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カーボンクレジットと再エネ証書の違い|オフセットと再エネ調達、tCO₂とkWhで使い分ける

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「どちらも買えば自社の排出を減らせる」——カーボン・クレジットと再エネ証書は、しばしばこう一括りにされます。しかし両者は、減らす対象も、数える単位も、算定ルール上の置き場所も異なります。本稿では、2つの仕組みの違いを、種類・単位・算定上の扱いの観点から整理し、目的に応じた使い分けを示します。

監修者:株式会社ウェイストボックス 木塚晴久(環境ソリューション第1事業部 部長)
最終更新日:2026年6月20日

この記事を読んで欲しい人

  • カーボン・クレジットと再エネ証書の違いを正確に整理したい実務担当者
  • Scope 2の削減か、残った排出のオフセットか、どちらに何を使うか迷っている方
  • SHK制度・GHGプロトコルでの両者の扱い(控除と別開示)を確認したい方
  • 脱炭素施策の開示で、説明責任を果たせる根拠を整えたい方
  • 非化石証書やJ-クレジットなど、調達手段の位置づけを俯瞰したい方

目次

  1. 2つの仕組みの根本的な違い
  2. カーボン・クレジットとは――削減・吸収量をトンで価値化する
  3. 再エネ証書とは――電力の環境価値をkWhで価値化する
  4. 算定・開示での扱いの違い
  5. 実務での使い分け
  6. よくある質問(FAQ)
  7. まとめ
  8. 参考資料
目次

1. 2つの仕組みの根本的な違い

カーボン・クレジットと再エネ証書は、どちらも脱炭素のための手段として使われますが、証明している中身がまったく異なります。たとえるなら、カーボン・クレジットは「他者が生み出した削減という成果の証明書」、再エネ証書は「その電気がどんな電源でつくられたかを示す産地証明」です。役割が違うため、算定や開示での置き場所も変わってきます(図1)。

カーボン・クレジットと再エネ証書の基本的な違い。価値の中身・取引の単位・創出の源・算定での扱い・代表例を対比した表。図1 カーボン・クレジットと再エネ証書の基本的な違い

カーボン・クレジットは、温室効果ガスの排出削減・吸収という「成果」を価値として取引できるようにしたものです。1クレジットは原則としてCO₂換算で1トン(t-CO₂)に相当します。重要なのは、クレジットが自社の排出そのものを減らすのではなく、他者の削減・吸収の成果を「相殺(オフセット)」として利用する仕組みである点です。排出が発生したという事実自体を消すものではありません。

一方の再エネ証書は、再生可能エネルギーで発電された電力がもつ「再エネ由来である」という属性(環境価値)を、電力と切り離して取引できるようにしたものです。単位は電力量(kWh・MWh)です。再エネ証書を自社の電力に適用すると、その電力は再エネ由来として扱われ、GHGプロトコルのマーケット基準やSHK制度の基礎排出量では、その電力に係る排出を実質ゼロとして算定できます(ロケーション基準のScope 2は別途算定し、証書に含まれない上流排出までゼロになるわけではありません)。これは発電時の排出を埋め合わせる「オフセット」ではなく、「再エネ電力を調達した」と考える仕組みです。この発想の違いが、後で述べる算定上の置き場所の違いに直結します。

2. カーボン・クレジットとは――削減・吸収量をトンで価値化する

カーボン・クレジットは、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの活用による排出削減量、適切な森林管理による吸収量などを、第三者が認証して取引可能にしたものです。国内の代表例であるJ-クレジット制度は、こうした排出削減量・吸収量を国が認証する制度で、その取組を実施しなかった場合の想定排出量(ベースライン)と、実施後の排出量との差が、クレジットとして認証されます(図2)。

カーボン・クレジットの考え方。削減・吸収の取組→ベースラインとの差をt-CO2で認証→オフセットに活用、の3ステップ。図2 カーボン・クレジットの考え方(削減・吸収をトンで価値化)

クレジットには、国内のJ-クレジットのほか、途上国等での削減を対象とするJCM(二国間クレジット制度)、民間の認証機関が運営するボランタリークレジットなど、いくつかの種類があります。J-クレジット制度では、創出されたクレジットを温対法・省エネ法の報告や、CDP・SBT・RE100での活用、カーボン・オフセットなど、さまざまな用途に使えるとされています。ただしCDP・SBT・RE100で使えるクレジットは由来・用途・対象Scopeによって限定され、たとえばRE100では再エネ電力由来J-クレジットに限られます。クレジットの基礎となるベースラインや追加性、パリ協定第6条との関係といった論点は、媒体内の記事「カーボンクレジットとは何か?基礎から学ぶ主要用語と仕組みの全体像」で体系的に整理しています。

本稿で押さえておきたいのは、クレジットが表すのは「削減・吸収という成果(トン)」であり、その主な使い道が、自社で減らしきれずに残った排出を埋め合わせるオフセットである、という点です。

