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Scope1(スコープ1)とは?定義・対象範囲・計算方法を実務担当者向けに解説

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これから申請する企業担当者が知るべき操作ポイント・注意点に触れていきます。
企業のGHG排出量算定で最も重要な「Scope1(スコープ1)」とは?

定義、算定式、具体例、他スコープとの違い、企業事例まで実務視点でわかりやすく解説。

※本記事は、環境コンサルティング専門のWaste Boxが、実務的な観点で整理しています。

※この記事の監修者:株式会社WasteBox
※最終更新日 2025年11月

この記事を読んで欲しい人

・ESG/サステナ担当になったばかりの担当者
・コンサルに外注する前に基礎理解をしたい企業側の実務者
・学生・調査担当など「初学~中級者」

目次

導入

Scope1(スコープ1)とは、企業が自社の活動によって直接排出する温室効果ガス(GHG)のことです。工場のボイラー・発電機、社用車の燃料燃焼、冷媒の漏洩など、「自社の手でコントロールできる排出」が対象です。Scope1の正確な把握は、脱炭素経営の第一歩であり、Scope2・Scope3の管理やESG開示の信頼性を左右します。本記事では、Scope1の定義・対象範囲・計算式(具体例付き)・必要データ・削減アプローチ・他スコープとの境界までを、実務担当者の方がそのまま社内で使えるレベルに整理しました。章ごとに要約と「実務上のポイント」を付け、最後にチェックリストとFAQも掲載しています。

初めて担当になった方から、既に算定を回している方まで、「迷わず・ブレずに」Scope1を運用できるよう設計しています。

Scope1の基本概要と定義

Scope1とは、企業が自社の活動によって直接的に排出する温室効果ガスを指します。

企業が管理可能な排出源(燃料燃焼、車両運行、冷媒漏洩など)が対象で、脱炭素経営の第一歩として最も重要です。 理解すべきは「Scope1=自社が直接コントロール可能な排出」という基本構造です。

主なポイント(要約/サマリー)

・企業の直接排出を管理する最も基礎的なスコープ
・GHGプロトコルの三分類の中核(Scope1~3)
・削減効果を直接得られる領域

環境省 https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/SC_syousai_all_20230301.pdf

Scope1(スコープ1)とは、企業が自社の活動によって直接的に排出する温室効果ガスを指します。  GHGプロトコルにおいて、排出量はScope1~3の3段階に分けて整理されますが、Scope1はその中でも最も企業の管理権限が及ぶ領域です。

燃料の燃焼や工場のボイラー、社用車の使用などが主な排出源で、これらは事業活動に密接に関係しているため、削減の取り組みが成果に直結しやすいという特徴があります。

企業がScope1を正確に把握することは、脱炭素経営の第一歩であり、後続のScope2・3算定にも影響を与えます。

GHGプロトコルにおけるScope1の位置づけ

国際的な温室効果ガス算定基準である「GHGプロトコル(Greenhouse Gas Protocol)」では、排出源を Scope1・2・3の3つに分類して管理します。

この3区分は、排出のコントロール可能性責任範囲を明確にするために設けられています。

  • Scope1:企業が保有・管理する設備や車両などからの直接排出
  • Scope2:購入した電力や熱など、他者の排出を通じた間接排出
  • Scope3:サプライチェーン全体(調達・物流・廃棄など)におけるその他の間接排出

Scope1はこの中でも最も企業の裁量が大きく、エネルギー効率化・設備更新などの自助努力で削減が可能な領域です。逆にScope3のように、他社活動に依存する排出はコントロールが難しく、Scope1の正確な算定が全体算定の信頼性を支える基礎になります。

環境省 https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/enetoku/case/pdf/2024/enetoku-jirei-2024-34.pdf

