SHK制度とGHGプロトコルの違いを解説・制度目的、算定範囲、クレジットの扱いなど、国内法と国際基準の使い分けを整理します。
※本記事は、環境コンサルティング専門のWasteBoxが、最新の気候関連開示・企業動向をもとに実務的な観点で整理しています。
最終更新日:2026年3月9日
監修:株式会社Waste Box 小澤
(GHG排出量算定、SBT認定、CDP回答支援)
・企業のサステナビリティ担当者
・温室効果ガス排出量の算定・報告を担当している実務担当者
・SHK制度とGHGプロトコルの違いをより正確に理解したい方
・Scope3やサプライチェーン排出の位置づけに悩んでいる方
・国内報告と国際開示をどう整理すべきか悩んでいる方
導入
温室効果ガス排出量の算定を進める中で、「SHK制度」と「GHGプロトコル」という2つの枠組みに直面し、その違いに戸惑う企業担当者は少なくありません。いずれも排出量を定量化する仕組みですが、制度の目的や算定範囲、活用される場面は大きく異なります。
本コラムでは、SHK制度とGHGプロトコルの基本的な考え方を整理したうえで、両者の違いと実務上の使い分けポイントを分かりやすく整理します。
SHK制度とは
SHK制度(温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度)とは、「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」に基づいて日本国内で運用されている、法定の排出量算定・報告制度です。一定規模以上の事業者に対して、温室効果ガス排出量の算定と国への報告を義務付けており、国がその結果を集計・公表する仕組みとなっています。
SHK制度の主な目的は、事業者ごとの排出量を可視化することで、自主的な排出削減の取り組みを促進する点にあります。そのため、制度設計は国内政策との整合性が重視されており、算定対象や算定方法も日本のエネルギー制度や排出係数に基づいて定められています。 算定範囲としては、事業者自身が直接排出する温室効果ガス(Scope1)と、購入した電力・熱等の使用に伴う間接排出(Scope2)が中心です。サプライチェーン全体に及ぶScope3排出については、原則として報告は任意とされています。また、排出削減手段やカーボンクレジットの取り扱いについても、制度上のルールに従って厳密に整理されています。
GHGプロトコルとは
GHGプロトコルは、WRI(世界資源研究所)とWBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)が策定した、温室効果ガス排出量算定の国際的なガイドラインです。法的拘束力はなく、企業や自治体、投資家などが自主的に活用することを前提とした国際基準です。
GHGプロトコルの最大の特徴は、世界共通の枠組みで排出量を算定・開示することで、企業間・国際間の比較可能性を高める点にあります。そのため、事業者自身の排出(Scope1)、エネルギー起源の間接排出(Scope2)に加え、原材料調達から製品使用・廃棄に至るまでのバリューチェーン全体の排出(Scope3)を包括的に捉える考え方が採用されています。また、GHGプロトコルでは、排出量算定と排出削減・中和の取り扱いを明確に区別する点が重視されています。原則として、カーボンクレジットの購入などは排出量の算定結果から差し引くものではなく、算定後に別途開示・説明する形が推奨されています。
SHK制度とGHGプロトコルの違い
SHK制度とGHGプロトコルの違いを整理すると、その本質は「何のために、どこまでの排出を、どのように把握するか」という設計思想の違いにあります。
SHK制度は、国内法に基づく報告義務制度として、国が事業者の排出実態を把握し、政策立案や排出削減促進に活用することを目的としています。そのため、算定範囲は主にScope1・2に限定され、算定方法や排出係数も国内制度に即した形で定められています。
一方で、GHGプロトコルは、企業の環境影響を国際的に比較・評価するための共通言語として設計されており、Scope3を含めたサプライチェーン全体の排出把握を前提としています。法定報告ではないものの、気候関連開示(CDP、TCFD、ISSB)やSBTといった国際的枠組みの基盤として広く採用されています。
このため、SHK制度とGHGプロトコルはどちらかが優れているかという関係ではなく、「用途が異なる制度・基準」と理解することが重要です。日本国内での法令遵守や公式報告にはSHK制度への対応が不可欠である一方、グローバルな情報開示や脱炭素戦略の策定においてはGHGプロトコルに基づく算定が求められます。両者の違いを正しく理解し、目的に応じて使い分けることが、実務上の混乱を避ける鍵になります。

