ13で検討します。Scope1・2に入るかカテゴリ13かは、リース種別と組織境界の基準(第4章・表A.2)で判定します。また、販売とリースを区別する実益がなければ、生涯排出量としてカテゴリ11にまとめて計上することもできます。

質問:テナントが入る自社所有ビルの排出はどう扱いますか。

回答:自社が貸主として所有するビルで、テナントが使う部分の排出のうち自社のScope1・2に入らないものは、カテゴリ13で計上します。建物全体の一部のみが対象になる場合は、面積比率などでエネルギー消費量を按分します。Scope1・2に入るかカテゴリ13かは、リース種別と連結基準で判定します。

質問:ファイナンス・リースで他社に貸している資産はどちらですか。

回答:貸主の視点(表A.2)では、ファイナンス・リースの場合、出資比率基準・財務支配力基準・経営支配力基準のいずれでも、貸主はその資産の所有・支配を持たないとみなされ、稼働排出はカテゴリ13に整理されます。ファイナンス・リースは会計上は借主の資産として扱われるため、貸主側ではScope1・2に計上しないのが原則です。

質問:中古品の下取りで引き取った製品の使用排出は算定しますか。

回答:環境省ガイドラインでは、中古品の販売を業としていない場合の下取り(車両の下取り等)による使用時の排出は、カテゴリ11の算定対象外とされています。中古品の売買を事業として行っている場合は、自社の整理に沿って算定範囲を判断します。

質問:カテゴリ11と13で迷ったときの基本的な考え方は。

回答:まず所有権が顧客に移ったか(売却か貸与か)を確認します。売却ならカテゴリ11、貸与なら所有権が自社に残るため、リース種別と連結基準でScope1・2かカテゴリ13かを判定します。貸与でも販売と区別する実益がない場合は、カテゴリ11にまとめて計上する選択肢があります。物流(カテゴリ4・9)の分け方は媒体内の「カテゴリ4・9を分ける実務上の決定要因」を参照ください。

まとめ

カテゴリ11とカテゴリ13は、どちらも自社を離れたモノの使用段階の排出を扱いますが、両者を分ける第一の線は所有権が顧客に移ったかどうかです。販売して所有権が移った製品の使用はカテゴリ11、自社が所有したまま貸している資産の稼働はカテゴリ13側で検討します。カテゴリ11は直接使用段階排出(必須)と間接使用段階排出(任意)に分かれ、販売年にその製品の生涯排出量をまとめて計上する点が特徴です。

貸している資産については、リース種別(ファイナンス・リースかオペレーティング・リースか)と連結基準の組み合わせで、Scope1・2に入るかカテゴリ13に入るかが決まります(貸主の視点・表A.2)。ファイナンス・リースは貸主側ではカテゴリ13、オペレーティング・リースを財務系の基準で扱う場合だけ貸主のScope1・2、と押さえると判断しやすくなります。自社が借りる側のリース資産はカテゴリ8で扱い、貸主・借主の各Scope間で同じ排出を二重に数えないことが重要です。販売とリースを区別する実益がなければ、リースもカテゴリ11にまとめて計上できます。Scope3全体の枠組みは媒体内の「Scope3とは」、GHGプロトコルの基礎は「GHGプロトコルとは」を参照ください。

(執筆者:木塚)

参考資料

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