実務上のまとめ

GHGプロトコルに基づく3分類を社内資料(算定境界設定書など)に必ず明記する。
□「Scope1=自社直接排出」「Scope2=購入エネルギー」「Scope3=サプライチェーン」という認識を全社で統一。
□各部門がどのスコープに該当する排出を持つか、事業別・拠点別マッピングを行うことで算定ミスを防ぐ。

Scope1の対象範囲と排出源の種類

Scope1の対象は、企業や組織が直接管理する活動・設備・車両から生じる温室効果ガスの排出です。ここでは、排出源を「固定燃焼」「移動燃焼」「プロセス排出」「漏洩排出」の4カテゴリで整理します。

分類主な排出源具体例
① 固定燃焼ボイラー、炉、発電機など工場での燃料使用・施設の暖房設備
② 移動燃焼社用車・トラック等輸配送、営業車による燃料燃焼
③ プロセス排出化学反応・金属精錬などセメント製造における石灰石分解
④ 漏洩排出冷凍・空調・冷蔵設備冷媒ガス漏れ、空調保守不備による排出

これらはすべて「自社の管理下で発生している排出」であり、排出削減のための直接的な制御や投資判断が可能な範囲です。

Scope1は“最も現場に近い排出”であるため、データの粒度が高く、算定精度が企業の脱炭素戦略の信頼性を左右します。

実務上のまとめ

燃料使用量や稼働データなど、エネルギー使用の原単位管理
□フロン類などの冷媒は、漏洩履歴と交換履歴を記録・算定対象に含める。
□生産工程を持つ企業では、「化学反応・素材分解」などの工程起因排出を見落とさない。
□排出源別に「担当部門・データソース・記録周期」を明文化し、監査対応可能な算定体制を構築する。

本項のまとめ

Scope1は「自社で直接排出するGHG」であり、最もコントロール可能な領域。 
算定の出発点は「排出境界=どこまでを自社管理とみなすか」を明確にすること。
GHGプロトコルの3分類(Scope1~3)を社内方針書に明記し、共通認識を作る。

Scope1の算定方法と計算式

Scope1排出量は、企業の活動量(燃料や材料の使用量など)と排出係数を掛け合わせて求めます。

算定は「活動量 × 排出係数」という最も基本的な計算構造で、排出係数は環境省やIPCCが毎年更新する値を使用します。

主なポイント(要約/サマリー)

基本式:排出量(CO₂e)=活動量×排出係数
活動量=燃料使用量など、排出の起点
排出係数=燃料1単位あたりのCO₂換算量

Scope1排出量の基本計算式

Scope1排出量を算出する際は、まず「活動量(Activity Data)」を正確に把握し、それに「排出係数

(Emission Factor)」を掛けてCO₂排出量を求めます。

この算定式は国際的に統一されており、GHGプロトコルでも同様の方法が採用されています。

排出量(CO₂e)= 活動量 × 排出係数

たとえば、自社が1,000Lの軽油を使用した場合、排出係数が「2.68 kg-CO₂e/L」であれば、排出量は「1,000 × 2.68 = 2,680 kg-CO₂e」となります。

活動量は「どれだけ使ったか」、排出係数は「1単位あたりどれだけGHGを排出するか」を示すものであり、この2要素を正確に設定することが、算定精度の根幹になります。

実務上のまとめ

燃料種別ごとに排出係数が異なるため、「燃料種類 × 単位」を正確に対応付ける。
□活動量データ(購入量・使用量・稼働時間)は部門横断で統一フォーマット化する。
□排出係数の更新を忘れず、算定ツール(Excel等)へ反映。
□複数拠点で算定する場合、データの粒度(単位・期間)を統一しておくことが監査対応の鍵。

Scope1算定に必要なデータ項目

Scope1算定では、燃料・プロセス・冷媒などの使用状況を把握し、活動量データとして整理する必要があります。部門ごとのデータ取得ルートを整備し、毎年同一基準で更新できる体制を構築しましょう。

