カテゴリ4は上流、カテゴリ9は下流の物流――この大枠は単純ですが、実務には二つの落とし穴があります。一つは、購入品をサプライヤーから運ぶ調達輸送は、運賃を自社とサプライヤーのどちらが負担してもカテゴリ4(上流)に入ること。もう一つは、製品を出荷した後の輸送でも、自社が運賃を払って手配すればカテゴリ4に入り、顧客などが負担すればカテゴリ9になることです。鍵は「バリューチェーン上の位置」と、販売側における「誰がその輸送サービスを購入したか」にあります。本記事では、GHGプロトコルと環境省の整理に基づき、両者の分け方と実務のポイントを整理します。
監修者:株式会社ウェイストボックス 木塚晴久(環境ソリューション第1事業部 部長)
最終更新日:2026年6月22日
この記事を読んで欲しい人
- Scope3算定を担当する実務担当者・サステナビリティ/ESG推進の方
- 物流・購買部門で排出量関連の対応に関わる方
- カテゴリ4とカテゴリ9のどちらに計上すべきか迷っている方
- 横持・共同配送・ECなど、判断に迷う物流の扱いを整理したい方
- 調達輸送の活動量が把握しにくく、算定方法に悩んでいる方
目次
- カテゴリ4・9の大枠――上流と下流
- 物流のカテゴリ分類の全体像(フロー図)
- 調達輸送と販売輸送の分け方――資金の流れと「荷主」の違い
- 「輸送」だけでなく「配送・保管・荷役」も対象
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
- 参考資料
1. カテゴリ4・9の大枠――上流と下流
Scope3において、カテゴリ4は「輸送・配送(上流)」、カテゴリ9は「輸送・配送(下流)」を扱います(図1)。GHGプロトコルScope3標準では、カテゴリ4は「報告年に購入・取得した製品の、tier-1サプライヤーから自社への輸送(自社が所有・運行しない車両による)」と、「自社が購入した第三者の輸送・配送サービス(inbound・outbound・拠点間を含む)」を対象とします。整理すると、カテゴリ4は①調達輸送(仕入側の物流)と、②自社が費用を負担・手配する物流から成ります。一方カテゴリ9は、販売した製品が販売時点(point of sale)より後に、自社が費用を負担しない形で運ばれる輸送・配送を対象とします。最終製品の場合は最終消費者までが基本です。中間製品の場合は、最終用途が分かるときは最終消費者まで、最終用途が合理的に把握できないときはビジネス顧客までの輸送・配送を対象範囲として整理します(GHGプロトコル技術ガイダンス カテゴリ9)。
図1 カテゴリ4とカテゴリ9の大枠
大枠はこのように「バリューチェーン上の位置(上流か下流か)」で決まります。ただし、実務では「上流か下流か」だけでは判断しきれない場面が出てきます。次章以降で、物流全体の見取り図を確認したうえで、調達輸送と販売輸送それぞれの分け方を整理します。GHGプロトコルの全体像は、媒体内の「GHGプロトコルとは」を参照ください。
2. 物流のカテゴリ分類の全体像(フロー図)
物流は、調達・出荷・廃棄とさまざまな場面で発生し、Scope1・2やカテゴリ3・5にもまたがります。すべての輸送を漏れなく拾い、どれがカテゴリ4でどれがカテゴリ9かを点検するには、自社を中心に上流・下流で物流を一枚に描いた見取り図が役立ちます(図2)。環境省・経済産業省グリーン・バリューチェーンプラットフォームのQ&Aも、物流のカテゴリ分類を同様の図で整理しています。
図2 Scope3カテゴリ4・9の仕分けフロー(株式会社ウェイストボックス作成。環境省「サプライチェーン排出量算定の考え方」の整理に基づく)
調達に関する物流は基本的にカテゴリ4ですが、自社が運行する輸送はScope1・2に含まれ、燃料の調達輸送はカテゴリ3に分類されます。出荷に関する物流は、自社運行ならScope1・2、他社委託で自社が運賃を負担するものはカテゴリ4、それ以降の他者負担の輸送や他社の倉庫・卸・小売はカテゴリ9です。廃棄物を処理場まで運ぶ輸送は、カテゴリ5に任意で含めることができます(環境省Q&Aでは廃棄物の輸送に係る排出は任意算定)。この一枚を作ると、「どの輸送がどこにも計上されていないか」「二重に数えていないか」を点検できます。
3. 調達輸送と販売輸送の分け方――資金の流れと「荷主」の違い
調達輸送は誰が負担してもカテゴリ4(上流)
実務でつまずきやすいのが調達輸送です。ここで重要なのは、購入した製品をサプライヤーから自社へ運ぶ輸送は、運賃を自社が払っていても、サプライヤーが払って製品価格に含めていても、カテゴリ4(上流)に位置づけられるという点です。バリューチェーン上、自社より上流の輸送だからです。GHGプロトコルScope3標準もカテゴリ4の対象として、購入製品のtier-1サプライヤーから自社への輸送を、費用負担者を条件とせずに挙げています。つまり調達側では「誰が払ったか」を問う前に、まず上流の輸送だからカテゴリ4、と押さえます(活動量を切り出せない場合の算定方法は後述のFAQで補足します)。
