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CFP表示の5つの基本原則

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CFP表示の5つの基本原則|グリーンウォッシュを避け信頼を得るための実務ガイド

CFP(カーボンフットプリント)の表示は、環境省・経済産業省が2025年2月に公表した「カーボンフットプリント表示ガイド」において、信頼性・信用性、ライフサイクル、比較可能性、透明性、地域性の5つの基本原則が整理されました。本稿では、同ガイド本文および国際規格(ISO 14026、ISO 14067、ISO 14021)、EUの指令(EU)2024/825の動向を踏まえ、各原則の意味と実務上の対応ポイントを解説します。

本記事は、株式会社ウェイストボックスのCFP/LCA支援実績に基づき、実務的な観点から整理しています。
監修者:株式会社ウェイストボックス 木塚晴久(環境ソリューション第1事業部 部長)
最終更新日:2026年4月28日

この記事を読んで欲しい人

  • CFP表示をこれから検討するサステナビリティ・環境担当者
  • 製品表示・対外開示に関わる広報・マーケティング・ブランド担当者
  • 算定データの収集・管理を担う実務担当者
  • サプライヤーやOEMと連携してCFP開示を進める方
  • 環境省・経産省の2025年2月ガイドの内容を一次資料ベースで把握したい方

目次

  1. なぜ今CFP表示の基本原則が重要か
  2. CFP表示ガイドにおける5つの基本原則
  3. CFP表示とグリーンウォッシュ規制の動向
  4. CFP表示を設計する際の実務チェックリスト
  5. まとめ
目次

1. なぜ今CFP表示の基本原則が重要か

CFP表示をめぐる環境は、政策・市場・規制の3側面でここ数年大きく変化しています。

政策面では、2021年6月の「地域脱炭素ロードマップ」で、2030年までに製品・サービスのライフサイクル排出量を見える化する方針が示されました。さらに2024年6月に成立した地球温暖化対策推進法の一部改正により、事業者に対し原材料調達から廃棄までの情報提供が努力義務化されています(環境省・経産省「カーボンフットプリント表示ガイド」第1章)。

市場面では、消費者の認知と行動にギャップが残っています。環境省ガイドが引用するボストン コンサルティング グループの調査(2024年7月)によれば、環境負荷の少ない商品を買いたいと考える消費者は6割を超える一方、実際に選んでいる層は約3割にとどまります。理由の最多は「どの商品が環境負荷が少ないか分からない」であり、CFPという言葉自体の認知も2割未満です。表示を通じて判断材料を提供することが、市場と行動の橋渡しとなります。

図1:CFPという言葉の認知度は直近でも2割未満にとどまる
出典:環境省・経済産業省「カーボンフットプリント表示ガイド」(2025年2月)図2

規制面では、欧州が先行しています。欧州委員会が2020年に実施した調査では、EU域内の環境主張の53.3%が曖昧・誤解を招く・根拠がないとされ、40%が虚偽または欺瞞的可能性があると指摘されました。これを受けて2024年2月28日に採択(官報掲載3月6日)された指令(EU)2024/825(Empowering Consumers for the Green Transition、ECGT指令、通称グリーンウォッシング禁止法)は、2026年3月27日までに加盟国の国内法化が義務付けられ、違反には罰則が科されます。

一方で、これらの規制は日本企業にとっても他人事ではありません。EU域内の消費者向けに環境訴求を行う日本企業は、加盟国での国内法化後に規制対象となり得るため、国内でも環境省の「環境表示ガイドライン」が2026年3月に改定されました。CFP表示を早期に整備することは、グリーンウォッシュ批判の回避と市場信頼の獲得の両面で、実務的な要請となりつつあります。

2. CFP表示ガイドにおける5つの基本原則

環境省・経産省の「カーボンフットプリント表示ガイド」(2025年2月、第2章第1節)は、CFP表示に必要な原則を次の5つに整理しています。

図2:CFP表示の5つの基本原則(ガイド第2章第1節)
出典:環境省・経済産業省「カーボンフットプリント表示ガイド」(2025年2月)p.9

2.1 信頼性・信用性

信頼性とは、信頼できる算定方法により信用できる情報を提供することです。数字の正確さは大前提ですが、それだけでは足りません。同ガイドは、技術的な信頼性を維持しつつ、適応性(要因の変化にあわせた数値・表示の見直し)、実用性(実務として現実的な算定・表示)、費用対効果(コストと効果のバランス)の3要素に留意するよう求めています。