Scope1算定に必要なデータは、以下の3領域に大別できます。

分類データ項目取得ソース更新頻度
固定燃焼使用量(L, m³, kg)/燃料種別購買部門/燃料伝票毎月~四半期
移動燃焼運行距離/燃料補給量物流・営業部門/給油記録毎月
プロセス排出原材料使用量/化学反応量生産部門/工程管理表半期
漏洩排出補充量/交換量設備管理部門/保守記録年1回以上

これらのデータは、算定の再現性(再計算しても同じ結果が得られる状態)を確保するために、年度を通じて一貫した形式で管理する必要があります。

実務上のまとめ

データ収集責任者を部門ごとに明確化し、更新時期を年間計画に組み込む。
□記録フォーマットは固定し、年度をまたいでも整合性を保つ。
□データ保存は3年間以上を推奨(監査・外部レビュー対応。
□SBT等の他制度算定とも整合させることで、将来の報告統合が容易になる。

本項のまとめ

排出量=活動量 × 排出係数。これを正確に算定することがすべての基礎。
排出係数は年度・燃料種別で異なるため、環境省公表値を都度更新。
部門ごとに燃料・冷媒・運行距離などのデータ管理責任を明確化。   
Excelや社内システムで再現性(同じ結果が再算出できる状態)を担保する。

Scope1削減の実務的アプローチ

Scope1は企業が直接管理できる排出領域のため、削減の効果が最も早く現れます。燃料転換、エネルギー効率改善、冷媒管理などの取り組みを体系化し、

中長期の脱炭素ロードマップに組み込むことが重要です。

主なポイント(要約/サマリー)

Scope1削減=「自社でできる最初のアクション」
具体策は「燃料転換・効率化・漏洩管理」の3軸で構成
削減状況をモニタリングし、SBT目標やTCFD開示にも連動させる

Scope1は、企業の活動の中で最も「自社がコントロールできる排出源」にあたります。

したがって、脱炭素経営の第一歩として、Scope1の削減は「自社努力で成果を見せやすい領域」と言えます。

主なアプローチは次の3つです。

① 燃料転換(Fuel Switching)

化石燃料から再生可能燃料や低炭素燃料への転換。例:都市ガス→バイオガス、重油→LPGなど。

②設備更新・稼働効率化(Energy Efficiency)

老朽設備の更新や運転最適化により、燃焼効率を改善。

例:高効率ボイラー、ヒートポンプ、インバーター導入など。

③冷媒・漏洩対策(Refrigerant Management)

冷媒漏洩はScope1排出の中でも軽視されがちだが、GWP値が高く影響が大きい。定期点検・低GWP冷媒への切り替えが有効。

これらは単独で進めるよりも、「算定 → 削減計画 → モニタリング → 改善」のサイクルとして管理することで、SBT(Science Based Targets)やTCFD開示にも適合しやすくなります。

削減目標設定とモニタリング

Scope1の削減を効果的に進めるには、単なる数値目標ではなく、データドリブン型のモニタリング体制が不可欠です。削減目標の設定では「基準年」「目標年」「削減率」を明確化し、社内の意思決定プロセスと連動させます。

代表的な設定例:

  • 短期目標(3~5年):基準年比▲15~25%
  • 中期目標(10年):基準年比▲40~50%
  • 長期目標(2050年など):ネットゼロ(SBT整合)

モニタリングの運用では、毎年の燃料・エネルギー使用量をScope1排出量に変換し、前年との差分をグラフ化して可視化することが重要です。

このデータを基に、省エネ投資や設備更新の優先順位を定量的に判断できます。

また、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の要求に合わせ、

Scope1削減の進捗を「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の観点で整理しておくと、外部開示にも転用できます。

実務上のまとめ

削減目標は「総量ベース(t-CO₂e)」で設定し、基準年を社内で統一。
□目標値はSBT基準との整合を意識。
□モニタリングデータは四半期単位で更新し、グラフ可視化を標準化。
□目標達成状況はCSR・統合報告書・TCFD開示に転用できるフォーマットに整理。

