サプライチェーンにおける森林破壊への迅速な対応を推進するため、SBTi FLAGガイダンスには、一次森林伐採に関連する商品に対して企業が森林伐採禁止の約束を設定することを義務付けています。
森林破壊と転換を行わないという方針と公約には、あるサイトでの森林破壊や転換によって、そのサイトで生産された材料がその方針に準拠しなくなる日付であるカットオフ・デートを含めるべきであると規定しています。
カットオフ日とは何か、何が求められているのか解説します。
※本記事は、環境コンサルティング専門のWasteBoxが、最新の気候関連開示・企業動向をもとに実務的な観点で整理しています。
最終更新日:2026年2月5日
監修:株式会社Waste Box 小澤
(GHG排出量算定、SBT認定、CDP回答支援)
・企業のサステナビリティ/ESG/調達/原材料管理担当者
・SBTi FLAG,森林破壊ゼロ方針に関わる実務担当者
・サステナビリティ報告書や方針文書を作成・確認する立場の人
導入
森林破壊ゼロや自然生態系の保全に向けた企業の取り組みが進む中、「カットオフ日」や「目標年(ターゲット日)」といった用語がサステナビリティの文脈で使われる機会が増えています。一見似た言葉に見えるこれらの概念ですが、果たす役割は大きく異なります。
特にSBTi FLAガイダンスを読み解くうえでは、カットオフ日が「適合・不適合を判断する基準日」であるのに対し、目標年は「いつまでに達成するかを示す期限」である点を正しく区別することが欠かせません。本コラムでは、国際的に参照されている定義やガイダンスをもとに、両者の違いと実務上の注意点を整理します。
カットオフ日とは?
サステナビリティや森林破壊防止の文脈で使われる「カットオフ日」とは、ある日以降に森林破壊や自然生態系の転換が行われた場合、その土地や生産物は「森林破壊ゼロ」「転換ゼロ」の方針や公約に適合しないと判断される基準日を指します。
この定義は、Accountability Framework Initiative(AFI)が示している国際的に広く参照されている考え方です。AFIでは、無森林破壊・無転換のコミットメントを構成する要素として、カットオフ日を明確に含めることが示されています。
SBTi FLAGガイダンスでは、AFIの定義との整合を推奨しており、その結果として、カットオフ日を含めた設計が推奨される位置づけにあります。
これは、「いつからの行為を問題とするのか」をはっきりさせなければ、サプライチェーン全体で実効性のある管理や評価ができないためです。
実務ではカットオフ日を設定することで、過去の土地利用の履歴を確認し、対象となる原材料や生産サイトが基準を満たしているかを客観的に判断できるようになります。 カットオフ日以降に森林破壊や転換が確認された場合、たとえ現在は改善措置が講じられていたとしても、原則として非適合と判断される可能性がある点に注意が必要です。
ターゲット日とは?
・「ターゲット日」とは、企業がその約束をターゲット日までに完全に達成することを約束する日を指します。
これはターゲット日以降は、企業が生産または調達するすべての商品がカットオフ日以降に森林伐採された地域に由来してはならないことを意味します。
カットオフ日とターゲット日との違い
「カットオフ日」「ターゲット日」両者は似た言葉ですが、果たす役割は明確に違います。
- カットオフ日が「どこから先の行為を認めないか」という適合・不適合を判断する基準日であるのに対し、
- ターゲット日は「いつまでに、その状態を完全に実現するのか」という達成期限である点です。
ターゲット日だけを設定した場合、「それまでの期間に行われた森林破壊や転換をどうあつかうのか」が不明確になりやすく、サプライチェーン全体の適合性を一貫した基準で評価することが難しくなります。カットオフ日とターゲット日を分けて考えることで、カットオフ日:適合・不適合を判断するための線引き、目標年:将来の達成ゴールという役割分担が明確になり、コミットメントの信頼性や透明性を高めることができます。
SBTi FLAGガイダンスの文脈では、こうした役割分担を前提に、企業が無森林破壊・無転換の取り組みを段階的に進めていくことが想定されています。また、現在の標準やガイダンスの継続的な見直しの一環として、ターゲット日の考え方を更新することが検討されています。
具体的には、現行の「2025年12月31日までに森林減少ゼロを達成する」という固定的なターゲット日から、「目標提出から2年以内に森林減少ゼロを達成する」という相対的な期限へ更新する案が提案されています。
背景としては、企業ごとの目標設定時期の違いや、実務上の実現可能性を考慮しつつ、森林破壊ゼロへの移行をより確実に進めたいという意図があると考えられます。
ターゲット日の設計が見直されつつある中でも、達成期限と適合性判断の基準は別の概念であることに変わりはありません。その違いを明確にしたうえで両者を設計することが、コミットメントの透明性を保つ前提になります。