販売後の輸送は「資金の流れ」でカテゴリ4と9に分かれる
これに対し、製品を出荷した後の輸送は、「出荷後だから下流のカテゴリ9」と機械的に判断すると誤ります。GHGプロトコルの技術ガイダンスは、自社が購入した outbound logistics(販売製品の輸送サービス)は購入した役務であるためカテゴリ4(上流)に含め、カテゴリ9は販売時点より後に他者が手配・負担する輸送に限る、と明記しています。つまり販売側の判定軸は「物の向き」ではなく、「誰がその輸送サービスを購入し、費用を負担しているか」という資金の流れです(図3)。自社が運賃を払って配送すればカテゴリ4、顧客が引き取る・着払いなど顧客等が負担すればカテゴリ9になります。
図3 販売後の輸送のカテゴリ4・9の分岐
「荷主」という言葉との違いに注意
ここで注意したいのが「荷主」という言葉です。日本の物流の文脈、とりわけ省エネ法などでは「荷主」は貨物の所有者・運送を委託する者を指します。これは多くの場合「輸送サービスを購入・負担する者」と一致しますが、常に同じとは限りません。たとえば着払いでは、売主が貨物を発送し物理的には発荷主にあたっても、運賃は買主が負担します。この場合、売主は輸送を購入していないため、売主側では販売後・他者負担の輸送=カテゴリ9になります。インコタームズも輸送費・手配主体を確認する手掛かりになりますが、条件ごとに対象となる輸送区間や費用負担の範囲が異なるため、EXW・CIF・DDPといった名称だけで機械的に分類するのではなく、実際にどの区間の輸送役務を誰が購入・負担しているかを確認して判定します。いずれも決め手は「荷主かどうか」ではなく「誰が輸送役務を買ったか」です。「荷主」は便利な目安ですが、判定の最終基準は資金の流れに置くのが正確です。
4. 「輸送」だけでなく「配送・保管・荷役」も対象
もう一つ、見落とされがちな重要な点があります。カテゴリ4・9は名前こそ「輸送・配送」ですが、対象は車両で運ぶ「輸送(Transportation)」だけではありません。正式な名称は「輸送・配送(Transportation and Distribution)」であり、配送に伴う倉庫・物流センター・小売施設での保管(Storage)や、それに伴う荷役(Handling)の排出も対象に含まれます(図4)。GHGプロトコルの技術ガイダンスは、カテゴリ4の活動例として「購入製品の倉庫・物流センター・小売施設での保管」を明示的に挙げ、カテゴリ9にも小売と保管を含めています。
図4 カテゴリ4・9が対象とする活動
この点は、算定範囲の漏れに直結します。輸送区間(トラックや船の走行)だけを見て、倉庫での保管や物流センターでの荷役を一律に外すと、本来カテゴリ4・9に含めるべき排出が抜け落ちる可能性があります。とくに、低温倉庫(冷蔵・冷凍)のように保管時のエネルギー消費が大きい事業では、保管に伴う排出が無視できない規模になることがあります。なお、保管・荷役を対象に含めること自体は、GHGプロトコル(カテゴリ4に購入製品の倉庫・物流センター・小売施設での保管、カテゴリ9に小売・保管を含む)に沿った扱いです。一方で、どの拠点まで算定するかには実務上の幅があります。環境省・経済産業省のQ&Aは、物流センターや荷捌き場のように荷物が短時間で通過していく通過型物流拠点(トランスファーセンター)や流通加工を含む物流センターでの荷役・保管について、算定対象外としても構わないとしています。これはGHGプロトコルが明文で除外しているわけではなく、滞留時間が短く保管に伴う排出が小さいと考えられることを踏まえた国内Q&A上の実務的な取り扱いと理解するのが安全です。したがって「通過型だから一律に除外する」と捉えるのではなく、自社の拠点が滞留して保管する拠点か短時間で通過する拠点かを見極め、どこまでを算定範囲に含めたか(含めなかった場合はその理由)を明記しておくことが重要です。
5. よくある質問(FAQ)
質問:拠点間の横持輸送はどのカテゴリですか。
回答:自社の事業所間を結ぶ横持(拠点間)輸送も、判定軸は同じです。自社がその輸送サービスを購入(他社に委託)しているならカテゴリ4(自社施設間の輸送として上流に含む)、自社が車両を所有・運行しているならScope1・2で計上します。
質問:共同配送(他社と積み合わせ)の場合はどう考えますか。
回答:共同配送では、便全体の排出量のうち自社の貨物に相当する分を、重量・容積・距離などの合理的な基準で按分して計上します。按分したうえで、その輸送が上流(調達・自社負担の出荷)か下流(他者負担)かを、本記事の原則に沿って区分します。
質問:EC(通販)で送料を最終ユーザーが負担する場合はどうなりますか。
