SBTiにおけるFLAG対象企業の判断ポイントを解説します。対象セクターの考え方やFLAG排出量が全体に占める20%ルールに加え、FLAG目標設定時に検討すべきステップ、セクター別・コモディティー別アプローチの選択方法まで、実務視点で整理します。
※本記事は、環境コンサルティング専門のWaste Boxが、最新の気候関連開示・企業動向をもとに実務的な観点で整理しています。最終更新日:2026年2月5日
監修:株式会社Waste Box 小澤
(GHG排出量算定、SBT認定、CDP回答支援)
本記事は、企業の脱炭素経営・気候関連開示に関わる部門の実務担当者を対象としています。特に以下のような方に有益な内容です。
・FLAG目標の設定要否や方法論選択について社内説明が必要な方
・SBTi対応をこれから検討・本格化しようとしている企業のサステナビリティ担当者
・食品、農業、畜産、林業、紙・パルプ、バイオマス関連業界の担当者
・Scope3排出量の算定・管理を担当している実務者
導入
SBTi対応を進める企業にとって、「自社はFLAG目標の設定が必要なのか」という判断は、最初に直面する重要な論点の一つです。FLAG目標はすべての企業に一律に求められるものではなく、事業内容や排出構造によって、設定の要否や求められる対応が大きく異なります。
特に、森林・土地利用・農業に由来する排出への関与がある企業にとっては、単に業種名だけで判断するのではなく、FLAG排出量が温室効果ガス排出全体に占める割合や、サプライチェーン上での立ち位置を踏まえた整理が不可欠です。また、FLAG目標を設定する場合には、セクター別アプローチとコモディティ別アプローチのどちらを選択すべきかといった実務上の判断も求められます。
本コラムでは、SBTiが想定するFLAG対象企業の考え方を整理した上で、企業がFLAG目標を設定する際にどのようなステップで検討を進めるべきかを解説します。FLAG目標の要否判断から方法論の選択まで、実務に即した視点で整理することで、自社にとって適切な対応を考えるための手がかりを提供します。
FLAG対象企業の判断ポイント
SBTi が想定する FLAG 対象セクターとは
SBTiでは、すべての企業に一律でFLAG目標の設定を求めているわけではなく、事業内容や排出構造に応じて、FLAG目標の設定が求められる企業を明確に定義しています。判断の軸となるのは、企業が属するセクターと、FLAG排出量が温室効果ガス排出全体に占める割合です。
まず、FLAG目標の設定が原則として義務付けられる企業として、森林・土地利用・農業に強く関連するセクターが想定されています。具体的には、森林および紙製品(木材、パルプ、紙など)、食品原料(農業生産物)、食品・飲料(動物性・植物性製品)、食品・飲料の加工、小売・卸売、外食産業などが挙げられます。これらのセクターでは、原材料の生産段階における森林減少や農業由来排出への関与が大きく、FLAG排出量が事業活動の中核を占めるケースが多いためです。
加えて、FLAG関連排出量が、Scope1・2・3の合計排出量の20%以上を占める企業についても、FLAG目標の設定が求められます。これは、特定のセクターに明確に分類されない企業であっても、実質的にFLAG排出への関与が大きい場合には、FLAG目標による管理が必要であるという考え方に基づいています。SBTiは、セクター名そのものよりも、実際の排出構造を重視している点が特徴です。
一方で、FLAG排出量が全体の20%未満である企業については、FLAG目標の設定は必須ではありません。ただし、この場合であっても、FLAG排出量はエネルギー/産業起源排出を対象とするSBTi目標の中に含めて管理する必要があります。つまり、FLAG目標が不要だからといって、FLAG排出への対応が不要になるわけではありません。
このように、SBTiが想定するFLAG対象セクターは、単なる業種区分ではなく、FLAG排出量の規模と事業との関係性を基準として定義されています。企業は、自社がどのセクターに属しているかだけでなく、FLAG排出量が排出全体に占める割合を把握した上で、FLAG目標設定の要否を判断することが求められます。 より詳細が気になる方は是非お問い合わせください。

企業がFLAG目標を設定する際に考慮すべきステップ
SBTiでは、企業がFLAG目標を設定する際に、自社の事業特性や排出構造に応じて適切な方法論を選択できるよう、段階的な判断プロセスを示しています。FLAG目標の設定は一律の手順ではなく、企業がどのようにFLAG排出に関与しているかを起点として整理されます。
まず最初のステップは、自社のFLAG排出量の位置づけを確認することです。具体的には、FLAG排出量が自社のscope1~3排出量全体の中で重要な割合を占めているか、また、排出削減に向けて自社がどの程度影響力を持っているかを確認します。この段階で、自社の事業が主に原材料を調達・利用する立場なのか、あるいは農産物や木材などを生産。供給する立場なのかを整理することが重要となります。
次に、FLAG目標設定において、どのアプローチを用いるかを判断します。SBTiでは、FLAG排出全体を対象とするFLAGセクター別アプローチと、特定の原材料に着目するコモディティー別アプローチが用意されています。
この判断に当たっては、牛肉、乳製品、穀物、パーム油、木材など、SBTiが示す主要なFLAG関連コモディティによる排出量の大きな部分がScope1に分類される場合は「供給側のアクター」に該当し、コモディティーパスウェイの検討が可能です。具体的には特定のコモディティのうち1つ以上から排出量が総排出量の10 %以上を占めている場合はコモディティパスウェイを検討します。
アプローチの活用が有効となります。こちらはコモディティごと原単位を毎年削減していくアプローチの目標となります。
さらに、木材や木質製品に関わる排出が以上を占めている場合には、木材及び木材製品に特化した「木材及び木質繊維パスウェイ」を用いることが今後求められます。
*2025年11月時点
SBTは林業・紙パルプ製品セクターの企業と、FLAG排出量の10%以上を木材・木質繊維関連の排出が占める企業向けに木材・木質繊維パスウェイ改訂でパイロット参加企業募集しておりパイロットテストは、2026年第1四半期以降に開始予定です。
一方上記のコモディティが該当しないような企業であったり多様な土地集約型活動を行う企業、直接生産は行っていない企業向けにはセクター別アプローチを採用し多くのケースではこちらの総量削減目標を設定する企業が多く該当することが考えられます。

このように、SBTiが示すFLAG目標設定プロセスは、「どのセクターに属しているか」だけで判断するものではなく、「どの原材料に、どの程度、どの立場で」という観点から、段階的に方法論を選択していく構造となっています。企業はどのプロセスに沿って整理を進めることで、自社の排出構造に適合したFLAG目標を設定することが可能となります。

