Scope3のカテゴリ4(上流物流)とカテゴリ9(下流物流)の違いを、GHGプロトコルの定義に基づいて解説。在庫移動や委託加工はどこに分類すべきか、実務で混乱しやすいポイントを整理します。
最終更新日:2026年3月16日
・Scope3算定を担当している実務担当者の方
・サステナビリティ/ESG推進を統括する立場の方
・物流・購買部門で排出量関連の対応に関わる方
・Scope3をこれから理解しようとしている方
導入
Scope 3の算定において、カテゴリ4(上流の輸送・流通)とカテゴリ9(下流の輸送・流通)は、単に「購入時か販売時か」という時系列だけで判断すると、実務上の判断を誤るケースがあります。
これらを正しく区分するための最も重要な判断軸は、GHGプロトコルが重視する**「誰がその輸送を支払い、手配しているか(荷主性は誰にあるか)」**という視点です。
1. カテゴリ4と9を分ける「境界線」の正体
GHGプロトコルにおけるカテゴリ4と9の定義の根幹には、**「報告事業者が輸送費を支払っているか否か」**という基準があります。
| カテゴリ | 対象となる輸送・流通 | 判断のポイント |
| カテゴリ4 (上流) | 自社が費用を負担し、手配するすべての輸送 | 購入した原材料の調達だけでなく、自社が運賃を払う販売輸送も含む |
| カテゴリ9 (下流) | 自社が費用を負担しない(顧客等が手配する)販売後の輸送 | 製品出荷後、顧客や流通業者が運賃を負担して運ぶ区間 |
2. 「出荷後なのにカテゴリ4」が発生する理由
実務で最も混同しやすいのが、製品を出荷した後の輸送です。
一般的な解説では「出荷後はカテゴリ9」とされがちですが、GHGプロトコルの定義では、販売した製品の輸送であっても、自社がその運賃を支払っている(荷主である)場合は、カテゴリ4に計上すると定められています。
- 自社が運賃負担して顧客へ配送: カテゴリ4(上流)
- 顧客が引き取りに来る(着払い・顧客手配): カテゴリ9(下流)
このように、物流の向きが「下流(販売)」であっても、経済的な主体が自社にある限り、算定区分は「カテゴリ4」に集約されるという構造になっています。
3. 「お金の流れ」が実務上の決定要因になる
このように、カテゴリ4・9の判断において重要なのは、以下の形式的な要素ではありません。
- × どこからどこへ運ばれたか
- × 出荷前か出荷後か
真の決定要因は、**「誰が輸送をコントロールし、そのコストを負担しているか」**という経済的支配の有無です。
- 在庫移動・拠点間輸送: 自社が費用負担していればカテゴリ4(上流)。
- 委託加工: 原材料を加工先へ送る際、自社が費用負担していればカテゴリ4(上流)。
4. まとめ:なぜこの視点が必要なのか
「お金の流れ」で整理することで、以下の実務的な疑問が解消されます。
- なぜ販売輸送がカテゴリ4になるのか?
⇒ 自社が物流会社と契約し、コストをコントロールできる(削減努力ができる)範囲だからです。
- なぜカテゴリ9は「算定困難」と言われるのか?
⇒ 自社がお金を払っておらず、輸送距離や手段のデータを直接把握できない(顧客が手配している)範囲だからです。
カテゴリ4と9は「物の移動」で機械的に分かれるものではなく、「経済的な責任の所在」で決まります。この原則を理解することで、複雑な商流におけるScope 3算定の整合性を保つことが可能になります。