なお、クレジットは種類や創出方法によって質に差があり、近年は信頼性や追加性(その取組がクレジット収入を前提として初めて成立したといえるか)が重視される傾向にあります。クレジットの価格動向やGX-ETSなどの制度整備を含む最近の論点は、媒体内の記事「カーボン・クレジットに関する動向」で整理しています。本稿では、再エネ証書との役割の違いに焦点を絞ります。

3. 再エネ証書とは――電力の環境価値をkWhで価値化する

再エネ証書は、再エネ電力がもつ環境価値(再エネ由来であるという属性)を、電気そのものと分離して取引できるようにした仕組みの総称です。国内では、非化石証書、グリーン電力証書、再エネ由来のJ-クレジットなどがこれにあたります(図3)。ただし、非化石証書には再エネ指定ありと再エネ指定なしがあり、再エネ電力として訴求できるのは、FIT非化石証書や非FIT非化石証書(再エネ指定あり)など、再エネ属性をもつものに限られます。

再エネ証書の考え方。再エネ電力の発電→再エネ由来の属性をkWh単位で証書化→調達した電力を再エネ由来として扱い電力の排出をゼロに、の3ステップ。図3 再エネ証書の考え方(電力の属性をkWhで価値化)

代表的なのが非化石証書です。資源エネルギー庁によれば、非化石証書は、エネルギー供給構造高度化法(高度化法)のもとで非化石電源がもつ「非化石価値」を電気と分離して取引するために、2018年から非化石価値取引市場で取引が始まった仕組みです。グリーン電力証書は、太陽光・風力・バイオマス等の自然エネルギーで発電された電力の環境価値を、第三者認証機関の認証を得て証書化したもので、2001年から運用されています。これら証書の種類ごとの違い(発行主体・対象・価格・有効期限)や、I-RECを含む調達方法の比較は、媒体内の記事「非化石証書とは?3種類の違い」および「再生可能エネルギー電力の調達方法」で詳しく整理しています。

再エネ証書に共通する考え方は、証書を適用した電力を「再エネ由来として調達した」とみなし、マーケット基準などで電力由来の排出を実質ゼロとして算定することです。排出を相殺するのではなく、電力の出自を置き換える、という発想がクレジットとの決定的な違いです。

4. 算定・開示での扱いの違い

2つの仕組みの違いが最もはっきり表れるのが、排出量の算定・開示における扱いです(図4)。国際基準のGHGプロトコルでも、国内のSHK制度でも、再エネ証書とクレジットは別の場所で扱われます。

算定・開示での扱いの違い。再エネ証書はGHGプロトコルではScope2マーケット基準で反映、SHK制度では基礎排出量に反映。クレジットはGHGプロトコルでは別開示、SHK制度では調整後排出量で控除。図4 算定・開示での扱いの違い

GHGプロトコルでは、購入電力に伴うScope 2の算定に、電力系統の平均係数を用いるロケーション基準と、契約や証書を反映するマーケット基準の2つの方法があります。Scope 2 Guidanceは、再エネ証書のような契約に基づく証明手段(contractual instruments)をマーケット基準に反映できると定めています。つまり再エネ証書は、Scope 2のマーケット基準で「再エネ調達」として反映され、電力由来の排出量を下げる方向に働きます。一方、クレジットによるオフセットは、Scope 1・2・3の算定値から差し引かず、スコープとは別に開示することが原則とされています。算定の数値を直接「減らす」のではなく、別枠の取り組みとして示す、という整理です。Scope 2の算定方法の詳細は、媒体内の「Scope2とは?」で解説しています。

GHGプロトコルがオフセットをスコープと分けて扱うのには理由があります。クレジットが表す削減・吸収は、多くの場合、自社の事業活動の外(他者のプロジェクト)で起きたものです。これを自社のScope排出量から直接差し引くと、自社のインベントリ(排出量目録)が実態を反映しなくなり、企業間の比較可能性も損なわれます。さらに、同じ削減量を創出者と購入者の双方が計上すれば二重計上になりかねません。そこでGHGプロトコルは、まず自社の排出量を正味で算定・開示し、オフセットはそれとは別に「実施した取り組み」として示す、という整理を採っています。

国内のSHK制度では、排出量を基礎排出量と調整後排出量の二段で算定します。環境省 脱炭素ポータルによれば、令和7年度報告(令和6年度実績)からは、事業者が取得した非化石証書やグリーン電力証書、再エネ由来のJ-クレジットを、電気・熱の基礎排出量の算定に反映できるようになりました。これに対し、再エネ由来以外のクレジット(森林吸収やメタン回収などによるもの)は、基礎排出量からさらに控除する調整後排出量の段階で反映されます。再エネ属性をもつ環境価値(非化石証書・グリーン電力証書・再エネ由来J-クレジット)は基礎排出量に、再エネ由来以外のクレジットは調整後排出量に反映される、と段階が分かれるのが特徴です。なお、SHK制度とGHGプロトコルの制度全体としての違いは、媒体内の記事「GHGプロトコルとSHK制度の違い」で整理しています。

