SBTi Servicesポータル完全ガイド:登録手順・機能・申請フローを徹底解説 詳しくはこちら

Scope1の算定で目にするGWP100aとは

  • URLをコピーしました!

Scope1排出量算定で用いられるGWP100aとは何かを、GHGプロトコルに基づいて専門的かつ分かりやすく解説。複数の温室効果ガスをCO₂換算する理由や、GWP100aの前提・限界について整理します。

最終更新日:2026年3月9日

この記事を読んで欲しい人

・ 自社のScope1排出量算定を担当している方
・ GHG算定やカーボンフットプリント業務に関わり始めた方
・ GWP100aという用語は知っているが、背景まで理解できていない方
・ 脱炭素・気候変動対応について、技術的に正確な情報を整理したい方

目次

導入

企業の脱炭素対応が進む中で、「Scope1」や「GWP100a」という言葉を目にする機会は増えています。一方で、それらが何を意味し、なぜその指標が使われているのかを十分に理解しないまま、算定や報告を行っているケースも少なくないのではないでしょうか。本コラムでは、Scope1排出量算定の基本となるGWP100aについて、その考え方と背景を整理し、実務で押さえておくべきポイントを解説します。

Scope1とは

Scope1とは、GHGプロトコルにより定義された温室効果ガス排出区分の一つであり、企業や組織が自ら所有または管理する設備・活動から直接排出される温室効果ガスを指します。具体的には、工場のボイラーや加熱炉での燃料燃焼、社用車におけるガソリンや軽油の使用、冷凍・空調設備からのフロン類(HFC等)の漏えいなどが該当します。

Scope1の特徴は、排出源が企業の管理下にあるため、排出量の把握や削減施策が比較的直接的に行える点にあります。そのため、温室効果ガス削減に向けた取り組みの中では、Scope1は「自社の努力が最も反映されやすい領域」として位置づけられることが多くあります。

一方で、Scope1の排出量算定が単純ではない理由は、Scope1に含まれる温室効果ガスが二酸化炭素だけではないことにあります。実際には、メタン(CH₄)や一酸化二窒素(N₂O)、フロン類といった複数種類の温室効果ガスが排出されます。これらのガスは、大気中での寿命や赤外線吸収能力といった物理的性質が大きく異なります。

例えば、メタンは大気中での寿命は比較的短いものの、単位質量あたりの温暖化効果は二酸化炭素よりもはるかに大きいとされています。一方で、二酸化炭素の温暖化効果は相対的に小さいものの、大気中に長期間残留し続けるという特徴があります。

このように、性質の異なる温室効果ガスを、「二酸化炭素が何トン、メタンが何トン」といった形で単純に足し合わせても、地球温暖化への影響を正しく評価することはできません。この問題を解決するために用いられるのが、次に紹介するGWPという指標です。

GWP100aについて

まず、GWP(Global Warming Potential:地球温暖化係数)とは、ある温室効果ガスが一定期間にわたって地球温暖化に与える影響を、二酸化炭素を1とした相対値で表した指標です。たとえば、GWPが28であれば、「同じ質量の二酸化炭素と比べて、100年間で28倍の温暖化影響を持つ」という意味になります。

GWPを用いることで、異なる温室効果ガスを「CO₂換算値」という共通の単位に置き換えることが可能になります。これにより、Scope1で排出される複数種類の温室効果ガスを一つの数値として集計・比較できるようになります。

GWP100aとは、排出後100年間にわたる温暖化影響を評価したGWP値を指します。「a」はannum(年)を意味し、100年平均の影響であることを示しています。現在、GHGプロトコルやIPCC(気候変動に関する政府間パネル)のガイドラインでは、GWP100が標準的な時間枠として採用されています。そのため、企業のScope1排出量算定においては、各温室効果ガスの排出量にGWP100aを掛け、CO₂換算値として集計する方法が一般的となっています。

100年という時間軸は、科学的に唯一の正解というわけではありませんが、国際的な合意に基づいて採用されてきた実務上の基準です。短期的な温暖化影響を重視する場合には、20年間で評価するGWP20が適する場面もあります。しかし、国や企業をまたいだ排出量の比較や、長期的な気候安定化目標との整合性を考慮すると、100年という時間枠がバランスの取れた指標として位置づけられてきました。

その結果、Scope1を含む温室効果ガス排出量の算定や報告においては、GWP100aが事実上の標準として広く用いられています。

もっとも、GWP100aには限界があることも指摘されています。特にメタンのような短寿命の温室効果ガスについては、短期的な温暖化影響や排出変化の重要性が相対的に反映されにくい可能性があります。そのため、近年では「GWP*」など、別の評価手法についても研究や議論が進められています。

こうした背景を踏まえると、実務においてGWP100aを用いる際には、「国際的に合意された標準である」という点と同時に、「一定の前提と特性を持つ指標である」という点を理解した上で、適切に活用することが重要だと言えるでしょう。

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次