Scope1,2,3排出量削減PDCAサイクル

代表企業の削減事例

Scope1削減は、単なる環境施策ではなく、事業競争力・コスト最適化の観点でも注目されています。以下に、国内の先進企業2社の事例を紹介します。

事例1 大崎工業【㈱】

環境省 https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/enetoku/case/pdf/2025/enetoku-jirei-2025.pdf

事例2 三井農林(株))

関東経済産業局 https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/ene_koho/ondanka/data/cn_datsutansojirei.pdf

本項のまとめ

削減策は「燃料転換」「効率化」「漏洩管理」の3本柱。

削減目標は総量(t-CO₂e)で設定し、基準年・目標年・削減率を明確モニングは四半期単位で可視化し、経営・ESG開示に接続させる。

成功企業は、Scope1削減を“環境対策”ではなく“経営効率化”として位置づけている。Scope1・2・3の違いと位置づけ

温室効果ガス(GHG)排出量を体系的に把握するために、国際基準である GHGプロトコル(Greenhouse Gas Protocol) は、排出源を「Scope1・Scope2・Scope3」の3つに分類しています。

主なポイント(要約/サマリー)

Scope1:自社が直接排出する温室効果ガス(燃料燃焼・冷媒漏洩など)
Scope2:他者から購入した電力や熱の利用に伴う排出(エネルギー起源間接排出)
Scope3:原材料調達~廃棄までのサプライチェーン全体における間接排出

GHGプロトコルでは、企業活動による温室効果ガス排出を3つのスコープに分類して整理します。この分類は、排出量の責任範囲を明確にすることを目的としており、

特に企業間での二重算定(ダブルカウント)を防ぐうえで非常に重要です。

サプライチェーン排出量

Scope1(スコープ1) は、企業が自社の管理下で直接排出するGHGです。工場のボイラー、発電機、車両の燃料燃焼、冷媒漏洩などが該当します。

もっともコントロールしやすい領域であり、企業が自主的に削減施策を講じやすい範囲です。

Scope2(スコープ2) は、他者から供給される電気・蒸気・熱などの使用に伴う間接排出を指します。たとえば自社のオフィスや工場で使用する電力に起因するCO₂排出はScope2に該当します。

これは「エネルギー起源間接排出」とも呼ばれ、再エネ証書(グリーン電力証書など)の活用で削減が可能です。

Scope3(スコープ3) は、調達から製造・物流・販売・使用・廃棄まで、サプライチェーン全体におけるその他の間接排出を指します。

たとえば、仕入れ先が製造する原材料の排出、顧客が製品を使用する際の排出などが含まれます。 Scope3は最も把握が難しい領域ですが、全体の排出量の7~9割を占めることが多く、

近年では開示義務や削減目標の対象として注目が高まっています。

この3スコープを正しく理解し区分することは、SBT(Science Based Targets)やTCFD、CDPなどの国際的な開示制度にも対応するうえで不可欠です。

GHGプロトコル全体の枠組み

GHGプロトコル(Greenhouse Gas Protocol)は、企業や自治体などの組織が温室効果ガス(GHG)の排出量を国際的に比較可能な形で算定・報告・削減できるように設計された世界共通の基準です。2001年にWRI(世界資源研究所)とWBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)が策定し、現在ではSBT・CDP・TCFD・ISSBなど、主要な国際認証や開示制度の共通言語(共通プロトコル)となっています。

なぜ「Scope1・2・3」に分かれているのか

GHG排出を1本の数字で表すと、「誰の排出なのか」が曖昧になり、企業間での二重計上(ダブルカウント)が起こります。そのためGHGプロトコルでは、排出源を次の3つの視点で整理します。

区分排出の特徴管理・削減の主な視点
Scope1自社が直接管理・制御できる排出経営判断・削減行動に直結
Scope2他社が発生させたが、自社のエネルギー使用により間接的に発生再エネ導入・証書取引の管理単位
Scope3サプライチェーン全体で発生する排出取引関係全体の影響可視化・リスク把握

