CSR調達・持続可能な調達は、サプライチェーンの人権・労働・環境リスクを継続的なデューデリジェンスで管理し、事業継続と企業価値を高める調達の考え方です。本稿では定義と必要性、日本の実装状況(大企業と中小企業の差を含む)と課題を整理します。
- 調達・購買、サプライヤーマネジメント、品質保証、監査部門の方
- サステナビリティ/ESG、リスク管理、法務の方
- CSR調達の現状や課題を短時間で掴みたい方
導入
調達は、コスト削減の武器であり、同時に供給を止めないための生命線でもあります。ところが最近は、原材料の調達先や委託先で起きた出来事が、想像以上の速さで自社の売上や信用に跳ね返るようになりました。
ここで一つ問いかけます。もし主要サプライヤーが「人権・環境の観点で取引を続けられない」と判断されたら、代替調達は何か月で立ち上がり、その間の損失はどれほどになりますか?
CSR調達・持続可能な調達は、まさにこの問いへの備えとして、調達を“説明できる管理“に変える取り組みです。
CSR調達・持続可能な調達とは
CSR調達・持続可能な調達は、調達の意思決定に人権・労働・環境の観点を組み込み、サプライチェーン全体で負の影響を防止・軽減し、必要に応じて是正まで視野に入れる考え方です。
重要なのは、「持続可能」を単なるBCP(供給途絶対策)という用語に狭めず、将来世代が犠牲を強いられないよう配慮して調達活動を行う、という意味付けが明確に置かれている点です。
そして実務の中心は、継続的なデューデリジェンス(DD)です。
やるべきことは、難解な理想論ではありません。
- どこに重大リスクが潜むかを把握する
- 深刻度で優先順位を付ける
- 優先領域に資源を集中して対応する
- 状況変化を踏まえて見直し、説明できる形で運用する
この「把握→重点化→対応→見直し」の循環が回り始めたとき、CSR調達・持続可能な調達は「施策」から「経営の仕組み」に変わります。
CSR調達・持続可能な調達の必要性
CSR調達・持続可能な調達の必要性は主に3つあります。
一つ目は、グローバル化です。調達は国境をまたいで分業が進み、原材料・部材・加工工程が複数国にまたがることが当たり前になりました。すると、遠い国の労働環境や土地利用、地域社会との摩擦が、そのまま自社の操業や販売に跳ね返ります。問題が起きる場所は海外でも、影響は国内の工場停止や納期遅延、顧客離れとして発現します。国際分業が生むリスクを見える化し、適切に管理することが、事業継続に直結します。
二つ目は、法規制の強化です。人権・環境に関すデューデリジェンスは「努力目標」から「要求水準」へ近づいています。日本では、責任あるサプライチェーンにおける人権尊重ガイドラインが整備され、企業が最初に取り組むべき最初の作業として、人権方針の策定や人権侵害リスクの特定・評価が具体的に整理されています。さらに欧州では、企業のグローバル・バリューチェーン全体で人権・環境影響を特定し対応することを求める仕組みが導入されています。こうした規制強化は確実に企業に求めるCSR調達・持続可能な調達の水準を引き上げています。
三つめは、ESG投資の拡大です。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの要素を指す言葉のことで、近年ではESGへの取り組みが十分でないと、さまざまなリスクを抱えていると判断される傾向が強まっています。逆説的にESGへの取り組みを重視し、中長期的な企業価値や持続可能性を評価する「ESG投資」が世界的に急拡大しています。
CSR調達は、このESGの3要素、特に「S(社会)」と「E(環境)」に深く関わる取り組みで、直接的に企業のESG評価を向上させる行動です。企業がCSR調達を推進していくことは、投資家や市場から評価され、持続的に成長していくための必要条件とすらなっています。
CSR調達・持続可能な調達に関する日本の現状課題
CSR調達における課題はコストの増加、サプライチェーン全体との調整が難しいことなど様々ありますが、ここでは一つ大企業と中小企業の実装差を紹介します。
人権デューデリジェンスの実施は、大企業が52.5%に対して中小企業は9.7%に留まり、脱炭素化への取り組みは大企業が77.7%に対して中小企業は35.7%となっています。(2023 年度ジェトロ海外ビジネス調査 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査(2024 年 3 月))
この差の背景は、意識より運用資源の制約にあると考えられます。
ESGに関する調査・取り組みは要求が積み重なりやすく、また日々変化するリスクを追うことも困難なことです。そのため、中小企業では人材不足等が障壁として挙げられ、自主的取り組みを進めるためのツール拡充を望む声も多いと整理されています。
気候変動と人権への取り組みの差の背景としては、人権に関して気候変動における温室効果ガスのような定量的な統一指標が存在せず、詳細の開示基準等が未だ確率されていないことが影響していると考えられます。
このように未だCSR調達、持続可能な調達を妨げる課題は山積みです。だからこそ必要なのは、要求を増やすことではなく、サプライチェーン全体で回る形に「重点化」と「共通化」を入れることだと考えています。大企業がリスクの高い領域を絞って伴走し、共通ツールで中小企業の実装負担を下げられたとき、実装差は縮まり、CSR調達は現場の負担ではなく経営リスクを下げる仕組みに変わるでしょう。
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参考文献
望ましいCSR調達・持続可能な調達の在り方(グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン)https://www.ungcjn.org/common/frame/plugins/fileUD/download.php?type=contents_files&p=elements_file_7529.pdf&token=42761663f056e6c41383bf753511b6cc72829266&t=20260219162551
CSR調達とは?企業に求められる理由や具体的な取り組み事例を解説
https://crexgroup.com/ja/manufacturing/management/csr-procurement-case-studies/