回答:判定は「送料を顧客から別建てで受け取っているか」ではなく、誰が配送会社と契約し輸送サービスを購入しているかで行います。販売者が配送会社へ運賃を支払い、顧客から送料を回収している通常のEC配送は、販売者が購入したoutbound logisticsとしてカテゴリ4に整理するのが基本です。一方、着払いや顧客手配便、店頭・倉庫での顧客引取のように、顧客が配送会社へ直接手配・支払う場合は、販売後に他者が負担する輸送としてカテゴリ9に整理できます。
質問:調達輸送の運賃が調達金額に含まれていて、活動量を切り出せません。どう算定しますか。
回答:環境省・経済産業省のQ&Aは、こうした場合の実務手法を示しています。重量と距離が分かればトンキロ法で、輸送費が切り出せれば産業連関表ベースの輸送原単位で算定します。どちらも難しい場合は、国立環境研究所の「購入者価格基準のグローバル環境負荷原単位」(産業連関表による環境負荷原単位データブック、いわゆる3EIDに由来)の、輸送段階を含む原単位を用いて、輸送費込みの調達金額にそのまま掛け、カテゴリ1で輸送込みの排出量として算定する方法が紹介されています。環境省データベースの産業連関表ベース原単位は輸送段階を除いた設計のため、輸送を切り出せないときは、あえて輸送を含む原単位(購入者価格基準)を使うという整理です。金額ベース原単位の仕組みは、媒体内の「『カテゴリ1』算定の要、産業連関表とは?」で解説しています。
質問:なぜカテゴリ9は「算定が難しい」と言われるのですか。
回答:カテゴリ9は自社が費用を負担しておらず、輸送距離や手段のデータを直接把握しにくいためです(顧客や流通業者が手配しているため)。データが得にくい場合は、輸送シナリオ(標準的な距離・積載率の想定)を用いて算定する方法が、環境省の基本ガイドラインで示されています。
まとめ
カテゴリ4とカテゴリ9は、まずバリューチェーン上の位置(上流/下流)で大きく分かれます。そのうえで、調達輸送(仕入側の上流輸送)は運賃を誰が負担してもカテゴリ4に位置づけられ、販売後の輸送は「自社がその輸送サービスを購入・負担したか」という資金の流れで、カテゴリ4(自社負担)とカテゴリ9(他者負担)に分かれます。「荷主」という言葉は便利な目安ですが、着払いやインコタームズの違いでは資金の流れと一致しないことがあり、判定の最終基準は資金の流れに置くのが正確です。
また、対象は車両で運ぶ輸送だけでなく、配送に伴う保管・荷役も含みます。輸送区間だけを見て保管を見落とすと算定に漏れが生じます。物流の全体像をフロー図で一枚に整理し、どの輸送・保管がどのカテゴリに対応するかを点検することが、Scope3算定の整合性を保つ近道になります。カテゴリ11と13の区分は、媒体内の「カテゴリ11と13の決定的な違い」で整理しています。
(執筆者:木塚)
参考資料
- GHG Protocol「Corporate Value Chain (Scope 3) Accounting and Reporting Standard」(カテゴリ4・9の定義):https://ghgprotocol.org/corporate-value-chain-scope-3-standard
- GHG Protocol「Technical Guidance for Calculating Scope 3 Emissions」Category 4 / Category 9:https://ghgprotocol.org/scope-3-calculation-guidance-2
- 環境省・経済産業省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム「排出量算定に関するQ&A」(入口):https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/estimate_06.html / Q&A本文(カテゴリ4・9の対象範囲、物流のカテゴリ分類等):qa.html
- 環境省・経済産業省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム「排出量算定に関するガイドライン(基本ガイドライン)」:https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/estimate_04.html
- 環境省・経済産業省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム「Scope3排出量とは(カテゴリ区分)」:https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/estimate_03.html
- 媒体内:Scope3(スコープ3)とは? / GHGプロトコルとは / 「カテゴリ1」算定の要、産業連関表とは? / カテゴリ11と13の決定的な違い