実務においては、最初から極端に細かい算定に踏み込むと、運用が破綻して更新できなくなり、むしろ信頼性を損ないます。一方で、粗すぎる算定は説明責任を果たせません。ISO 14067:2018附属書Cに規定される「システマチックアプローチ」のように、ツール化・構造化によって継続運用を可能にする仕組みづくりが、信頼性確保の現実解といえます。段階的に精度を上げる設計が、結果として信用を積み上げます。

2.2 ライフサイクル

CFPは、製品・サービスのライフサイクルのすべての段階を考慮することが原則です。具体的には、原材料調達、生産、流通・販売、使用・維持管理、廃棄・リサイクルの5段階が対象となります。

図3:CFPの対象となるライフサイクル(原材料調達/生産/流通・販売/使用・維持管理/廃棄・リサイクル)
出典:環境省・経済産業省「カーボンフットプリント表示ガイド」(2025年2月)図3

経産省・環境省の「カーボンフットプリント ガイドライン」(2023年5月)では、算定範囲として最終製品はCradle to Grave(ゆりかごから墓場まで)、中間製品はCradle to Gate(ゆりかごから門まで)が基本とされます。ただし、CFPを提供する相手や目的に応じた選択も許容されています。

製品特性によって支配的な段階は異なり、電力を多く使う製品では使用段階が、重量物では輸送段階が大きくなる傾向があります。全段階を俯瞰したうえで主要な排出源を特定し、算定・表示の設計に落とし込むことが重要です。一方で、表示スペースに制約がある場合は、考慮した段階を示したうえで算定報告書への導線(Webサイト、QRコード等)を用意すれば、ガイドの考え方に沿った表示設計になります。

2.3 比較可能性

比較可能性とは、将来的に同じ製品・サービス群で、同じ機能単位または宣言単位を持つもの同士の比較を可能にする状態を目指すことです。表示ガイド第2章第2節は、比較の表示を行う際に満たすべき4条件を明示しています。

  1. ライフサイクルステージ:すべての段階を対象とした算定であること
  2. 機能単位:同じ機能単位を持つ製品間の比較であること
  3. 市場:現在または直近で同じ市場にあること
  4. 参照ルール:同一の算定ルールに従っていること
図4:比較表示の対象と条件
出典:環境省・経済産業省「カーボンフットプリント表示ガイド」(2025年2月)図8

特に他社製品との比較を一般公開する場合は、算定に用いる製品別算定ルール(PCR)について、3名以上の独立した外部専門家によるレビューを受けることが必要とされています。一方で、自社の同一製品の経時的な変化(パフォーマンストラッキング)であれば、外部レビューは必須ではなく、ハードルは相対的に低くなります。

2.4 透明性

透明性とは、CFPの数値がどのように算定されたかを、読み手が確認できる状態にすることです。表示ガイドは、表示の際に最低限示すべき情報として、算定の単位(機能単位/宣言単位)、ライフサイクルステージ、算定報告書へのアクセス、そして必要な場合の説明文を求めています。

図5:CFP表示と背景情報提供のOK例/NG例(機能単位・宣言単位/ライフサイクルステージ/算定報告書へのアクセス)
出典:環境省・経済産業省「カーボンフットプリント表示ガイド」(2025年2月)図5

算定報告書に含める情報は、ISO 14067:2018およびCFPガイドラインが20項目を定めています(機能単位、システムバウンダリー、データソース、カットオフ基準、感度分析の結果など)。ただし、実務上のリソース制約から全項目の記載が難しい場合は、CFP実践ガイド(2023年5月発行、2024年3月改訂)のモデル事業で検討された項目を参考に、必要に応じて報告項目を選択することも許容されています。