この3分類によって、企業活動全体を「自社内」「取引先」「社会全体」の3層で把握できるようになります。言い換えると、Scope1~3の仕組みは“環境負荷の責任境界線を整理する地図”のようなものです。

プロトコルの構造と算定フレーム

GHGプロトコルは、単なる数値算出ルールではなく、

以下のような構成で算定→報告→開示→改善のサイクルを定義しています。

① 算定(Calculation)

活動量と排出係数を基に、Scope1~3ごとのGHG排出量を算出。

② 報告(Reporting)

透明性・再現性を確保し、企業単位・製品単位で公表。データソースや境界設定も開示対象。

③ 検証(Verification)

外部機関(第三者)がデータの妥当性をレビュー。

→ SBTやCDP提出時の必須プロセス。

④ 改善(Management)

排出量の見える化に基づき、削減施策を立案・実施。

この構造により、企業の気候変動対策を「測る→減らす→報告する」という一貫した流れで推進できるようになっています。

Scope別の実務上の目的

Scope1:自社の直接的な活動改善。エネルギー効率化・設備投資判断に活用。
Scope2:購入電力の再エネ化・証書利用の根拠データ。
Scope3:調達・物流・使用・廃棄を含むサプライチェーン最適化の指標。

それぞれのScopeが「戦略目的の異なるデータレイヤー」として存在しており、全体として企業の脱炭素経営マネジメントシステムを支える仕組みといえます。

実務上のまとめ

3スコープの定義を社内文書(算定境界設定書・算定マニュアル)に明記する。
□各スコープの担当部門・データ収集ルートを明確化しておく。
□Scope1・2・3を混在させないよう、活動単位ごとに管理表を分離。
□SBT・CDPなど外部開示時は、GHGプロトコルの範囲・算定基準を必ず明示。

Scope2・3との境界線を理解する

Scope1・2・3の区分は理論的には明確ですが、

実務上は「どこまでをScope1とするか」「どこからがScope2・3なのか」で迷うケースが少なくありません。特に、エネルギー利用や委託業務が絡む場面では、管理範囲と責任範囲の解釈によって分類が変わることが  あります。

基本原則:コントロールの有無で判断する

GHGプロトコルでは、スコープの境界を「組織的コントロール(Operational Control)」に基づいて判断します。つまり、その排出を企業が物理的または運用的に管理できるかが分岐点です。

区分判断基準具体的な考え方
Scope1自社が設備・燃料を直接管理・使用しているボイラー、車両、発電機など自社運転分
Scope2他者が排出した電力・熱を自社が購入・使用電力会社の発電時排出を間接的に計上
Scope3サプライヤー・顧客など、社外活動に伴う排出購入原材料や物流、使用・廃棄など

このため、排出が自社の直接管理下にあるかどうかをまず確認することが、境界線判断の第一歩となります。

実務で迷いやすいグレーゾーン事例

 外部倉庫・委託輸送

  • 委託先の車両・倉庫設備からの排出は、Scope3(カテゴリ4:輸送・配送)
  • ただし、自社が燃料供給や運行指示まで行っている場合はScope1に含める。

シェアオフィスやテナント入居

  • 共用部の電力・熱はScope2として計上(テナント側が契約していない場合でも利用分を按分)。
  • 建物全体の管理主体(ビルオーナー)がScope1に計上。

 自社の燃料燃焼による発電+売電

  • 自社の燃料燃焼による発電はScope1に計上。
  • 売電分(他社利用)はScope2またはScope3として扱う。

 移動・出張

  • 社有車による燃料燃焼はScope1。
  • 航空機・公共交通の利用はScope3(カテゴリ6:出張、またはカテゴリ7:通勤)。

冷媒・空調機器の漏洩

  • 自社設備の場合はScope1。
  • リース物件・委託管理設備は契約形態に応じてScope1またはScope3。

管理方法と社内ルール整備

境界線の判断を属人的に行うと、年度や担当者によって算定範囲が変わり、報告の一貫性が失われます。そのため、Scope分類ルールを明文化した「算定境界マニュアル」を作成しておくことが重要です。