いずれの制度でも共通する注意点が、二重計上の回避です。一つの電力量に対して複数の環境価値(非化石証書とグリーン電力証書など)を重ねて適用することは認められません。証書やクレジットを使う際は、発行元・対象量・発行年度を記録し、重複しないよう管理する必要があります。

5. 実務での使い分け

ここまでの違いを踏まえると、実務での使い分けはシンプルに整理できます(図5)。出発点は「何を減らしたいのか」です。

目的別の使い分け。電力由来の排出(Scope2)を下げたいなら再エネ証書で再エネ調達、どうしても残る排出を埋め合わせたいならカーボン・クレジットでオフセット。図5 目的別の使い分け

購入電力に由来する排出(Scope 2)を下げたいのであれば、再エネ証書を使って再エネ調達として反映するのが基本です。一方、燃料の燃焼や工程に伴う排出など、自社の努力では減らしきれずに残る排出を埋め合わせたいのであれば、カーボン・クレジットによるオフセットが選択肢になります。両者は置き換え可能な代替手段ではなく、目的の異なる補完的な手段です。

たとえば、購入電力に由来する排出が大きい事業者であれば、まず省エネで使用量を抑え、残る電力使用分に非化石証書などの再エネ証書を適用してScope 2を下げる、という順序が基本になります。そのうえで、燃料の燃焼など電力以外に由来する排出が残る場合に、その埋め合わせとしてクレジットを用いる、という整理です。再エネ証書でクレジットの役割を代えることはできず、その逆もできません。

大切なのは、まず自社の排出構造を把握し、減らせる排出は削減策で減らしたうえで、電力は再エネ証書で、残余はクレジットで、と役割を分けて使うことです。そのうえで、どの手段をどの算定・開示で用いたかを記録しておけば、社内外への説明責任を果たせます。証書とクレジットの役割を区別し、二重計上を避けて記録することが、信頼される脱炭素の開示の前提になります。

6. よくある質問(FAQ)

質問:カーボン・クレジットを買えば、自社のScope排出量は減りますか。

回答:GHGプロトコルでは、クレジットによるオフセットはScope 1・2・3から控除せず、別に開示するのが原則です。したがってスコープの数値そのものは下がりません。電力由来の排出(Scope 2)を数値として下げたい場合は、再エネ証書をマーケット基準で反映する方法が適合します。

質問:1クレジットはどのくらいの量ですか。再エネ証書とは単位が違うのですか。

回答:カーボン・クレジットは原則としてCO₂換算で1トン(t-CO₂)を1単位とします。これに対し再エネ証書は電力量(kWh・MWh)を単位とします。前者は「どれだけ減らした・吸収したか」、後者は「どんな電力を使ったか」を表すもので、評価している対象が異なります。

質問:非化石証書とJ-クレジットは併用できますか。

回答:目的が異なるため併用は可能です。ただし、一つの電力量に対して複数の環境価値を重ねて適用する二重計上は認められません。発行元・対象量・発行年度を記録し、重複しないよう管理することが必要です。

質問:SHK制度とGHGプロトコルで、証書やクレジットの扱いが違うのはなぜですか。

回答:制度の目的と設計が異なるためです。SHK制度では、非化石証書・グリーン電力証書・再エネ由来J-クレジットを基礎排出量に、再エネ由来以外のクレジットを調整後排出量に反映します。GHGプロトコルでは再エネ証書をScope 2のマーケット基準に反映し、クレジットによるオフセットは別開示とします。制度全体の違いは、媒体内の記事「GHGプロトコルとSHK制度の違い」で整理しています。

質問:どの再エネ証書を選べばよいですか。

回答:非化石証書・グリーン電力証書・再エネ由来J-クレジット、さらにI-RECなど、種類ごとに発行主体・対象範囲・価格・有効期限が異なります。自社の目的(国内報告か国際開示か、コストか追加性か)に応じた選び方は、媒体内の記事「再生可能エネルギー電力の調達方法」で比較しています。

まとめ

カーボン・クレジットは「削減・吸収の成果」をトン(t-CO₂)で価値化したもので、主な使い道は残った排出を埋め合わせるオフセットです。再エネ証書は「電力の再エネ属性」をkWhで価値化したもので、電力を再エネ由来として調達したと扱い、電力由来の排出を下げます。両者は減らす対象も単位も異なる、別の道具です。

算定・開示では、再エネ証書はGHGプロトコルのScope 2マーケット基準やSHK制度の基礎排出量に反映され、再エネ由来以外のクレジットはGHGプロトコルでは別開示、SHK制度では調整後排出量で扱われます。両者は代替ではなく補完です。役割を区別し、二重計上を避けて使った手段を記録しておくことが、信頼される開示につながります。

(執筆者:木塚)

参考資料

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