透明性はコストではなく、信頼を守るための投資です。情報を大量に並べるのではなく、読み手が判断に必要な情報にたどり着けることを重視すべきです。

2.5 地域性

CFPは、使用・廃棄が行われる場所によって値が変動し得ます。使用時の電力は地域の電源構成により排出係数が異なり、廃棄処理も埋立中心か焼却中心かリサイクル普及度合いで結果が変わります。

この地域差を無視して単一の数値だけを強調すると、「どの地域での前提か」という疑念を招きます。実務としては、まず想定市場(国内、特定地域、グローバル等)を定め、その前提を透明性の一部として示すことが基本です。海外展開がある場合は、地域別シナリオをどう扱うかまで表示戦略に組み込む必要があります。

3. CFP表示とグリーンウォッシュ規制の動向

CFP表示の基本原則は、国内外のグリーンウォッシュ規制の動向を踏まえて初めて実務的に機能します。

EUの指令(EU)2024/825は、2026年3月27日までに加盟国の国内法化が義務付けられ、2026年9月27日から全面適用予定です。「エコ」「グリーン」「環境に優しい」といった抽象的な環境主張は、公的に認められた優れた環境性能や科学的根拠を示せない限り不当表示となります。また、製品についてGHGオフセットを根拠に「気候中立」「CO2削減」「気候に良い」等の中立・低減・好影響をうたう表示も、禁止対象として明示されています。

日本では、2026年3月に環境表示ガイドラインの改定版(令和8年3月版)が公表されました。EUの動向を踏まえた内容となっています。さらに、カーボンニュートラル関連のルールとしては、ISO 14068-1:2023、SBTi Net Zero Standard、IWA 42:2022などが併存しており、国際的にも整理が進行中です。

一方で、CFP表示は単に規制回避のために行うものではありません。表示ガイドは、CFP表示を「事業者のGHG削減取組に関するコミュニケーションツール」と位置付けています。数字の公開自体が削減姿勢の可視化であり、消費者の認知度・理解度向上を通じた行動変容の起点となります。

4. CFP表示を設計する際の実務チェックリスト

上記5原則と規制動向を踏まえ、実務上のチェックポイントを整理します。

  • 算定範囲はCradle to GraveまたはCradle to Gateを基本とし、除外段階があれば理由を明示する
  • 単位はkg-CO2eを基本とし、機能単位または宣言単位を明記する
  • 算定報告書へのアクセス導線(Webサイト、QRコード等)を表示近傍に設ける
  • 比較表示を行う場合は、4条件(ライフサイクル/機能単位/市場/参照ルール)を満たす
  • 他社比較を一般公開する場合は、3名以上の独立外部専門家レビューを経る
  • 「業界最小」「総合的に環境面で優れている」等の断定的表現は、根拠がない限り使用しない
  • グラフィックで数値を表現する場合、ゼロベースの直線的な変化で示す
  • 原材料や製造技術の変更で算定結果に影響が出た場合は、再算定して表示を更新する
  • 「参照」と「準拠」を使い分ける。ISO 14067:2018に完全対応する場合のみ「準拠」と記載可能

5. まとめ

CFP表示は、数字を公開する取り組みではなく、算定の前提、算定範囲、継続的な更新姿勢までを含む、企業の環境コミュニケーション全体の設計です。本稿で整理した5つの基本原則は、そのための土台となる考え方といえます。

一方で、CFP表示は一度設計すれば完了する類のものではありません。国際規格の改定、EU指令の国内法化、国内ガイドラインの改定など、ルールは継続的に動いています。重要なのは、いかなる前提で算定しているかを説明できる状態を常に保ち、継続的に改善することです。

CFP表示は、単に法的リスクを回避する防衛的な取り組みではなく、サプライチェーン全体の削減取組を社会に伝える戦略的なコミュニケーションの手段となり得るものです。環境省・経産省の2025年2月ガイドが示した5原則は、法的義務ではないものの、CFP表示の信頼性を確保するうえで優先的に満たすべき実務上の基本指針です。これらを土台に、自社の製品特性・サプライチェーンの状況を踏まえた表示設計を行うことが不可欠といえます。

参考資料

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