マニュアルには以下を明記します。

  • Scope1・2・3の定義と判断基準
  • グレーゾーン事例の分類指針
  • 各スコープの責任部署とデータ収集フロー
  • 契約変更・設備更新時のScope再評価ルール

これにより、組織的コントロール範囲を常に一定の基準で算定でき、 監査や外部開示(CDP・SBT・ISSBなど)にも耐えうる整合性を保つことができます。

実務上のまとめ

まず「その排出を誰が運用・制御しているか」を明確化する。
□委託・リース・共用設備など、契約形態に応じたScope分類表を作成する。
□年度ごとの見直し時は、組織再編・契約変更・設備移転の影響を確認。
□境界マニュアルを作成し、SBTやTCFD開示と整合させる。

本項のまとめ

Scope1=自社の直接排出、Scope2=自社の間接排出、Scope3=サプライチェーンの排出。

各Scopeを正確に区分しないと、二重算定・漏れの原因となる。 今後の報告制度(SBT・CDP・ISSB)では、3スコープを一体管理することが求められる。

Scope1算定で注意すべきポイント

Scope1算定の正確性は、脱炭素戦略全体の信頼性を左右します。

年度ごとの制度改正やエネルギー価格の変動に対応しながら、常に最新データと算定ロジックを維持することが重要です。

主なポイント(要約/サマリー)

排出係数は毎年確認し、古い数値を使用しない。
活動データの精度と記録管理が、算定の信頼性を決定する。
社内ツールやExcelのロジックを最新状態に保つ仕組みを整える。

排出係数の更新・データ精度管理

Scope1の算定では、排出係数の年度更新と活動データの正確性が最も重要です。

排出係数は燃料・冷媒・電力など、対象ごとに環境省やIPCCが定期的に改定しており、過去の数値を使い続けると、実際より高く(または低く)算定される誤差が生じます。

排出係数の更新タイミングは概ね以下のとおりです。

区分公表時期更新機関備考
燃料(ガソリン・軽油・LPG等)5~6年ごと環境省「算定方法・排出係数一覧」にて更新
冷媒(HFCs・PFCs等)数年ごとIPCC/環境省GWP値の改定あり
電力係数(Scope2関連)年1回電力会社/環境省自社使用電力分にも影響

また、データ精度の観点では、

・購買伝票や燃料明細の数値整合
・拠点間での単位統一(L、kg、kWh等)
・データ入力の二重チェック体制などが欠かせません。

Scope1は「直接排出」であるがゆえに、入力ミス1件で算定値全体が変動する可能性があります。年度監査やCDP開示の際に修正が発生しないよう、 年度初めに算定テンプレートを最新版に更新する運用を標準化しましょう。

実務上のまとめ

毎年1月頃の環境省「排出係数一覧」更新を必ず反映。
□データ入力者と確認者を分け、チェックリストを運用。
□拠点ごとに単位・桁数を統一(例:L→m³換算の一元化)。
□冷媒系データはGWP改定に注意し、漏洩量・補充量を年次で追跡。

社内ツール(Excel・システム)の反映方法

多くの企業では、Scope1算定をExcelや社内システムで行っています。

このときに重要なのは、算定ロジックと係数表が常に最新状態であることです。古いテンプレートをそのまま転用していると、排出係数・単位・式が古くなり、監査時に「算定根拠が不明」と指摘されるリスクがあります。

