環境省の「環境表示ガイドライン」は13年ぶりに改定へ。改定の背景(グリーンウォッシュ対応・海外規制動向)と、検討会〜パブコメ〜公表までの最新スケジュール(2月上旬〜下旬パブコメ、3月中旬公表見込み)を一次情報ベースで整理します。
参考資料:環境表示をめぐる最新の動向(2025年9月)(環境省)000345668.pdf
最終更新日:2026年3月16日
・パッケージ/EC/広告で「環境にやさしい」「CO2削減」「リサイクル」等を訴求している(または予定の)広報・マーケ担当
・環境主張の根拠(試験・算定・出典)や表示ルールを社内整備したいサステナビリティ/品質保証担当
・表示リスク(誤認・炎上・指摘)を減らしたい法務・コンプライアンス担当
・パブコメ対応や社内ガイドライン改訂の準備を、3月の改定前に進めたい担当者
導入
「環境に配慮」「サステナブル」「カーボンニュートラル」などの訴求は、企業の競争力やブランド評価に直結する一方で、受け手の誤解を招くとグリーンウォッシュとして反発が起きやすい領域でもあります。環境省はこの状況を踏まえ、2013年3月改訂版の「環境表示ガイドライン」を改定する方向で検討会を設置しています。
本コラムでは、環境省が公開している検討会資料をもとに、改定の背景と、公表にむけたスケジュールをわかりやすく整理します。
なぜ今、環境表示ガイドラインを改定するのか
環境配慮の訴求は、いまや企業活動の中で当たり前のものになりました。パッケージ、ECサイト、SNS、店頭POP、提案書など、あらゆる接点で「環境に配慮」「サステナブル」「CO₂削減」といった表現が使われています。一方で、こうした言葉が先行し、対象範囲や条件、根拠が十分に示されないまま訴求が広がると、受け手は「本当にそうなのか」「誤解を招く表現ではないか」と感じやすくなります。こうした状況は、いわゆるグリーンウォッシュ(実態以上に環境配慮しているように見せる表示)への懸念につながります。
ここで押さえておきたいのは、今回の改定が「環境訴求を控えさせる」ためではなく、むしろ誤認や誤解の余地を減らし、適切な環境情報が消費者や取引先に伝わる状態を整える方向にあることです。環境省は、ネット・ゼロ対応や環境配慮型市場の拡大を背景に、国内外でグリーンウォッシュ対応への関心が高まっていることなどを踏まえ、環境表示のあり方を検討し、ガイドライン改定を念頭に議論を進めています。
改定の背景としてもう一つ大きいのが、環境表示の“拠り所”をより明確にすることです。現行の環境表示ガイドラインは、自己宣言型の環境主張についてISO 14021に基づく考え方を軸に整理されています。しかし近年は、環境訴求の種類が増え、媒体も多様化する中で、現場で判断に迷いが生じやすく、表現の強さと根拠のバランスが崩れるリスクも指摘されています。
そのため、ISO 14021の基本思想(誤解を与えないこと、検証可能であること、比較条件を明確にすること等)を軸にしながら、現在の表示実務に即した形で整理し直し、企業にとっても受け手にとっても分かりやすい環境表示のルールへアップデートする必要が高まっています。今回の改定は、そうした信頼性確保と実務的明確化を目的とした動きとして位置づけられます。
3月改定までのスケジュール
改定の動きは、検討会の形で進められています。これまでに複数回の会合が開催され、資料が公開されています。そして、今後の見通しとして、次のようなスケジュール案が示されています。
大きな流れは「2月に議論を詰める → 2月中にパブリックコメント → 3月中旬に公表」というイメージです。具体的には、第3回の開催が2月上旬に予定され、その後、1月下旬〜2月下旬にパブリックコメントが行われ、3月中旬に改定版が公表される見込みとされています。もちろん、これは案なので、状況によって前後する可能性はあります。ただ、少なくとも「3月に改定版が出る前提で準備する」のが現実的です。 ここで注意したいのは、ガイドラインが公表されてから慌てて対応しようとすると、修正コストが跳ね上がりやすい点です。環境表示は、Webの文言だけでなく、パッケージ、店頭POP、カタログ、営業資料など多くの接点に散らばっています。改定後にまとめて直すのではなく、随時進捗公開内容に合わせて「棚卸し→優先順位付け→段階的な修正」で進めることを推奨します。
企業側が今すぐ始める準備
ここからは、改定版の公表を待たずに始められる準備の話です。ポイントは、難しい仕組みを一気に作ろうとしないことです。まずは小さなことから、「後で必ず効く」ことから手を付けましょう。
最初にやるべきは、環境表示の棚卸しでしょう。自社のWeb、EC、SNS、パッケージ、店頭POP、提案書の中に、環境に関する主張がどれだけあるかを洗い出します。その際、「環境にやさしい」「地球にやさしい」「クリーン」「エコ」などの抽象語、あるいは「ゼロ」「完全」「なくす」といった強い言い切りをしている表現に印を付けておくと、後の見直しが楽になります。ここで大事なのは、表現を否定することではなく、「強い言葉ほど説明が必要」という前提で整理することです。
次に、主張ごとに根拠を残します。難しい資料を作る必要はありません。環境主張を1つ出すなら、社内向けに1枚のメモで十分です。そこに「何の話か(対象)」「どこまでの話か(範囲)」「どんな条件で成立するか(条件)」「何を根拠に言っているか(試験・算定・出典・更新日)」を揃えます。たとえば「リサイクル可能」と言うなら、地域差や分別条件があるかもしれません。「CO2削減」と言うなら、比較対象や算定範囲が必要になります。こうした前提を、主張とセットで管理できる状態にしておくと、改定後の修正が言葉探しではなく整合性の調整になります。
そして三つ目は、社内の段取りをスケジュールに合わせることです。2月のパブコメ期間は、外部の動きを確認しつつ、社内では棚卸しと一次整理を進める時期に当てるのが現実的です。3月に改定版が出た段階で、影響の大きい接点(パッケージ、トップページ、主要商品のECページ、広告)から優先順位を付けて順に直すとスムーズ化と考えます。 環境表示は、うまく設計できれば信頼を積み上げる資産になります。逆に、準備が不足したまま強い言葉だけが先に立つと、誤解が生まれ、修正に追われます。3月の改定は、発信をやめるための合図ではなく、発信を「正しく強くする」ためのタイミングです。だからこそ、いまのうちに棚卸しと根拠整理を進めておけると、その後の対応がスムーズ且つ短時間で対応できるのではないかと考えます。