特に注意すべき点は以下の3つです。

①ロジックの透明化

計算式をセル内に隠すのではなく、算定式と排出係数表を明示する。

年度別管理

各年度ごとに係数表・報告シートを分け、再計算できる状態を保つ。

③ 変更履歴の記録

ロジック・係数・単位換算の変更点を履歴化し、監査時に提示できるようにする。 大企業では、これらを自動化する「GHG算定管理ツール」や「統合ESGデータプラットフォーム」を導入していますが、中小企業の場合でも、Excelで同等の透明性を確保することが十分可能です。

実務上のまとめ

算定テンプレートは年度ごとにロック版を保存(再現性確保)。
□係数表は「バージョン番号+更新日」を明記。
□変更履歴を残し、第三者レビュー時に提示できる体制を整える。
□Scope1・2・3の算定テンプレートを別ファイルに分離し、混在を防ぐ。

本項のまとめ

排出係数や活動データは毎年更新し、古い数値を使わない。計算ロジックや単位の統一を社内標準化しておく。

監査・第三者検証を見据え、エビデンス(伝票・記録)を3年以上保管。 SBT・SHK制度・CDPなど、他制度との整合性も常に確認する。

実務チェックリスト

算定準備

Scope1の定義・範囲を社内で明確化しているか
排出係数を最新版(環境省公表値)に更新しているか
拠点・設備・車両ごとに燃料使用量を把握できる体制があるか

算定・管理

算定式(活動量×排出係数)を正しく反映しているか
データ入力のダブルチェックを行っているか
Excel・システムにロック版と履歴管理を導入しているか

削減・モニタリング

削減目標(基準年・目標年・削減率)を設定しているか
四半期単位でモニタリングとグラフ化を行っているか
燃料転換・設備更新・冷媒管理など具体施策を記録しているか

開示・外部対応

SBT・CDP・TCFDの各制度で整合性が取れているか
算定根拠とデータソースを明記しているか
外部監査・第三者レビューに対応できるエビデンスがあるか

よくある質問(FAQ

Q1. Scope1の排出量はどの程度の頻度で算定すべきですか?

→ 原則、年度単位で報告しますが、削減目標の進捗確認には四半期単位のモニタリングを推奨します。

Q2. 排出係数を前年のまま使っても問題ありませんか?

→ 推奨されません。環境省の係数は毎年更新されるため、年度ごとの最新値を反映する必要があります。

Q3. 冷媒漏洩の排出量もScope1に含まれますか?

→ はい。冷媒漏洩(HFCs・PFCs・SF₆など)は高GWPガスを含むため、Scope1に算入します。

Q4. 委託先が運用する車両の燃料使用はScope1ですか?

→ 自社が車両を保有・運行管理している場合はScope1。委託輸送の場合はScope3(カテゴリ4)に分類します。

Q5. Scope1の削減目標はどのように設定すれば良いですか?

→ 基準年・目標年・削減率を定義し、SBTの「1.5℃目標」と整合させるのが望ましいです。

Q6. Excelで算定しても監査対応は可能ですか?

→ 可能です。テンプレートに算定ロジック・排出係数・更新日を明示し、履歴を残しておけば問題ありません。

まとめ

  • Scope1は「自社が直接排出する温室効果ガス」を対象とし、脱炭素経営の第一歩となる領域。
  • 算定の基本式は「活動量 × 排出係数」。算定ロジックを年度ごとに更新することが信頼性の鍵。
  • 削減アプローチは「燃料転換・効率化・漏洩管理」の3軸で設計。
  • 削減目標は基準年・目標年・削減率を明確にし、四半期単位でモニタリング。
  • Scope1・2・3の区分を理解し、算定範囲の整合性を保つことが報告制度対応の前提。
  • Excelや社内ツールでの管理は「再現性」「透明性」「整合性」を重視。
  • Waste Boxでは、Scope1~3の統合設計・報告・削減支援まで一貫した支援が可能。

次のステップ

 Scope2:電力・熱の利用に伴う間接排出の算定と省エネ化

 Scope3:サプライチェーン全体の排出管理・開示への拡張へ


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